「危機を機会に転ずる:米国における図書館情報学教育の再構築」
Joan C. Durrance教授(ミシガン大学情報学部)
訳:三浦太郎(東京大学教育学部)
訳:石田香(東京大学大学院教育学研究科)
私は今日,日本図書館情報学会設立50周年を祝うこの記念すべき場に連なっていることを光栄に思っております。皆様には心よりお祝い申し上げますとともに,図書館情報学教育協会(ALISE)とミシガン大学情報学部を代表して,ご挨拶させていただきます。[このような機会に,]21世紀における図書館情報学(LIS)教育の再構築という図書館情報学教員にとって非常に重要なテーマについてお話しさせていただくことは,私にとりましても大変名誉なことであります。(1)
本日,私は,米国におけるLIS教育の変化と近年のKALIPERプロジェクトによって明らかになった傾向について議論するつもりでおります。KALIPER―Kellogg-ALISE Information Professions and Education Reform Project―そのものは広大な情報世界のなかで過去10年以上にわたり生じてきた根本的な変化に応えるため,米国の主要な慈善団体の1つであるW. K.ケロッグ財団の資金提供によって実現いたしました。KALIPERはこれまでかなりの注目を集めてまいりました。私もこのKALIPERについてお話しできることを嬉しく思っております。私は以前,このプロジェクトのBlue Ribbon Advisory Committeeの議長を務めておりました。またKALIPERの比較的肯定的な調査結果については盛んに議論がなされてまいりました。KALIPERは,LISの教育課程が様々な面で変化しつつある様子―すなわち,カリキュラムが広範な情報環境や情報問題を扱うようになりつつあること,LISのカリキュラムが他の研究領域の視点を組み込みつつあること,以前にも増して利用者中心になりつつあること,情報技術の導入が行われてきていること,そしてカリキュラムの構成が変化しつつあること―を明らかにしたのです。本日,私は,過去3年間でさらに顕著になってきたこうした傾向について論じていきたいと思っております。(2)
こうした調査結果を理解するためには,それらをもっと広い枠組みのなかで検討しなければなりません。そこで私が選んだ枠組みが「危機‐機会(crisis-opportunity)」というものです。本日,私が用いますこの枠組みは,今日の状況がいかに(制度を脅かす重大な危機に直面していた)20世紀に入ってすぐの頃のLIS教育と<似ている>かを示すと同時に,(その危機が図書館よりもはるかに広範な情報世界に影響を及ぼしているという点で)<根本的に異なっている>かを示すことを目的としています。20世紀初頭の指導者たちは,そのような初期の危機をはっきりと認識し,それに対応しました。他方で,情報革命は,LIS教育にとって重要な意味―かなりの好機(もしくは損失)―をもつ根本的な変化を情報世界にもたらしました。(3)
現代の図書館情報学教育の起源:知識と人材の危機
現代の図書館学教育は,何世紀にもわたって知識に秩序を与えてきた図書館という制度の長く豊かな歴史を共有しているわけではありません。重要かつ貴重な資料を組織化して扱うコレクションとしての図書館の歴史は,数百年前に遡ります。例えば,日本の金沢文庫の歴史は1275年に始まっています。歴史上,図書は非常に高価で人の手によって生産されていたので,図書館は珍しい存在であり,支配者や裕福な地主のみが図書を収集していたのです。こうした図書館は,大抵の場合,図書館員の役を果たしていた博識で教養豊かな学者たちによって維持されていました。(4)
図書館学教育の正式な教育課程を創造する必要性を生ぜしめた危機は,19世紀後半の米国における公共図書館の急速な発展とともに訪れました。公共図書館が根を下ろし始めたとき,米国はまだ100年の歴史もない,多くの移民を抱えた新しい国でした。世界で最初の税金による公共図書館は,1830年代に米国の小さな町に建てられています。1870年代半ばの米国には,約300の公共図書館がありました。彼自身,移民であったアンドリュー・カーネギーは,若いころスコットランドからわずかな金を懐に米国に渡り,のちにもっとも裕福な実業家の一人となったのですが,彼はその巨万の富で米国初の主要な慈善団体―財団―の1つであるカーネギー・コーポレーション(財団)を設立しました。カーネギーの慈善活動は,全国の市会議員や裕福な企業家たちに刺激と興奮を与え,税金による公共図書館を始めるのに必要な手段をとらせる結果となりました。[その結果,]1900年までに米国には1,000以上の公共図書館ができ,その数はその後の20年間で2倍の2,000以上となったのです!1890年から1920年にかけて,カーネギー・コーポレーション(財団)は,何百ものコミュニティで公共図書館の建物を建設するため,当時のお金で何百万ドルもの大金を支出しました。(5)
そんな状況のどこに危機があるのか?実のところ,こうした急速な改革は数千の図書館を生みましたが,それらを運営するのに必要な技術を身につけた人間はわずかしかいませんでした。このことは,そうしたズレを埋めようとする様々な努力に結実します。数年のうちに最初の目録規則が書かれ,刊行され,それを採用し始めた多くの図書館の間に広まりました。デューイ十進分類法は改良され,世界中の知識を分類しようという国際的なアプローチである国際十進分類法も発展しました。1915年までには,最初の図書館学教育の団体であるアメリカ図書館学校協会が設立されました。現在の図書館情報学教育協会(ALISE)の前身です。その間,カーネギーや他の慈善家たちは,全国に図書館を建設するために財団に加入するよう地元で選挙された役人や政治主導者に働きかけ,非常に多くのコミュニティにおける文化センターを大幅に強化しました。(6)
カーネギー財団の指導者層は,自分たちの出資が適切に使われているのかを監視する目的で,それらの新しい図書館を運営している図書館員の質を問い始めました。危機の全貌は,1923年の図書館学教育に関する最初の研究によって明らかにされています。カーネギーの資金提供を受けたチャールズ・ウィリアムソンは,公共図書館が急速に発展したあとの当時の図書館員養成教育が極端に貧しいもので,その大部分が大学以外で行われていることを明らかにしました[1]。この報告書は,一連の非常に意欲的な勧告を行っており,それらは最終的に大学院レベルの図書館学教育や質を保証するための基準の設定,そして図書館学の問題を研究する教員陣といった形で実を結んだのです。(7)
報告書で勧告している改革を推進するため,カーネギー財団は,始まって間もない一連の大学の図書館学教育課程に対して財政的な支援を行いました。ウィリアムソン報告を受けて行われた改革は,教員の知識水準を引き上げ,個々の教育課程でも領域全体でも指導の質を高めるという望ましい成果をあげました。ここで重要なのは,この危機が図書館を中心としたものであり,機会の方も同様に―たった1つの制度の急速な発展に関わる問題を解決するように設計された訓練プログラムの創造という―狭い範囲に焦点を絞ったものであったということです。指導者たちは,図書館のための教育課程を展開しました。そして教育の焦点をたった1つの制度に合わせたこのプログラムは手近にある問題を確かに解決したのですが,その過程で図書館情報学教育におけるのちの危機の種をまくことになったのです。(8)
シカゴ大学の高名な教員の一員であり,戦後の日本で図書館学を教えた経験ももっているレオン・カーノフスキーは,1937年に次のように述べています。
研究分野としての図書館学は,まだそれほど実地に試されていない分野である。[しかしながら],あまりに旧式な思考形態を進んで放棄し,新天地を切り開く勇気を持ってさえいれば先駆者となるであろう人々の眼前には,意義深い調査研究を伴う実施の機会が大きくそびえている[2]。 (9)
事実,最初の頃のこの分野の知識成長は比較的ゆっくりとしたもので,シカゴ大学のみがこの分野における博士号の授与機関とされていました。世紀の半ば頃になっても,図書館学校の教員のうち博士号をもっている者は全体の約20%しかいませんでした。1960年代に入ると,博士課程の研究員のための連邦政府基金が得られるようになり,研究を遂行できる博士の数が大幅に増加しました。1970年代までには教員の50%が博士号を持ち,1970年代から80年代には情報を蓄積し検索するための情報技術の利用やコンテンツ(知識および情報)へのアクセス方法への関心の高まりに伴い,この分野の知識ベースが急速に成長しました。1980年代までには教員の78%が博士号を有し,情報の探索と利用のプロセスに焦点をあわせる研究者も出始めました。結果として,この数十年間で,図書館サービスの利用や図書館の歴史,OPACの利用といった図書館関係のトピックに焦点を当てたものだけでなく,情報の蓄積や利用,データベースの構築,情報の価値,計量書誌学,そして情報ニーズや情報探索といったトピックなど,もっと広い範囲を対象とした研究が行われるようになってきています。(10)
この数十年間に,図書館学を図書館情報学に変え,研究ひいては教育におけるパラダイムシフトの種をまく研究がこの分野に出現しました。LISの教育課程は,教員の研究においてもカリキュラム開発においても,情報環境や情報問題という広い対象を捉え始めました。教員が研究の焦点を広げたので,学部も自らを図書館と情報の双方に焦点を置くものと見なし始めました。1980年代末までに,多くの学部がその名称に情報という言葉を組み込みました。このように,LIS教育は,この数十年のうちに,図書館を対象とした狭いものから情報というもっと大きな枠組みへとシフトしてきたのです。1990年代までに,LIS教員の90%が博士号を獲得しました。こうした研究教員たちはLIS研究の焦点を広げることに貢献し,そのことがLISの教育課程の強化につながりました。(11)
KALIPER調査時までに,いくつかの有力な教育課程の名称から図書館という言葉が消えました。KALIPERの調査結果は,過去数十年にわたってLIS教育の対象が広がったことで,主要なLISの教育課程がインターネットとWorld Wide Webの出現によって生じた危機/機会に対して適切に整備されることになったことを示しています。(12)
20世紀末における専門的知識の危機:情報技術革命
図書館環境は,それ自体,過去数十年間にかなりの変貌を遂げてきました。同様に,図書館員もデジタル情報技術を仕事にとり入れてきました。図書館ならびに図書館員は,常に情報技術を早いうちから採用してきたのです。図書館員は,数十年にわたり,コンピュータ化を図書館運営に利用しています。数十年前の書誌レコードの標準化およびコンピュータ化は,図書館システムの機械化とOCLCやUTLASのような巨大書誌ユーティリティの創造および利用を可能にしました。共同目録作業やOPAC,書誌データベース,高度な相互貸借ならびにドキュメント・デリバリー機能,そしてデジタル・フォーマットによる情報の入手は,こうした書誌ユーティリティによって実現したものです。(13)
にもかかわらず,1990年代半ばの情報技術革命は,あたかも地震のように図書館員という情報専門職と図書館学教育を襲いました。インターネットは,情報コンテンツへのアクセスと,知識に基づいて意志の疎通を図り共同作業を行う人間の能力に急激な変化をもたらしました。計算機科学者は,そのうちインテリジェント・エージェントが図書館員を含む媒介者を中抜きし,インターネット上のコンテンツへのアクセスを提供するようになるだろうと断言しました。図書館員のなかにも,インターネットによって図書館と図書館員を共に不必要な存在になるのではないかと危惧する者たちがいました。一部の図書館学教員も,同様のロジックを用いて,暗い未来を思い描きました。いずれにせよ,1990年代半ば頃までに,インターネットと変化しつつある情報基盤が彼らに危機感を与えたことを見て取るのは難しいことではありません。インターネットの影響については非常に多くの記事が書かれてきましたので,こうした主張について追加的な背景的知識を示すことは不必要でしょう。ここでは,インターネットが―地震の力が新しい景観を作るように―新たな情報環境を創造したといっておけば充分だと思います。コンピュータ技術者によって作られたインターネットは,急激に新しい種類の情報の流れをもたらしたのです。(14)
ひとつの力ないし現象としてのインターネットは,1990年代においても無視できない存在でありましたし,今日でも無視することはできません。インターネットは,まず,科学者や学者の仕事の仕方を変えました。そして,非常に短い間に情報入手に対する人々の考え方を変え,人々が互いに意思伝達をする方法はもちろん,商取引のやり方にも影響を与えました。ますます多くの人たちが,必要としているすべての情報は直ちにインターネット上で入手できるということに確信をもつようになりました。しかしながら,LISの研究者と図書館員は,インターネットについてまだ多くの誤解があることを認識します。UCLAのクリスティーン・ボルグマンは,次のように指摘します。
インターネットが図書館に取って代わるであろうという主張は,多くの場合,疑わしい前提に立っている。よくある3つの誤解は,あらゆる有益な情報はインターネット上のどこかに存在している,情報は無料で入手できる,そして進んで探索に充分な時間を費やす人がそうした情報を見つけることができる,というものだ[3]。
インターネットは,図書館とLIS教育に大きな試練を与えました。その広範なインターネット危機が,KALIPERの調査および報告書のお膳立てをしたのです。20世紀初頭におけるカーネギー財団の活動と同様,W. K. ケロッグ財団は,この急激な変化の時期にLIS教育を内省する機会を提供してくれました。(15)
KALIPER:LIS教育課程が危機を機会に転じることができるとする根拠
揺籃期のインターネット革命を目撃し,図書館による情報提供と図書館員養成教育における図書館という施設を完全に時代遅れなものにしてしまいかねない危機に懸念を抱いたケロッグ財団は,人々の‘生活の質(quality of life)’を高めることを目的に,情報専門職による‘知識と情報源’へのアクセス向上を可能にするための教育課程事業を展開しました。もし,こうした介入を行わなければ,インターネット革命が図書館と図書館員を時代にそぐわないものにしてしまうに違いないというのが,そのときの懸念でした。ケロッグは,いくつかの大学のLIS教育課程に働きかけ,情報専門職養成教育の徹底した改革を行わせました。ミシガン大学のプロポーザルは,LISや計算機科学・工学,管理情報システムのような分野の知的概念構成体(intellectual construct)の長所と短所を分析したものでした[4]。そして,複数の領域の長所を寄せ集めた情報教育のモデルを提案したのです。(16)
ケロッグは,寛大にも,情報研究と教育への学際的なアプローチの創造というミシガン大学のプロポーザルに対して資金を提供しました。そして,LISの教育課程がそれまで資金面で充分でなかったことを受けて,多額の資金注入を行いました。この助成金は,学際的な教員の雇用のための資金や学部の主要な研究部門を発展させるための手段を提供し,研究とカリキュラム開発のための広範な情報基盤サポートを与えることで教室での授業と実務経験の両方を通じて学生の経験を豊かにする仕組みを強化し,知識の成長やカリキュラム開発,情報提供の新しいモデルを検証するための仕組みを提供しました。この過程で,この寄付金は―いくつかの連邦機関からの主要なデジタル図書館補助金と一緒になって―ミシガン大学の図書館情報学部を情報学部へと変容させました。(17)
財団や連邦基金からの多額の資金注入とこの領域における知識の増大が,いくつかの選ばれた教育課程を変えたことには疑問の余地はありません。1990年代も終わり頃になると,LIS指導者たちの心にある疑問は,それ以外の教育課程がどの程度まで変わったかという点に絞られました。「情報専門職の再創造」と題され,学際的なスピーカーを呼び物とした1997年の図書館情報学教育協会(ALISE)のカンファレンスでは,LIS教育における近年のいくつかの変化が強調され,変わりつつある専門職のための教育の学際的な本質について批判的に考察を加えるよう参加者への働きかけがなされました。このカンファレンスは,ケロッグ財団からの資金提供を受けたもので,ケロッグの首脳部も出席していました。(18)
ALISE指導者の一団は,カンファレンスのあと,ケロッグ財団に対して図書館情報学部で生じている教育上の変化を広く検討していくための追加的な資金を要求し,1998年にはKALIPERプロジェクトの研究が開始されました。KALIPERが問い掛けているのは,“情報専門職養成教育において,カリキュラムのダイナミックな変化が起こっていることを示唆する根拠/指標は何であるのか?”ということです。(19)
ウィリアムソン報告書以降,もっとも重要なLIS教育の調査であるKALIPER報告書は,2000年に刊行されました。KALIPER報告書の要約[5]はウェブ上でも入手可能で,北米やその他の地域の図書館情報学教育によって広く受け入れられてきています。KALIPERは,初期の図書館学教育の混乱ぶりを明らかにしたウィリアムソン報告書とは異なり,図書館やその他の情報環境のための情報専門職養成教育のなかに,変化を志向した積極的な動きを見出しています。KALIPER報告書は,主要な団体に頒布され,インターネット上にも掲載されてきました。その調査結果は多くの論文で取り上げられてきた[6]だけでなく,日本を含む様々な国でLIS教育の議論を促進しています。KALIPERが終了してからすでに3年ほど経ちましたが,2000年の時点で明らかだった傾向はさらに顕著になってきました。私は,そうした傾向について最近の動きと先導的な事例に焦点を当てて,簡潔に述べていきたいと思います。(20)
KALIPER調査によって明らかとなった傾向
#傾向1:図書館情報学(LIS)のカリキュラムは,制度としての図書館や図書館固有の機能に加え,もっと広範な情報環境や情報問題を志向しつつある
LIS教育は,図書館に焦点を合わせた前時代的な,いわばプトレマイオス的モデルから,情報に焦点化した新時代的なコペルニクス的パラダイムへと変容しました。インターネット「危機」の時代が訪れるより早く,LIS教育課程では迅速な情報対応が見られたのです。KALIPERに関わった学者たちが気づいたように,教員たちは,情報専門家にとって情報世界の「大きな見取り図」を見る目が必要であることを,痛切に感じていました。広大な情報環境に適応するように,講義科目は再構築すべきだと見なされました。これもKALIPERから明らかなように,市場化の流れのなかでライブラリースクールは,卒業生の就職先である図書館を排除することなく,さまざまな学生たちや多様な関係者のニーズに応えようとしていました。(21)
KALIPERで行われた,ライブラリースクールの理念や講義題目,科目説明,シラバスに関する調査に基づいていえば,ライブラリースクールが自ら主張する専門領域とは,情報や情報システムの生成,組織,管理,価格づけ,流通,選別,探索,検索,アクセス,利用,評価といった事柄の,認知的・社会的な側面を網羅することにあります。LIS教育課程では,利用者との距離の縮まり,情報アクセスにおける質問の多様化,バーチャル資料を取り込みやすくするためのコレクションの再定義,電子図書館のもつ意味,制度的な境界線の消滅といった新たな事態に目を向けながら,それら諸問題を扱うためのアプローチを伝統的なカリキュラムのなかに組み入れています。(22)
KALIPER終了後の傾向1:情報学教育課程への動き
ケロッグ財団が少数のLIS教育課程の開発に出資して以降,相当数のLIS教育課程では,広範な情報問題や情報環境を検討するために方法論上の大きな変化がもたらされ,その過程で教育課程の名称も変更されています。わずか5年ほど前には,そうしたライブラリースクールはほんの一握りに過ぎませんでした。先ごろ,私はアメリカ図書館協会(ALA)の認可する教育課程の一覧を見ましたが,その数は3倍に増加していました。いまや名称から図書館という言葉のおちた教育課程は14に上り,私はこの数が今後さらに増えるものと予想しています。(23)
インフォメーションスクールがとめどなく増え続けることによって,新たな情報学の領域が生み出される潜在的可能性は高いでしょう。その領域が何かについては,本日の発表の最後に検証するつもりです。こうした変化は,片やでは地方の大学に重要なメッセージを送っていますし(大学では計算機科学の教育課程とビジネススクールが,情報学の領域を自分たちのものと主張しています),他方では,そのような動きによって図書館員を情報専門職として教育することは断念せざるをえないのか,という点に大きな関心を抱いている図書館専門職にとっても,重要な意味を持ちます。(24)
#傾向2:LISカリキュラムでは他の諸領域から視点を取り入れているが,利用者中心の考えが支配的であり,これが独自の核を形成している
この傾向は,相互に関連しあう2つの重要な問題領域を示しています。すなわち,利用者を中心視する捉え方の強まりと,学際性(これはしばしば,他の学問領域における異なった利用者観をもたらします)の高まりです。LISカリキュラムにおいては,人々がいかに情報を入手し利用するかという点に重きが置かれ,情報検索システム,情報を探すための戦略,情報探索行動といった講座が,利用者中心の考えのもとに設計されます。増え始めたインフォメーションスクールも,ほとんどのライブラリースクールと同様に利用者中心的です。たとえば,ミシガン大学インフォメーションスクールでは,中核的理念の形成に当たり,情報システムの研究・設計・管理を統合するアプローチを土台としていますが,とりわけ,“もっと効果的に人々,情報,技術の三者を統合すること”が支柱となっています。(25)
LIS教員たちの関心が図書館の枠を超え,多様な学問領域から教員が雇われるようになり,さらには似通った分野の研究者との共同調査が行われるようになった結果,LISカリキュラムにはさまざまな分野の視点が導入されています。こうした視点はまた,大学の他部局の教員と合同で教育課程/講座を開いたり,チームティーチングを提供したりする場合にも浮かび上がります。LISの教員数が不足しているのか,それとも,外部から教員を雇う必要性が自覚されているのか分かりませんが,いくつかのスクールでは新教員の採用や部局間で追加的な取決めがなされるたびごとに,教員構成はますます分野複合的になっています。たとえば,ミシガン大学でインフォメーションスクールが設立されて以降に雇用された教員には,公共政策,電子工学,計算機科学,経営学,言語学,心理学,経済学の学位をもつ研究者が含まれている,といった具合です。(26)
情報に焦点を合わせた教育課程では,個人,グループ,もしくは社会に重点が置かれます。中核的な講座や授業科目では,だんだんと情報の探索や利用が志向されるようになっています。大きな変革点は情報探索の指導を組み入れたことであり,それは,個人的な情報の探索・利用に関する認知的な問題から,実践やディスコースコミュニティにおける情報の幅広い役割に至るまで,さまざまな程度で見られました。スクールではまた,人間とコンピュータの相互関係に関心をもち,利用者の能力に見合った技術の設計・開発・評価を行うことのできる教員を増員しています。(27)
KALIPER終了後の傾向1&2:情報問題と情報環境に広く焦点を合わせた学際的調査の広がり
KALIPERではさまざまなカリキュラムや経済支援の問題が示されましたが,その後も合理的に焦点を合わせ続けていくために調査を行うよう,直接に呼びかけることはありませんでした。重要なのは,図書館中心のパラダイムから情報中心のパラダイムに移行して,LISの学際性が増した結果,LIS教員の行うべき研究を効果的に説明するための枠組みが見られるようになった点です。本発表に当たり,付録A「新世紀初頭におけるLIS/IS研究の大まかなグループ分け」の表を作成しましたが,これはLIS研究とLIS教育課程のウェブサイトの検討に基づき,教員たちの研究の特色を表したものです。LIS研究は大きく5つのカテゴリーに分けられます―すなわち,情報技術,コンテンツ,情報システム,人間の情報行動,そして分野横断的なカテゴリーです。この表から,広範囲に及ぶ情報環境と情報問題にまたがり,現在どれだけの研究関心が存在するのかが明らかとなります。LIS研究者が情報をもっと効果的に利用しようと,増加する情報アクセスに関わる問題を幅広く捉えていることがお分かりでしょう。しかし,研究者たちは図書館を研究対象から排除したわけでもないのです。(28)
#傾向3:ますます多くのLISスクール教育課程において,カリキュラムのなかに情報技術の開発と導入が組み入れられるようになっている
情報技術インフラの開発が進み,カリキュラムのなかにますます情報技術が導入されている現実を,たんに時代の兆候として片づけるべきではありません。そこには,長期にわたって影響を及ぼし続けるような,もっと重要な意義が生じつつあるのです。電子的な事柄のほとんどすべてに対して焦点が当てられるようになるにつれ,LIS教育が再定義を余儀なくされている点に疑う余地はありません。私たちは[電子的な事柄に関する]必修・選択科目を増やしてカリキュラムを構築し,既存の講義科目に電子的な要素を取り入れ,さらにはそうした領域を教えることのできる教員を増員しようと探しています。情報技術は魅力的で,私たちの日常生活のなかに急速に定着しつつあり,市場力学や教育・研究に対する援助の場面において,情報技術の発展や利用に対する助成が進められています。これと同じ理由で,親機関である大学も,電子的な未開拓分野について教え研究することにつながるような教育課程を欲しているのです。(29)
KALIPER終了後の傾向3:サイバーインフラの成長に主導的な役割を担う
情報技術は爆発的な広がりを続けており,LIS教育課程では情報技術への傾斜が強まり,知識と技術を身につけた教員をカリキュラムのなかに雇い入れることが,引き続き求められています。連邦政府から助成を受けて電子図書館プロジェクトに参加しているスクールも何校かあり,サイバーインフラの開発に関わる研究を進めています。そこでは,グローバル情報基盤(GII)や次世代情報技術の準備など,情報・コミュニケーション技術に基づいた広範囲で先進的なインフラの整備に取り組まれています。LISスクールとインフォメーションスクールの教員は,この領域の知識基盤に大きく貢献を続けています[7]。ミシガン大学インフォメーションスクールのDan Atkins教授は国立科学財団(NSF)のサイバーインフラ特別委員会の委員長を務めましたが,同委員会は,米国のサイバーインフラに広範な影響を及ぼすと考えられるいくつかの重要な勧告を行いました[8]。(30)
#傾向4:LISスクールおよびLIS教育課程のカリキュラムでは,専門性の構造化が試みられている
KALIPERに関与したスクールでは「専門性の再考」が模索され,より包括的なカリキュラムの提供,医療情報学のように新たな専門性の追加,他のスクールとの合同学位の開発などが試みられていました。(31)
ミシガン大学では,学生が情報学修士号(MSI)を修得する際,情報学の4つの領域,すなわち,図書館情報サービス,アーカイブ・記録管理,情報経済・管理・政策,ヒューマン・コンピュータ・インタラクションのなかから1つを専攻します。このとき,「目的に応じて」自分独自のカリキュラムを設計することも許されています。つまり,特定の仕事への関心にしたがって専門科目を組み合わせたり,情報アーキテクチャやコミュニティ情報といった,いまだ公式には専門化されていない領域を追求したりすることができるのです。学際的な教育課程を設計できるという選択肢の結果,学生たちがLIS教育課程を多様に利用する可能性は明らかに高まっています。(32)
スクールのなかには,専攻を準備する学生に対し,進学要件ないし卒業要件として職歴を課すところがあります。また,教育課程期間中に実習を修めるか,フィールド経験を踏まえた卒業論文を書くよう求めるスクールもあります。このほか,卒業要件としてインターンシップを無事に終えるか,何らかの形で実務経験を済ませていることが求められる場合もあります。(33)
#傾向5:LISスクールおよびLIS教育課程では,学生が柔軟に受講できるようにさまざまな形式で授業が提供されている
カリキュラムにおける柔軟性が最もよく現れているのは,おそらく授業の方式においてでありましょう。今日の学生ほど,講座の期間や提供される講義科目の日時,キャンパス内外での会合に関して,選択肢を持っている学生はいません。伝統的に遠隔教育では,異なる場所で講座が提供されてきました。それがここ2,3年の間に,ある種の通信やインターネットを介したキャンパス外講座が徐々に増えつつあります。(34)
KALIPER終了後の傾向5:遠隔教育
10年ほど前には,遠隔教育という新しい選択肢を用いて講座を提供するスクールは北米に10校しかありませんでした。それがいまや,36の教育課程において技術を使って遠隔教育の学位が提供されています[9]。たとえば,イリノイ大学図書館情報学教育大学院では,ここ5,6年の間,遠隔教育プログラムが講演形式に代わる優れたモデルとして機能しています。全国的に知られていますが,イリノイではキャンパス内で短期間の授業を行い,それとインターネット授業,独立学習とを組み合わせています。学生たちは,自分の好きな場所でほとんどの講義課題を仕上げます。たいていの場合,それは家か仕事場であり,先進的な技術を用いてウェブ上でライブ中継される授業を視聴することができるのです。(35)
#傾向6:LISスクールおよびLIS教育課程では,学士号,修士号,博士号のレベルで関連の学位を提供することによって,カリキュラムを広げている
KALIPER終了後の傾向6:新たな学位
KALIPER報告が刊行されて以降,3年の間にこの傾向は顕著になっています。LISスクールやインフォメーションスクールのなかには,いくつか異なる修士号を授与するところもあります。最も変化が激しいのは学部教育課程の増加です。多くのスクールが革新的な学部教育課程を(主専攻と副専攻の両方,もしくはいずれかにおいて)導入し終えたり,導入し始めたりしたところです。学士号は,情報技術,情報学,情報システム,あるいは,情報技術および情報学といった領域において授与されています。スクールのうち5,6校では,学士号取得を目指す学生が学生全体の3分の1以上を占めます。(36)
以上をまとめますと,KALIPERの研究者によって認められた北米LIS教育課程の変化は持続・加速しており,新たな電子化時代に対応したLIS教育を形作りつつあることが分かります。最も注目すべき変化を挙げれば,学際性の増大,情報問題や情報環境に幅広く焦点を合わせたカリキュラム開発・研究に向けた動き,そして,インフォメーションスクールの展開を志向した動きが見られます。LIS教育課程は,かつてないほどに強力になっています。学生たちは,人々の情報要求をよりよく理解し,人々が必要な情報を入手しようとする際にもっと効果的に支援する方法について分かるようになっているほか,情報技術を使う技能を手に入れ,情報システムに関してもこれまで以上に幅広い知識を身につけています。こうした変化は,LIS教育が電子化時代に対応する下地となるばかりでなく,インターネットの抱える新たな危機の可能性に向けてLIS教育を動かすものでもあります。危機の可能性とはすなわち,個々がインターネットの統制を主張している,さまざまな領域が収斂されるという事態です。(37)
情報教育に匹敵する諸領域が興るのか,それとも,収斂の結果,新領域が創設され定義されるのか?
LIS領域にとって最も深刻な危機が訪れようと,あるいはこれまでにない好機が訪れようと,条件は整っています。電子化の激震は情報展望を変えました。インターネットは,本質的に異なる専門家・研究者集団に前途への恐れと望みを与え,緊張感のある舞台を作り出しました。さまざまな演じ手たちが,これまでの狭い居場所を飛び出し,インターネットにおける己が優位を主張しています。インターネット危機の結果,解決の必要な一連の新たな問題が招来されるとともに,さまざまな解決法が考えられる競合的関心が生まれています。(38)
サイバー世界がそれほど急激に変化していなかった8年ほど前,2人の研究者が生態学的な比喩を用いて図書館学教育とパンダの行動とを比べました。パンダが単一の植物を好むことに言及したうえで,彼らは,かわいく愛される動物は生態的な適所が限られているため,絶滅の危機に瀕していると述べました。そして,伝統的なLIS教育課程も消滅する運命にあると論じたのです。彼らは次のように警告しています。
LIS教育は,きわめてダイナミックで高度に競争的な環境に置かれている。情報の重要性の高まり,情報技術や情報環境の発展,そして,LIS自身の適応に向けた努力の照射によって,LISと他の専門職・専門的教育課程との間に,生態学的な収斂が生み出されている。つまり,LISの伝統的な適所(たとえば「電子図書館」)と新たな適所(たとえば「情報管理」)の収束である。情報分野は急激な変化にさらされており,自らの力の及ぶ範囲を確定しようとしているのは,何もLISひとつではない[10]。(39)
利害関係の収斂と競合に関する事例としては,多様な情報学教育課程の開発を挙げることができますし,これはメディカルスクールにおける医療情報学の導入や,ビジネススクールにおける情報管理教育課程の展開に,最も端的に現れています。(40)
1980年代にはパソコンが急激に普及し,それにともなって,計算機科学者でない人々に向けてコンピュータのインタフェースを早急に改善する必要性が生じたことから,計算機科学の下位領域として,現在ヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)として知られる新領域が現れました。その主要な専門団体であるコンピュータ・ヒューマン・インタラクション(CHI)は,1980年代前半に計算機学会(ACM)の分科会のひとつとして発足したものです。HCIの教育課程はいくつかの大学に存在します。計算機科学からは多くの教育課程が派生し,広く情報技術の仕事を目指す学生たちに焦点を合わせています。単一の学問領域の知識では,研究を進める際にも,また適切なカリキュラムを開発する際にも不十分であるとの認識から,これらの教育課程ではだんだんに学際的な傾向が強まりつつあります。(41)
学問領域ごとの相違は,それを克服しようとする人々にとって険しい障害となります。しかしまた,それが信じられないほどの好機を提供することにもなるのです。指導的な知識人のなかには,そうした骨の折れる仕事に着手する人も現れました。合衆国政府の資金提供のもとで行われた主要な電子図書館プロジェクトでは,異なる学問領域から研究者が呼び集められ,計算機科学者,LIS研究者,経済学者らの間で相互交流が広がっていきました。こうした相互交流は学問領域ごとの相違を検証する機会となり,結果として,複数の分野の研究者がそうした違いをよりよく理解するようになったほか,「電子図書館の利用されるコンテクストを社会学的・行動学的・経済学的に見る電子図書館観」が形成されるようになったのです[11]。新たな情報世界に関して自分たちの領域を主張しようとする競合相手のなかには,LIS教育は以前のように狭く図書館だけに焦点化すべきだと言い出したり,あるいは,計算機科学は狭く,たとえば情報技術だけにしぼるべきだと横槍を入れたりするところもありました。しかし,電子図書館プロジェクトの結果として生まれたような収斂は,新生の情報領域に関心を持つさまざまな研究者グループの間に見ることができますし,また,新たに形成された数多くの「情報」教育課程にも見られています。(42)
新しい情報展望から生じたいちばん最近の好機は,分野横断的な試みです。そのひとつの例を,教員採用における学際性の高まりに見ることができます。LIS教育課程から派生した新たなインフォメーションスクールでは,LIS,HCI,情報経済学,その他の領域から博士号取得者(PhD)を雇用しています。カリフォルニア大学アーバイン校は元来,計算機科学に根ざしたスクールですが,新たなインフォメーションスクール教育課程に数人のPhDを送り込んでいるほか,ミシガン大学の学部長もここの出身者です。ペンシルバニア州立大学は,LISの歴史を持たず新たに組織されたインフォメーションスクールですが,LIS学位を持つ教員を雇用しています。こうした新しいインフォメーションスクールでは,学際的な教員から学んだPhDを排出し始めており,やがてはLISや計算機科学の教育課程を変えていく役割を担うことになると思われます。(43)
知的関心の中心があまりに違う教員や,本質的に異なる文化・価値観・方法論・伝統・知識へのアプローチを持った教員をひとまとめにしているインフォメーションスクールでは,しばしばカルチャーショックが見られます。新たに設計される学際的教育課程では,そうした相違を克服するための諸段階を設け,教員たちの体現する学問領域の多様性のうえに教育課程を構築する必要があります。教育課程レベルで学術的統合を図ることは,開発のこの段階において決定的事項なのです。(44)
現場レベルでも,学問領域を収斂させるため,きわめて重要な2つの活動が展開されています。もしこれがうまくいけば,新たな情報学の領域が創出されることになるでしょう。第1の活動は,LISから派生したインフォメーションスクールの横の連携を作ることであります。これによって,情報に焦点を合わせた新教育課程において理念の変化やそうした変化にともなう問題が生じたとき,スムーズに話し合いを持つことのできる支援体制づくりを目指しています。米国情報科学技術学会(ASIST)と図書館情報学教育協会(ALISE)で会合が重ねられており,計算機科学,工学,図書館情報学,管理情報システムの多くの教育課程で問題を共有できるようにするため,学問領域をいかに収斂させるかについて広範な議論がなされているところです。(45)
もうひとつの活動の焦点は,計算機科学の影響のもとで主に情報中心の教育課程を提供しているインフォメーションスクールから,学部長を呼び集めて話し合いの場を作ることにあります。この集まりは,米国の情報・計算機科学研究の主要団体である情報処理学会(CRA(Computing Research Association)[http://www.cra.org])の後援を受けています。CRAはもともと,計算機科学分野の教員を会員とする団体でしたが,その後,拡張して他の種類の教育課程を含むようになりました。これら2つの注目すべき活動によって,かつてのLIS教育課程が収斂し始めている点をめぐり,CRAでは活発な議論が繰り広げられています。目下のところ,主導的立場にあるLIS/ISスクールを含め,約50の教育課程がCRAの活動に参加しています。会合のなかでは,さまざまな学問領域をひとつの共通の範囲内に収斂することの影響について検証したり,すべての研究・授業プログラムによって網羅される知的領域の青写真を掲げたりすることに,意が注がれています。2004年夏には,多様な学術的教育課程によって代表される利害関係の交錯を検討するため,大規模な会議が計画されています。(46)
インターネット革命によってLIS/IS教育が葬り去られる可能性は,いまだ消えたわけではありませんが,私は,LISを含めた多様な学問領域の思想的な先導者たちによる近年の努力によって,学際的な収斂が成功裡にもたらされる公算は高いと思っています。そしてその結果,新たな学問領域が打ち立てられ,収斂の成果を社会に還元することを目指して,技術・システム・実践がもっと効果的に開発・利用されるようになるはずです。現在の努力を支えているのは,そうした成果を実現するため,多方面にわたる学問領域の知的な力とエネルギーが必要であるという考え方です。多くのLIS教育者に向けて語ったクリスチーヌ・ボルグマンの言葉を引用し,結語に代えたいと思います。
情報へのアクセスはきわめて重要な問題であり,政府の役人,企業の政策責任者,図書館員,アーキビスト,計算機科学者,法律家の誰に一任することもできない。むしろこの問題は,世界中の地域を問わず,老若男女,人生を歩むすべての人々が立ち向かっていく課題である[12]。(47)
日本図書館情報学会50周年記念研究大会にお招きいただき,皆さまとともに過ごせましたことに,心より感謝申し上げます。本大会に参加しましたことを光栄に思っております。(48)
付録A:新世紀初頭におけるLIS / IS研究の大まかなグループ分け[13]
情報技術 |
情報/知識 (コンテンツ) |
情報システム |
人間の情報行動 |
複数の領域に またがる分野 |
技術の可能性と 限界 歴史的側面(様々な情報技術革新を含む) 問題点;法律上の問題 情報技術の影響 情報技術の見極めと選択 技術における人的要素 インターネットやウェブ技術のような特定の情報技術 サイバー・インフラストラクチャー |
情報の本質と価値の定義 情報のライフサイクル 出版(電子的なものも含む) 物理的・仮想的 コレクション 情報の経済学 情報および情報サービスの原価計算と価格付け 付加価値機能 計量書誌学;ウェブメトリックス |
情報の蓄積と検索 コンピュータ化された情報システム 利用者志向の情報システム設計 知識/情報の組織化の手法 システム性能の 向上 検索モデル データベースと ファイルの構造 コンピュータと 人間のインターフェース エキスパートシステム&インテリジェント・エージェント |
歴史的側面 マネージメントの手法および関心事 評価の手法および問題点 情報政策 研究手法 |
[1] Williamson,
Charles Clarence Training For Library Service. New York. 1923
[2] Heim, Kathleen
M. “The changing faculty mandate.” Library Trends. Spring 1986, 581-606;, Quote from p. 591
[3] Borgman,
Christine From Gutenberg to the Global Information Infrastructure: Access to
Information in the Networked World (MIT Press), p. 194
[4] Educating Human
Resources for the Information and Library Professions of the 21st
Century. A Proposal to the W. K. Kellogg Foundation from the Faculty of The
[University of Michigan] School of Information and Library Studies. 1996 http://www.si.umich.edu/cristaled/kelloggproposal.html
[6] Durrance, Joan
C. and Karen Pettigrew. “KALIPER: A Look at Library and Information Science Education
at the Turn of the New Century.” In: 1999 Bowker Annual. N.Y.
R.R. Bowker, 1999, p. 266-281.
Pettigrew, K. E., & Durrance, J. C. (2001). (Eds).
“KALIPER: Introduction and overview of results,” Journal of Education for Library and Information Science, 42. 1, p.170-180. Pettigrew, Karen and Joan C. Durrance. “KALIPER Study Identifies Trends in Library and Information Science Education” In: 2000 Bowker Annual.
[7] たとえば,UCLA教員のChristine Borgmanは2000年にグローバルインフォメーションの出現に関して優れた著作を著している。Christine L.
Borgman. From Gutenberg to the global
information infrastructure: Access to information in the networked world.
Cambridge, MA, MIT Press, 2000.
[8] Revolutionizing Science and Engineering through Cyberinfrastructure: A Report from the U.S. National Science Foundation Blue Ribbon Panel on Cyberinfrastructure. Daniel E. Atkins, Chair. January 2003. http://www.communitytechnology.org/nsf_cireport/
[9] Daniel, Evelyn
and Jerry D. Saye. “Highlights of the 2001 ALISE Statistical Report with a five
and ten year comparison of key data elements.”
http://www.ils.unc.edu/ALISE/2001/Highlights.htm
[10] Van House, Nancy
and Stuart A. Sutton. “The Panda Syndrome: An ecology of LIS education,” Journal
of Education for Library and Information Science 37(2), 1996: 131-47.
[11] Borgman, pp.33-52.
[12] Borgman, p.269.
[13] この表は,学部のウェブサイトに掲載されている個々のLIS教員の研究プロフィールの調査と,Richard RubinのFoundations of
Library and Information Science, N. Y.: Neal-Schuman, 2000. の第2章(特にp. 23-53)の影響を受けている。