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2006年度春季研究集会 研究発表要旨(申し込み順)
No.1

◆氏名: 中根 浩之(神奈川県立大師高校)

◆発表題目: 学習過程の調査と介在過程: 学習過程意識シートの開発

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     学校における学生の学習活動には、教わる/習う機能と学ぶ/相談する機能があるが、この機能を学習共同体における学生と教師や図書館員との相互作用という観点から調査する。大学生の学習過程を大学生が作成する概念地図によって分析し、その中から他者による学習過程への介在を分析し、他者との相互作用を明らかにする。その結果から学習共同体としての学校のあり方について考察するとともに、学びの共同体構築の枠組みを提案する。
  2. 研究方法
     過程アプローチと自己効力理論と実践共同体理論を用い、反復過程を含む比較的単純な四段階の学習過程を想定し、概念地図構築用の穴埋め記入式シートを開発する。また、先行研究や予備調査から学生が学習過程で採用するストラテジーと相互作用を選定する。開発したシートの記入に当たって、選定したストラテジーと相互作用を選択肢として用い、質問紙法により学生対象に過去の経験の中から記憶に残った学習過程についての概念地図を描く形で調査する。
  3. 得られた成果・予想される成果
     学生はこの穴埋め記入式シートを初めて利用したためにとまどっていたが、概念地図を分析した結果、学生の採用するストラテジー、相互作用や自己効力感にいくつかの傾向が現れた。調査に参加した学生はこのシートを用いて概念地図を作成することが自己の学習過程を理解するのに役立つことを知った。これは学生が自己の学習過程を理解する初期的な段階といえる。次にフィードバックを取り入れた七段階シートを開発して学生に適用するとさらに詳細な概念地図を作成することが可能となり、最終的に、このシートを用いなくとも学生は自由に学習過程の概念図を描き自己の学習過程を確実に把握できるようになる可能性が高い。一旦、教師や図書館員が学生本人と学習過程の概念地図を共有すると、学生からの相談や学生への助言などの相互作用に基づく介在過程に役立つことが予想される。また、この学習過程の概念地図を用いた学生対象の時系列調査は学校教育の評価に役立つと考えられる。
     学習過程で学生が採用する相互作用の対象は大きく人とシステムに分けることができる。図書館情報学専攻の学生が採用するシステムとの相互作用はウェッブ、データベース、図書館の順である。人との相互作用は大半が友人であるがこれは非公式の相互作用ということができる。公式の相互作用である教師や図書館員との相互作用はとても少ないが、その一方で、学習仲間との相互作用が段階を追うごとに増加しており興味深い。仲間評価を教育に取り入れると、学習仲間は公式の相互作用として定義できる。この公式の相互作用を有効に活用するためには、学習共同体に学ぶ/相談する機能を強化する必要があるが、このことは学習共同体の内部に学びの共同体を構築することを意味する。実践共同体理論における実践共同体の多層構造はこのことを支持するように思われる。


No.2

◆氏名:  坂田 仰(日本女子大学)
河内祥子(東京都立大山高等学校)
黒川雅子(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)

◆発表題目: 学校図書館を巡る教職員の協働に関する研究

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     本研究は、「公立学校における学校スタッフの協働に関する研究−開かれた学校という視点から」(2005(平成17)年度科学研究費)の調査データに基づき、開かれた学校の一側面である「内に開く」という視点から、学校図書館を巡る教職員の協働について、教職員間の意識及びその現状と課題を分析することを目的とする。
  2. 研究方法
     研究方法は、A県内の市・町(中規模・小規模都市)及びB県C市(政令指定都市)の教育委員会及び校長会の協力を得て質問紙形式で行った。調査対象は、A県内の市・町が設置する学校の中から22の小中学校、C市が設置する学校の中から40の小中学校の教職員とした。調査方法は、メールサーベイにより各校長宛に直接郵送し、また回収した。
  3. 得られた成果
    • 教職員が協働する内容
       協働する内容は、学校図書館関係の内容ではなく児童・生徒の生命に関わる緊急に解決すべき問題が中心となっている。学校図書館に係わる協働の内容として高い回答を得ているのは、購入図書に関するものであり、司書教諭と他の教職員との協働内容は、事務的な処理における活動に留まっていることがうかがえる。
    • 協働する相手
       「協力して仕事をしているという実感がある」、「協力して仕事をする必要が生じた場合、すぐに実行にうつすことができる」、「業務上の悩みがあれば、相談できる」、「教職員の職務を果たす上で意見を交換し合いお互いに力量の向上を果たす風土がある」という質問に対する回答をみると、一般教員が司書教諭との関係において「とてもそう思う」「わりとそう思う」と回答する傾向は低い。
    • 教育改革の流れと学校図書館運営の現状
       司書教諭が、原則必置化となり3年が経過している。しかしながら、司書教諭の役割が教職員間に認知されておらず、司書教諭という職務が現場に定着していないという状況の存在を本調査結果は示唆している。本調査から、学校現場において、読書が育む「豊かな人間性の育成」等学校図書館をめぐる教育課題は、多忙化を極める教職員にとってたとえ必要性を感じているとしても、学校として取り組む優先度は低くなるという現状が浮かび上がってきた。司書教諭との協働に関する意識が教職員の間で低く、協働する内容は学校図書館の事務的な手続きに集中しており、学校図書館に対する教職員の意識が、学校図書館の教育効果の向上における阻害要因の一つとなっていることが明らかとなった。


No.3

◆氏名: 安形 輝(亜細亜大学)

◆発表題目: 複数の圧縮プログラムを用いた著者推定実験

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     先行研究の中で安形は、圧縮プログラムを用いた類似データの同定手法としてBenedettoらの"Language Trees and Zipping"(2000)での手法の欠点を修正した圧縮改善率による同定手法を提案した。この手法は比較的単純な手法にもかかわらず、圧縮プログラムとしてZIPを用いた著者推定実験では、定評のある著者推定手法だけでなく、Benedettoらの手法も超える高い精度が得られた。また、ZIPの圧縮レベルにより精度は若干変動し、先行研究と同様に圧縮率により著者推定性能が影響を受けることが示された。
     そこで、本研究では、ZIP以外に複数の圧縮プログラムを用いた著者推定実験を行い、高い圧縮率を誇る圧縮プログラムにより著者推定性能がどこまで向上するかを中心として分析を行った。具体的に用いた圧縮プログラムは、(1)テキストデータに対して高い圧縮率を示している、(2)日本語テキストに特化している、(3)普及しており標準的に用いられている、(4)他の圧縮プログラムとは異なる特殊なアルゴリズムを用いている、といった点から選定された15種のプログラムである。
  2. 研究方法
     実験対象データは先行研究と同様に青空文庫から取得した8人の近代日本文学者による92作品のテキストデータである。このデータを用いて、(1)先行研究と同様に長さを揃えたデータ、(2)データ長が様々であるオリジナルのデータ、の二つの実験集合を作成し、実験を行った。前者の実験集合に対しては、手がかりとなるデータを短くしていった場合にどこまで性能が悪化するかについても実験を行った。
     また、精度と圧縮率の関係を見るために、単に圧縮した場合の圧縮性能についても計測した。30,000文字データに対する平均圧縮率は最高で35%、最低でも56%、15プログラム全体で43%と、ほぼ半分以下の長さまで圧縮が行われている。
  3. 得られた(予想される)成果
     30,000文字に長さを揃えたデータに対する実験では、圧縮率が極端に低い1プログラムを除き、14のプログラムで著者推定の精度が97%を超え、この手法の有効性が改めて示された。特に高い圧縮率グループの8プログラムでは精度が99.5%を超え、ほぼ100%に近い性能が示された。
     また、手がかりとなるデータの長さを短くしていった場合に、松浦らの研究において最良の性能を示した手法でも精度が90%を割るデータ長は22,500文字であったにもかかわらず、本手法ではその半分以下の長さである10,000文字においても過半数のプログラムで90%を超える精度が得られている。さらに、先行研究では行われなかった5,000文字という短いデータに対する実験においても、大半のプログラムで80%を超える精度が得られている。以上のことから圧縮改善率による同定手法が手がかりとなるデータが短い場合にも有効であることが示された。


No.4

◆氏名: 安形 麻理(慶應義塾大学文学部)

◆発表題目: 活版印刷術の黎明期における聖書の形態的変化

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     15世紀半ばの活版印刷術の発明により,西洋の書物の主流は写本から印刷本へと移行した。1500年末までの初期刊本時代の間に書物の形態は大きな変化を遂げた。近年Smithによる一連の研究により、々な形態の変化が明らかになりつつあるものの,形態の変化と書物の表象の変化についての分析は,緒に就いたばかりである。
     本研究では,初期刊本時代の聖書を調査することにより,活版印刷術の黎明期における形態の変化を具体的な詳細にわたって明らかにする。聖書は,西洋キリスト教社会において「書物の中の書物」という地位を占め,書物の典型的なモデルであったと考えられるかたである。そして,そこから読者の期待と印刷業者の動機の相互作用を読み解くことを目的とする。
  2. 研究方法
     調査対象の選定には,初期刊本の総合目録データベースThe Illustrated Incunabula Short Title Catalog(IISTC)を用いた。注釈のない本文のみのウルガタ聖書で1501年より前に印刷されたものという条件には81点が該当した。この81点を対象に、IISTCに収録されている画像、英国図書館の記述的な初期刊本目録、その他の各種の目録や展覧会図録などの参考文献、所蔵館から取り寄せた複製画像、および現物調査によって、形態的特徴の調査を行った。具体的には、サイズ、段組、行数、書体、異字体,句読点,行末揃えの方法,単語の行分かれ,文章の構造化の方法、本文以外の要素(タイトルページ,目次,索引,ページ番号等)の有無、などである。
  3. 得られた(予想される)成果
     最初の印刷本であるグーテンベルク聖書は、写本という従来の形態の標準化と新たな規則の導入による精緻化を実現していた。続く初期刊本聖書においては一層の標準化が確認された。しかし、単語の段・ページ分かれを避けるという新たな規則は継承されていなかった。一方、文章の構造化の手段は異なる方向に発展を遂げていた。最初期には従来の色による構造化が見られたが、1480年代以降は文字の大きさ・書体・配置による構造化の手段が発展し、主流となっていた。また、13世紀には標準的でありながら15世紀の写本にはほとんど見られなくなっていた各種の補助ツールが、1470年代後半から再び主流となっていた。
     冒頭ページの扱いについて、Smithによる初期刊本全般についての先行研究と比較したところ、初期刊本全体ではタイトルを持つものが半分弱を占めるのに対し,聖書ではタイトルは1/5程度で白紙が半分弱となった。また、聖書の場合は白紙の増減は全体よりも急激であり、ピークは全体より少し早い1475-79年代に見られた。
     印刷業者の第一の動機としては経済面での効率化が考えられるが,実際には効率化に反するような多くの特徴が導入されていた。こうした変化には、潜在的な読者の期待を満たして購入意欲を刺激しようとする印刷業者の反応が反映されていると考えられる。


No.5

◆氏名: イム 炯延ヒョンヨン(梨花女子大学生涯教育センター)

◆発表題目:  韓国公共図書館における読書教育プログラムの教育効果調査−構成主義学習法に基づいた因果構造モデル分析を中心に

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     本研究は韓国の公共図書館で行われている読書教育プログラムの教育効果を高めるため、構成主義学習法の必要性を認識し、構成主義教授学習モデルを実証的に検証した。
     分析のため児童を対象とした図書館の読書教育プログラムで構成主義教育が実践できる教授学習モデルを設計し、このモデルの因果構造分析を行なった。モデルの因果関係仮説は教育者の役割と教育効果、教育環境と教育効果からなる。
  2. 研究方法
     本研究モデルの実証のため各概念についての操作的定義のうえ、構成主義学習法に基づいた読書教育プログラムの特性を反映したアンケート調査票を作成した。調査票の構成は教育者の役割、教育環境、学習者の主体的学習態度、学習者の教育効果からなっており、計18項目の質問を5点尺度で回答するようにした。アンケート調査は2005年1月から2月にわたってソウル市内にある公共図書館の読書教室に参加した児童を対象として行なわれ、200人の中145人からアンケート調査票を回収した。回収した調査票はSPSSWIN11.0とAMOS4.0を用いて分析した。
     因果構造分析モデルで検証しようとする仮説は次のようである。
    仮説1、公共図書館の読書教育プログラムにおいて構成主義教授学習に基づいた教育者の役割は、児童が主体的学習者になる教育効果に影響を及ぼすと予測される。
    仮説2、公共図書館の読書教育プログラムにおいて構成主義教授学習に基づいた教育環境は児童の主体的学習態度にを媒介として児童の教育効果に有意な影響を及ぼすと予測される。
  3. 得られた成果
     分析の結果、教育者の役割は、児童が主体的学習者になる教育効果に有意な影響を与え仮説1は支持された。教育環境は児童の主体的学習態度を媒介として児童の教育効果に有意な影響を与え仮設2は支持された。この結果、公共図書館の読書教育プログラムで児童が主体的に思考するように支援する教授学習法、児童が多様な知識を構成し創造力を培うように支援する教授学習法は児童の教育効果に有意な影響を及ぼすことを示唆する。


No.6

◆氏名: 小林 卓(明治大学文学部兼任講師)

◆発表題目: IFLA多文化社会図書館サービス・ガイドラインの成立とその影響

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     国際図書館連盟(以下、IFLA)の多文化社会図書館サービスのガイドライン(初版):Multicultural Communities: Guidelines for Library Serviceは、1988年に制定された。このガイドラインは1982年のオーストラリア・ヴィクトリア州の多文化公共図書館サービス基準が源泉であり、実際の策定にもオーストラリアの図書館員が中心的役割を果たしている。このガイドライン(初版)は、その後、アメリカや日本の多文化社会図書館サービスの推進、および全国レベルのガイドラインに大きな影響を及ぼしている。
     すなわち、ここではローカルなものがグローバルな国際機関に反映され、またそのグローバルなガイドラインが、ローカルに影響を与えるという循環的な相互作用をみてとることができる。このガイドラインの研究を軸に多文化社会図書館サービスの発展をみることで、IFLAのような国際図書館機関の果たすべき役割、あるいは各国の図書館サービスが一国を越えて持つ意味を明らかにする一助になると考え、本研究を行った。
  2. 研究方法
     まず「ガイドライン」「基準」等に関する論考の先行文献として、F.N.WithersのStandards for Library Service: An International Survey等を検証した後、文献調査を基礎に、IFLA、オーストラリア、アメリカ、日本、UNESCO等の多文化サービスに関する「ガイドライン」等の文書の成立過程における相互関係の歴史的研究と、比較研究を行う。
  3. 得られた成果
     各国、各レベルでの「ガイドライン」の相互関係とその影響が明らかにされた。また、「ガイドライン」の普及と伝播にはそれを伝えるメディアとその普及を担う人間が必要であり、日本においては、森耕一、深井耀子が先駆的にその役割を担ったことと、深井の発行した『多文化サービス・ネットワーク』誌を中心とす るメディアが日本における概念普及に大きな役割を果たしたことが明らかにされた。深井はこれらのメディアを通じて、IFLAのガイドラインの紹介を1つの軸に多文化社会図書館サービスの概念の啓蒙、普及活動を行っていった。また、国際的な場では、Journal of Multicultural Librarianship誌が、概念普及メディア の役割を果たした。
     さらに、比較教育学の見地から、比較図書館学が二国間、あるいは多国間のそれぞれのスタティックな比較のみならず、相互に影響関係を持つようになり、そこにおける国際機関の意義を見いだす、ダイナミックな比較国際図書館学に変容してきていることの、例証としての本研究の位置づけを行った。


No.7

◆氏名: 兼宗 進(一橋大学 総合情報処理センター)

◆発表題目: 図書館員の勉強会と連携したメタデータ実験システム

◆発表要旨:

 本発表では、図書館員の勉強会と連携したメタデータ実験サーバーの試みについて報告する。
 私立大学図書館協会東地区部会に属するメタデータ研究分科会では、2002年度からメーリングリストを利用したオンラインでの研究会を続けてきた。当初はメタデータ全般の調査を行ったが、「より深く理解するためには実際に記述することが必要」と感じたため、その後はDublin Coreを用いて情報資源を記述する試みを行った。
 しかし、メタデータを電子メールでやり取りするだけでは、勉強のための勉強になりがちであり、「自分たちは何のためにメタデータを作成するのか」「作成したメタデータはどのように役立つのか」といった目的を実感することが容易ではないという問題があった。
 そこで、2006年にインターネット上のサーバーにデータベースを構築し、オンラインでメタデータを記述できるシステムを試作した。このシステムでは、Webブラウザからメタデータを記述し、それを検索することが可能である。システムの開発は、オブザーバーとして参加している情報科学系の大学教員が担当した。
 現在はシステムが動き始めた段階であり、メタデータを入力し、表示するための最低限の機能が実装されている。このシステムを使い、参加しているメンバーが実際にインターネット資源のメタデータを登録していく予定である。ただし、自分たちの実験のためのシステムであるため、データ数を増やすことは目的とせず、データを作成しながら記述方法などを議論していく予定である。また、その中でシステムの改良を行っていく。
 今後は、2つの段階で実験を進めることを計画している。現在はステップ1として、図書館員が自分たちの勉強のためにメタデータを作成し、それらを検索して確認できる環境を構築している。
 その後は、ステップ2として、ステップ1で作成したメタデータを活用するための実験を進める予定である。今回のシステムに登録されるデータ数は、実験のために入力される数十件から数百件にとどまる見込みであり、これらのデータを検索するだけでは実用的な結果を得ることは期待できない。そこで、作成したデータを他のメタデータと連携することで活用するための実験を進める予定である。連携は、MARCやDublineCoreといった比較的リッチなデータと、RSSなどの簡潔だが普及しているデータの両面からの検討を進めていく。
 今回の発表では、ステップ1の状況を報告し、ステップ2についても構想に触れる予定である。


No.8

◆氏名: 前田 知子(政策研究大学院大学)

◆発表題目: 情報政策の対象と基本理念に関する一考察−科学技術情報政策への適用に向けて

◆発表要旨:

  1. はじめに(研究目的)
     科学技術情報の整備・流通は、科学技術を振興するための基盤的な政策の1つとして位置付けられており、これまで様々な施策が実施されてきた。しかし、インターネットの普及により情報入手が簡便になったこともあり、科学技術政策の主要な課題として認識されていないのが現状である。こうした状況を踏まえつつ、科学技術情報がどのような場合に何を根拠として政策課題となってきたかについての検討をすすめている。ここでは、検討のための視点として、情報政策の対象と基本理念を先行研究に基づいて再編し、科学技術情報に適用しうる見込みが得られたので報告する。
  2. 情報政策の対象と価値に関する先行研究
     情報政策の対象は、情報という言葉の意味するものの多様性を反映して幅広いものとなっている。情報政策の 種類として岡本は、情報管理政策、情報公開政策、情報システム安全化政策、プライバシー保護政策、無体財産権政策、通信制度利用政策、通信利用制度政策、社会情報化政策、情報規制政策、情報技術政策の9つを、Overmanらによる情報政策の価値(後述)と対応させて挙げている。またSmithは著作権・知的所有権・データベース保護、セキュリティとプライバシー、デジタルアーカイブ、政府情報の公開とアクセス保障、データ標準化、情報資源管理、電子化時代における図書館の役割など11項目を、Duffは、情報の自由、プライバシー、データ保護とセキュリティ、機密保護、図書館とアーカイブ、科学技術医学情報、著作権と知的財産、国家情報基盤など10の項目を挙げているが、いずれも対象それ自体と価値とが混在している。
     情報政策の価値としてOvermanらは、アクセスと自由、プライバシー、公開性、有用性、コストと利益、機密と安全、所有権の7つを挙げている。ここで「アクセスと自由」は市民の側からのアクセスの自由、「公開性」は行政側からの情報公開を意味する。また「有用性」は情報それ自体の利用価値、「コストと利益」は情報利用の効率性を指向するものであるとしている。
  3. 情報政策の対象と基本理念の再編
     まず情報政策の対象については、情報には、伝える意味内容(情報コンテンツ)とこれを伝える手段(情報基盤)という双方の側面があることを踏まえ、情報コンテンツに対する政策として、情報資源の管理・保管・公開、著作権・データベース保護、情報基盤に対する政策として、情報セキュリティ、標準化、情報基盤の整備の6つに区分した。科学技術情報は、情報資源に対する政策の一つとして位置づけた。
     また政策の根拠とする価値(基本理念)については、有用性と効率性、アクセスへの自由と所有権のそれぞれ対立する価値が、その時々の社会的技術的条件によりいずれかにシフトして政策を根拠付けるとして再編した。双方の価値のバランスという切り口は、公共財、私有財に加え、クラブ財としての側面を持つ科学技術情報の政策分析に有効であると想定される。


No.9

◆氏名: 今井 福司(東京大学大学院教育学研究科)

◆発表題目: コア・カリキュラム運動にみられる戦後初期の学校図書館

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     日本の戦後初期には,1947年度版学習指導要領(試案)をはじめとして,教科書だけでなく生徒の体験や経験までをも教材とし,多様な教材を用いようとする学校教育が模索されていた。この1947年から1950年の時期にかけ,現場の教員を中心としたコア・カリキュラム運動という教育改革運動が盛り上がりを見せた。
     コア・カリキュラム運動は,社会科のカリキュラム改革から始まり,身近な生活問題の解決を目的とした単元学習から構成される中心課程と,基礎的な学習を中心とした周辺課程の2つの側面からカリキュラムが作成され,先進的な学校では教科の枠を取り払った教育を行っていた。
     運動が進む中で,学校ごとにカリキュラム案や指導案が次々と公刊され,そこでは学校図書館という言葉そのものは出てこないが,学校図書館につながる活動の記述がみられる。本研究ではこうした記述を用いて,多様な教材を必要とした戦後学校教育において,学校図書館の何が求められていたのかを考察する材料を提示することを目的とする。
  2. 研究方法
     コア・カリキュラム運動の中心校であった,兵庫県明石市の兵庫師範女子部附属小学校が行った「明石附小プラン」や,運動に影響を受けた東京都港区桜田小学校の「桜田プラン」に関わる資料を取り上げ,何が学校図書館につながる活動だったのかをみていく。
  3. 得られた(予想される)成果
     「明石附小プラン」では,中心課程にあたる「中心学習」で提示された能力表で,1年生から「資料を収集し評価する」という能力を身につけるべきとされていた。また周辺課程にあたる「基礎学習」で提示された能力表では,1年生の段階で「図書館から適当な書物を選ぶ」といった能力を,5年生からは「参考文献の表を用いる」といった能力を身につけるべきとされていた。実際の単元指導案においても,図書室を利用した活動,本の調べ方や適切な参考文献を選ばせる活動が表されている。「桜田プラン」では直接図書室に関する記述はないが,2年生から学校内に設けられた研究室という場を使って資料を収集する活動が示されている。また図書グループという生徒組織によって,学級文庫の本を集めて管理し,学習に必要な図書や資料を保管していたとの記載もみられる。
     以上のプランでは,多様な資料を提供する学校図書館的な施設の必要性が認識されていたと考えられる。一方でコア・カリキュラム運動の上記以外のプランでは,図書室での活動が明記されていないプランも散見される。原因としては,コア・カリキュラム運動の時期と学校図書館が全国的に設置されていった時期が同一でなかった点が考えられる。また学校内の図書室でなく,地域の公共図書館で調査を行わせるのも一般的であり,公共図書館に役割を代替させていた点も原因として考えられる。発表ではこうした状況を報告した上で,戦後初期の学校教育と学校図書館の関連について考察を加える。


No.10

◆氏名: 松本 直樹(東京大学大学院教育学研究科)

◆発表題目: 公立図書館の事業波及に関する研究

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     近年の公的セクターにおける財政逼迫状況においても,公立図書館は新しいサービスを開発し,ニーズを開拓していくことで社会的に意味のある機関であることが求められる。
     本研究では,事業の採用に影響を与える要因について実証的に明らかにする。その際,事業が波及する現象に注目する。事業の採用プロセスを考えた場合,図書館の内部,自治体の内部だけで完結するわけではない。具体的には,県立図書館や県図書館協議会(協会)などが実施する研修会や研究会が事業実施の契機になったり,周辺自治体の採用状況が影響を与えたりすることは,強く推測される。また,先進的サービスを行っている図書館の影響で事業を開始することも多いであろう。このようなことから,一つの自治体だけを単独に取り出すのではなく,総体的に観察し,どのような要因が事業の波及に効果があるのか明らかにする。
  2. 研究方法
     県ごとに特定の事業について普及が進んでいる県と,進んでいない県を取り上げ,その原因を探る。具体的には,事業の性質に注意しながら波及に影響を与えた要因を検討する。その際,県立図書館や,県図書館協議会(協会),自主的な勉強会,先進図書館の有無などに注意する。調査方法は,関東近県の事業実施館にアンケートを送付し,採用の経緯などを尋ねるとともに,普及が進んでいる県と進んでいない県を対象に,事例研究を行いより掘り下げて検討する。
  3. 予想される成果
     事業の波及に影響を与える要因を明らかにできると考える。このことは,新しい事業の波及を考えた場合に,その波及のスピードを予測したり,効果的な波及を考えることを可能にする。こうした成果は,一つの自治体内の政策決定プロセスの解明だけでは明らかにできない視点を提供すると考える。


No.11

◆氏名: 後藤 宣子(愛知淑徳大学大学院文学研究科図書館情報学専攻)

◆発表題目: 高校生の情報探索行動に批判的思考の志向性が与える影響

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     高校生の情報リテラシー育成のためには、批判的思考の育成も必要であるとされている。また、批判的思考の要素には、能力と態度があり、近年、日本においても態度を育成・測定する研究が進んできている。
    本研究では、高校生が課題解決学習時に情報探索を行う際、特に情報源を選択・収集する段階を対象に、批判的思考の志向性(批判的に考えようとする態度)による影響を調査・分析することによって、情報探索行動と批判的思考の志向性との関連性を明らかにしようとするものである。
  2. 研究方法
     2005年7月に、高校3年生39名を対象に、教科「英語」での課題解決学習の場面において、質問紙およびビデオでの観察によって各個人の情報探索行動を記録した。与えられた課題は事前に授業で行った内容(地球温暖化)についてのレポート作成である。
     調査時間は、事前調査と情報探索およびレポート作成のため約3時間(1週間の授業)であり、授業時間内での各個人の情報探索時間は約20分程度であった。
     事前調査として、1)各生徒の情報環境背景2)コンピュータスキル3)批判的思考態度尺度(平山ら、2004)による測定を質問紙によって行った。各生徒の情報探索時には、使用した情報源(書籍・Web)の評価をチェックシートによって各生徒自身が行った。このとき、ビデオによる観察記録を併用した。
     観察記録では、情報探索を観察するとともに、情報源を選択した理由を口頭によって回答を得た。
     コンピュータスキルがほぼ一定であった12名の生徒群のうち、批判的思考の志向性の差(高・低)があり、ビデオによる観察記録が可能であった生徒の情報探索行動の過程を、1)情報源の信頼性2)論理性3)多様性/多面性について意識的か否かに注目して分析した。
  3. 得られた成果
     対象とした生徒群が使用したと回答した情報源の多くは、信頼性が高いとされるサイト・書籍であった。
     観察記録の対象となった生徒が使用したと回答した情報源も、信頼性が高いとされるサイトであったが、情報探索の過程において、批判的思考の志向性の高低によって、情報源の意識的な選択などに差異がみられるのではないかという結果が得られた。


No.12

◆氏名: 山口 真也(沖縄国際大学 総合文化学部日本文化学科)

◆発表題目:  学校図書館における読書記録の管理方法に関する調査−延滞督促と個人カードの取り扱いにみるプライバシー侵害・個人情報漏洩問題 を中心に−

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     学校図書館では、「図書館の自由」という理念に基づいた活動を行うことは困難であると長く指摘されてきた。「利用者の秘密を守る」という理念についても同様であり、特に読書記録の取り扱いについては、学校教育との関係において、プライバシー、個人情報として保護することは難しいという指摘も根強い。
     しかし、2005年4月の個人情報保護法の本格施行と各自治体における個人情報保護条例の整備を受け、学校図書館員は、これまで以上に読書記録の取り扱いについて無関心ではいられなくなっている。
     本研究は、読書記録の一種である貸出記録の取り扱いに注目し、その管理の現状と問題点を明らかにするとともに、学校図書館における望ましい管理、利用のあり方を提案することを目的とする。
  2. 研究方法
     発表者が在住する沖縄県は、(小中学校を含めて)全県的に専任・正規の学校司書を配置してきた地域である。本研究では、2004年3月から約2年間をかけて、沖縄県内の学校図書館員約140名に対して、個別に読書記録の管理方法に関する聞き取り調査を実施した。
     今回の研究発表では、この調査結果の中から、@個人カードの管理方法、A延滞資料の督促方法を取り上げ、「図書館の自由」と個人情報保護の観点からみた問題点を分析し、貸出記録の望ましい管理、利用方法について考察した。さらに、その実現性について分析するために、学校図書館員向けの研修会において報告、提案を行い、質疑応答とアンケート調査(40名対象)を実施した。
  3. 得られた(予想される)成果
     聞き取り調査とアンケート調査の結果、以下の点が明らかとなった。
    1) 貸出用の個人カードは、貸出方式(コンピュータ・カード)、学校の種類を問わず、大半の学校図書館において、カウンターに放置されている。カード式ではブラウン式を採用する学校図書館は少数であり、大多数はニューアーク式を用いている。コンピュータ式では、個人カードを使って貸出履歴を参照できるシステムを導入している図書館が大半を占めている。いずれも、個人の記録は容易に第三者に知られる環境にあるが、有効な対策は講じられていない。
    2) 延滞督促は、大半の(特にコンピュータ式の)学校図書館において、クラス担任が行っており、延滞資料のタイトルを伝えるケースが多い。また、教室での督促状況が把握されておらず、督促票の読み上げや貼り出しが行われている可能性もある。
    3) 一方で、問題意識を持つ学校図書館員は、個人カードの手渡しや書名を伏せた督促を行っており、読書の自由、個人情報・プライバシー保護を前提とする学校図書館活動は不可能ではないと考えているが、その取り組みは一部に限定されている。
    4) これらの取り組みを参考に、個人カードの管理と督促方法の改善について提案したところ、6割〜8割の学校図書館員から実行可能であるという回答が寄せられた。1人1人の意識を変えることで、現状を改善することができると考えられる。
    5) 今後は否定的な意見の理由を探るとともに、ガイドライン作成を通じて、提案の実現性をさらに高めていきたい。


No.13

◆氏名:  松田 ユリ子(神奈川県立大和西高等学校)
伊藤 紀久子(学校図書館を考える会横浜)
臼田 玲子(神奈川県立茅ヶ崎北陵高校)
小泉 秀夫(横浜国立大学)
田子 環(神奈川県立横須賀工業高校)
水越 規容子(町田市立成瀬台中学校)

◆発表題目: 神奈川県内の小学校高学年児童および担任教師に対する「調べ学習」についての意識調査

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     学校現場では、「調べ学習」という言葉が、定義もあいまいなまま、その内容もさまざまに使われている。例えば本や資料を駆使した本格的な探求も、本の一部やインターネットで見つけた情報を写すだけの活動も特に区別されずに「調べ学習」として論じられている。
     こうした状況を踏まえ、本研究では、研究目標を「神奈川県内の小学校高学年児童および教師における「調べ学習」の現状を明らかにする」こととする。
     その第一段階として、今回は2005年12月から2006年1月にかけて神奈川県内の小学校高学年児童および担任教師に対して行った「調べ学習」についての意識調査の結果を報告する。
  2. 研究方法
     「総合的学習」を含む授業の中での、いわゆる「調べ学習」における行動と意識を明らかにするために質問紙調査を実施した。まず、2005年7月、公立小学校1校の高学年2クラス(83人)と教師1人に対し予備調査を行い、それにもとづき、以下のように本調査を行った。
     調査対象を選定するにあたっては、神奈川県内の公立小学校をサンプリングの母集団とした。多様性の確保と「調べ学習」を扱うという観点から、@学校図書館のあり方 A地域性 に着目し11校を選び、2005年11月末に学校長に依頼した。その結果9校の協力を得、各校5・6年生それぞれ2クラス計4クラスずつと、担任教師を対象に、2005年12月初旬質問紙を送付した。2006年1月中旬までに9校、5年生児童515人 6年生児童516人、教師28人から有効回答が寄せられた。
     質問紙は以下の構成であった。
    【児童】Q1:学年と性別 Q2:2005年4月1日から12月20日までに行った「調べ学習」で一番覚えているテーマ Q3:調べた方法とその有効性についての質問(25項目5件法) Q4:記録の方法についての質問(9項目) Q5:まとめの方法についての質問(9項目) Q6:「調べ学習」によって発見したことについての質問 (5項目)Q7:調べたテーマに興味を持った度合いについての質問(5件法) Q8:「調べ学習」に対する満足度についての質問(5件法) Q9:授業以外での調べる頻度(5件法)Q10:授業以外での調べる方法(25項目)
      【教師】Q1:2005年4月1日から12月20日までに行った「調べ学習」の教科と単元Q2:児童の活動単位(5項目)とまとめの方法(10項目) Q3:もっとも下調べに時間をかけた単元 Q4:下調べの手段についての質問(16項目)Q5:児童のための資料の準備と紹介の有無 Q6:下調べのための資料の入手法についての質問(16項目) Q7:j事前に想定した児童の調べる手段についての質問(25項目)Q8:資料の有無の事前確認についての質問(10項目) Q9:苦労する点についての質問(自由記述) Q10:「上手くいった」と思う場合についての質問(自由記述) Q11:「調べ学習」の定義(自由記述)
  3. 予想される成果
     本発表では、本調査の単純集計の結果に関する詳細な報告に加え、児童、担任教師、学校ごとの学習環境における諸要素を組合わせたクロス集計を行い、どの要素が児童の「調べ学習」時の行動と意識に影響を与えているのかについて報告することを予定している。


No.14

◆氏名: 青柳 英治(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科 博士後期課程)

◆発表題目: 企業内専門図書館における職務内容の調査

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     近年,日本の企業を取り巻く環境は,国際競争の激化によって,きわめて厳しい状況にある。こうした状況の中で,企業内専門図書館は,親機関である企業組織体の競争力の維持・強化に貢献するために,情報提供サービスを中心とした機能を高めていく必要に迫られている。そのため,企業内専門図書館では,経営資源のひとつである「人材」の活性化を図ることが今後の課題となる。特に,企業内専門図書館に勤務する情報専門職の人的資源管理の検討が必要になる。本研究では,その前提条件となる職務内容の調査を行うことを目的とする。
  2. 研究方法
     企業内専門図書館に勤務する情報専門職を対象として,372機関の企業内専門図書館に郵送による質問紙調査を行った。調査時期は,2005年11月から同年12月までとした。その結果,167機関から有効な回答を得ることができた(有効回答率48.0%)。調査項目として,情報専門職の職務を資料情報の収集,整備,提供,運営に区分し,代表的な職務として27種類を取り上げた。そして,職務ごとに実施の状況,実施している場合の専門性の有無,実施担当者の社員,非社員の区分について選択回答方式を用いて調査した。得られた結果をもとに,つぎの3つの観点から職務内容について考察した。第一に,実施されている職務の現状,第二に,各職務の実施状況と専門性の2つの要素をもとにした職務のカテゴリー化,第三に,各職務の実施担当者の区分と専門性の2つの要素をもとにした相関関係の検討である。
  3. 予想される成果
     本研究では,雇用形態から実施担当者を3つの類型(社員型,非社員型,混合型)に区分して,上記の3つの観点からより詳細な考察を行った。その結果,実証的なデータをもとに,つぎの3つの点を明らかにすることができると考える。
    (1)職務内容には実施担当者の3つの類型に共通して実施されている職務と,それぞれの類型にだけ顕著に見られる職務とがある
    (2)類型ごとの各職務の実施状況と専門性の有無から,職務内容を4種類に分類することができる
    (3)実施担当者の区分と専門性の有無との相関関係から一定傾向を導き,その傾向をもとに職務内容を6種類に分類することができる
    特に,(2)と(3)の結果から,全体ならびに類型ごとに見た情報専門職の職務の傾向を捉えることが可能となる。


No.15

◆氏名:  宮田 洋輔(慶應義塾大学大学院)
石田 栄美(駿河台大学文化情報学部)
神門 典子(国立情報学研究所)
上田 修一(慶應義塾大学文学部)

◆発表題目: NDCの階層構造を利用した図書の自動分類の試み

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     これまで得られた知見をもとに,図書を対象とした実用的な自動分類システムの構築を目標としている。現在,個々の図書館で目録作業を行うことは少なくなり,目録レコードの作成作業の大半は,国立国会図書館やTRC,日販などに委ねられている。しかし,書誌記述はなされても,主題アクセスに必要な分類や件名標目は,必ずしも全てのレコードに与えられてはいない。また,NACSIS-CATにおいては,NDCが付与されているレコードは約7割であるに過ぎない。
     日本語の図書に対するNDCの自動分類の研究が行われてきた。これまで,三次区分(上位3桁)まででは比較的,よい成果を得られるが,実際に付与される全ての桁との照合では,低い成績しか得られない。使用する要素,用いる手法によってNDCの第一次区分ごとに分類成績が異なる,などの結果が得られている。
     そこで,図書へのNDC付与に限定し,第一次区分ごとに異なる要素,手法を用いて,分類成績の向上を図るアプローチを試みる。
  2. 研究方法
     これまでに行った実験から用いる要素や手法によって区分ごとに分類成績が異なるという結果が得られた。そこで本研究では,NDCの階層構造を利用して,各階層で複数の手法によって算出された結果から最適な分類を推測しながら分類を行うというアプローチを提案する。実験に用いるデータ,手法には以下のものを用いる。
    a)実験に用いる要素とデータ
     分類には,図書の書名,目次,帯を用いる。この実験では,目次や帯のデータを収録した「BOOK」データベースとNACSIS-CATのデータベースを統合した分類記号を含むレコード27,000件を収録した実験用データベースを使用する。実験用データベースから24,000件を語と分類との関係を学習するための学習用集合とし,残りの3,000件を実際に分類の対象となる評価用の集合とする。
    b)実験に用いる手法
     実験用のデータベースから図書の書名・目次・帯の情報を用いて分類を行う。重み付け手法に相対出現率と相互情報量を用いた統計的手法とSVMによる機械学習の手法を用いる。
  3. 得られた(予想される)成果
     複数の手法によって算出された結果から適合確率の高い分類を選択することで,これまでの結果よりも高い精度の自動分類を行うことを示す。


No.16

◆氏名:  辻 慶太(筑波大学大学院 図書館情報メディア研究科)
芳鐘 冬樹(大学評価・学位授与機構 評価研究部)
影浦 峡(東京大学大学院 教育学研究科)

◆発表題目: 司書資格の取得がもたらす効果: 社会人及び大学新入生に対するネットアンケート調査

◆発表要旨:

 現在,毎年1万人以上の学生が大学で司書資格を取得しているが,公共図書館の専任職員数は約1万4千人であり,しかもそのうち司書・司書補の資格を有する者は約7千人にとどまっている。司書資格はこのように,公共図書館職員の資格と位置付けた場合,明らかに供給過剰に陥っている。こうした現状では,大学における司書資格付与の意味・あり方を議論する必要があるだろう。本研究はその為の基礎データ提供を目指すものである。本研究では「司書資格とは取得者にとって何だったのか」という関心のもと,以下の3点を調べる。即ち,(1) 司書資格の取得は,図書館あるいは図書館以外の職場における仕事で役に立っているか(調べ物の能力など),(2) 司書資格の取得は図書館への理解を高めているか(図書館の基本用語を知っているかなど),(3) その他,司書資格を取得した者はどのような属性・プロファイルを持っているか(年収,健康状態,幸福感など),の3点である(言うまでもないがこれらは互いに排他的なものではなく,例えば「図書館の使い方の理解」などは(1)(2)の両方に関わっている)。具体的には Yahoo! Research のネットアンケートを用い,下記の6グループ,合計1,841人から有効回答を得た。即ち,大学を卒業し,司書資格を持ち図書館に勤務したことがない者(706名)/現在勤務している者(140名),大学を卒業し,司書資格を持たず,図書館に勤務したことがない者(343名)/現在勤務している者(277名),大学1・2年生で司書資格の取得を目指している者(133名)/目指していない者(242名),の6グループである。従来,大学卒業生を対象とした追跡調査は,個人情報保護の流れもあり,難しい面が多かった。だがネットアンケートではモニター登録者の中から資格取得の有無といった条件を絞り込んで調査対象者を見つけることができる。本研究はそれにより,従来難しかった追跡調査を実現したものと言える。調査の結果,司書資格を取得した者は,図書館員・非図書館員とも,取得しなかった者に比べ平均年収が低いものの,有資格図書館員は,他のグループに比べ,健康的で生活への満足度が高いこと,一方,資格を取得しながら図書館員にならなかった者は比較的アルバイト・パートに就く者が多いことなどが明らかになった。司書資格の取得者と非取得者の間では,男女比,年齢構成比,短大卒か四大卒か,理系か文系かの比をそろえてサンプルを構成しているので,上記の結果がどのような要因でもたらされたのか興味深い点である。また司書資格を持ち図書館員にならなかった者の約半数が,「資格取得の際学んだことはその後の生活で役に立った」と回答し,多くの者が図書館の使い方やデータベース検索に関する知識を評価していた。実際,資格を持つ者は,持たない者に比べて調べ物が非常に得意と答える者が多かった。一方,司書資格を持ち図書館員にならなかった者の約半数が「納本制度」という用語を「聞いたことがない」と回答するなど,図書館への理解という点で問題が感じられた。


No.17

◆氏名:江藤 正己(慶應義塾大学大学院)

◆発表題目: 列挙形式の引用文を用いた被引用論文間の関係の類型化

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     同時に複数の論文を並列列挙する形式の引用文が持つ特徴の1つとして、被引用論文間の文脈的距離が近く、類似度が強いことが考えられる。さらに、この列挙形式の引用には、もう1つ特徴があると推測される。それは、列挙形式の引用文には「被引用論文同士はどのような意味における共引用関係であるか」を導くための言及が含まれている可能性が高いことである。
     列挙形式の引用では、複数の被引用論文に含まれる特定の要素・トピック(研究目的、研究方法など)が同時に言及される。このことから、引用文が言及したその要素・トピックは、被引用論文が共通して持つ項目であると考えられる。例えば、列挙形式の引用文中の記述にtf*idf法がある場合、被引用論文間に共通する項目はtf*idf法である可能性が高い。
     このような観点から列挙形式の引用文を捉えた場合、引用文は引用論文の著者が「被引用論文間の関係」について述べたとみなせる。したがって「被引用論文間の関係」の記述を類型化することで、「被引用論文間の関係」の種類が明らかになると考えられる。なお、ここで明らかにしようとする関係の種類は、従来の引用のカテゴリー(「肯定」「否定」「補助」「儀礼」など)とは異なり、被引用論文間に共通する「目的」「方法」など内容を示すトピックとしての種類である。
     本研究では、列挙形式の引用文を収集して分析を行い、被引用論文間の関係の類型化を試みる。
  2. 研究方法
     科学技術分野のデータベースCiteSeerが公開している論文URLを用いて、論文の全文ファイルを収集する。次に、収集した論文ファイルから列挙形式の引用文を抽出する。抽出された引用文に対して、以下の作業を行う。
     (1)列挙形式の引用文に頻出する文字列のパターンを特定する。この処理は、頻出文字列抽出アルゴリズムを用いて、プログラムによって行う。(2)特定されたパターンの中で、被引用論文間の関係を明らかに出来るような言及に関わるものの判別を行う。この処理は『科学技術英語表現辞典』などを参照しながら行う。(3)判別結果と列挙形式の引用文をつき合わせることによって、被引用論文間の関係の類型化を行う。
  3. 予想される成果
     被引用論文同士の関係を述べる際の「関係の種類」として、どのようなものが挙げられるのか、その種類について明らかになると考えられる。このような関係の種類を明らかにすることは、ある論文と共通のトピックを持つ論文を探したいというような検索要求に答えるシステムを作成するための基礎になると思われる。


No.18

◆氏名:大場 博幸(亜細亜大学非常勤講師)

◆発表題目: 所蔵における公平:「郵政民営化」を主題とする本の所蔵

◆発表要旨:

  1. 研究目的
    「図書館の自由」は図書館関係者には広く普及した思想である。それは、主に外部からの干渉に対抗する論理であるが、一方で図書館に対しては特定の意見に偏ることの無い、公平な所蔵を求める。単純な想定を行うと、2冊の本A,Bが、それぞれ同じテーマをめぐって異なる意見を開陳するものならば、2冊とも所蔵することが公平な所蔵ということになる。
    しかし、現実の所蔵は、このような単純なケースに当てはまらないと思われる。所蔵に影響する他の価値基準として、要求の強さ、出版時期の違い、出版社の信用、その他が考えられる。そうした基準を総合して、本Aの価値が本Bの価値の2倍以上ならば、本Aを2冊所蔵した方が合理的である。また、対立する意見の書籍グループの間に、出版点数において1:1の比が保たれていないかもしれない。これら他の要因によって所蔵の優先度に差がつくならば、見かけ上、対立する意見の書籍を公平に所蔵することは、実現の難しい課題であろう。
    しかしながら、公立図書館が不公平な所蔵を行うことを容認する者もいないと考えられる。公平さを判断するには、許容しうる「程度」に関する議論が必要である。本研究では、その前段階として、実際の所蔵がどの程度公平(あるいは不公平)なのか、また他の判断基準がそれにどのような影響を与えているのか、これらを実証的に把握することを目的とする。
  2. 研究方法
    2005年の衆議院議員選挙で争点となった「郵政民営化」を主題とする書籍、約70タイトルをサンプルとする。タイトルは、国立国会図書館の蔵書目録の件名などを基準として選定した。各タイトルを、民営化の賛否に従ってグループ分けし、それぞれの所蔵冊数を調べる。所蔵調査の対象は、日本全国の市区町村立図書館で、自治体単位で313館である。県立図書館の横断検索システムで検索可能な自治体を選定した。調査時期は2006年1月16日〜2006年1月24日。所蔵冊数を、需要など、所蔵に影響すると予想される要素を表現するいくつかの指標と対照させる。
  3. 予想される成果
    結果を単純にみるならば、「民営化に賛成」の立場を採る書籍は、「反対」の書籍より約2倍の確率で所蔵されると言えそうである。このような結果になった理由は不明である。ただ、賛成派の書籍は相対的に知名度の高い出版社から発行されていることが指摘できる。


No.19

◆氏名:米谷 優子(甲南高等学校・中学校/関西大学非常勤講師)

◆発表題目:  学校図書館の人的配置に関する市民の要望と自治体対応の問題−「子ども読書活動推進計画」策定パブリックコメントの分析から−

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     2002年に策定された国の「子ども読書活動推進基本計画」及び、それに続く各自治体での子ども読書活動推進計画策定に際して募集されたパブリックコメントを分析することによって、市民が寄せる子どもの読書活動推進に関する施策への期待と、それらに対する自治体の対応を比較した。特に、学校図書館の人的配置に関連する項目に注目し、学校における読書活動推進施策に関する市民の期待と現状とのギャップ、読書活動推進に関する問題点を探ることを目的とした。
  2. 本研究の方法
     2002年策定の国の子ども読書活動に関する基本計画でのパブリックコメント及び、2002年以後2005年3月末までに策定された45都道府県180市町村の子ども読書活動推進計画のうち、38都道府県、14市区町村の計画案に関するパブリックコメント結果を対象とした。パブリックコメントの募集方法、募集期間、パブリックコメントで寄せられた意見総数に関する分析を行うほか、学校における読書環境、中でも特に学校図書館における人的配置に関する項目についての市民からの意見・要望を分析し、それらに対する自治体の対応を検討した。
  3. 得られた(予想される)成果
     学校図書館をめぐる意見は、司書教諭や学校司書など人的配置に関するもの、学校図書館蔵書に関するもの、全校一斉読書など読書活動に関するもの、学校図書館施設や設備に関するもの、地域開放に関するもの、などに分けられる。現場あるいはその周辺から、児童生徒が活発に利用する学校図書館づくりへの要望、地域格差消滅を望む意見が寄せられた。
     うち最も多くみられたのは人的配置に関するもので、司書教諭に関しては、専任化を望むものと11学級以下校への配置を望む声が多くみられた。専任化希望に対して自治体の回答では、定数法を理由に困難とする回答や「教職員間の協力体制や校務分掌上の配慮」等の抽象的表現にとどまり、減免や専任化などの積極的・具体的な回答に及んだ例はみられなかった。また、司書教諭を教育委員会発令と回答する自治体がある一方で、校務分掌であり校長発令とする自治体もあり、司書教諭の発令・業務への認識の相違等が問題点として指摘される。
    また専門の学校司書が配置されて、学校図書館が常時開館され利活用されることを願う声がどの地域でも一様に見られた。ボランティアとは一線を画した、専門職・正規職員としての学校司書配置を望む声が多かったが、これに関しても定数法と財政事情を理由に消極的な回答にとどまった。また学校司書を求める声に対して司書教諭への言及に替えて回答した自治体もあり、司書教諭と学校司書の任務・役割についての周知の必要が指摘される。
     以上から、司書教諭の任免やその職務、学校司書やボランティアも含めた人的配置に対する市民の期待と自治体側の認識のずれ・格差とその障壁となるものが問題として指摘されるとともに、この問題に関するパブリックコメントの実施方法上の問題点も考察された。


No.20

◆氏名:  戸田 あきら(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科博士後期課程)
永田 治樹(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科)

◆発表題目:  学生の図書利用シナリオとアウトカム:大学図書館のアウトカム評価研究の予備的考察

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     アウトカム評価は,組織あるいはプログラムがその目的や役割を果たしているかどうかを,利用者の変化に着目することによって判断しようとするものである。アウトカム評価の指標となる利用者の変化は,利用者の利用目的,利用内容によって生み出される。異なる目的を持ち異なる使い方をする利用者は,異なるアウトカムを得る。したがって利用者の変化を的確に把握・認識するためには,アウトカムを生み出した利用者の目的,利用内容をも把握し,目的,利用内容,アウトカムの関連を捉える必要がある。本研究は,学生の図書館利用目的,利用内容とアウトカムの関連を探るものであり,これは大学図書館のアウトカム評価研究の基礎を成すものである。
  2. 研究方法
     関連をもった一連の図書館利用の目的,利用内容,利用によって生み出されたアウトカムを「利用シナリオ」として捉える。利用者は,それぞれ自分の利用シナリオを持っており,それにのっとって図書館を利用している。学生の利用シナリオを探るために図書館利用者に対し質問紙調査を行い,ア,利用者の属性 イ,利用目的 ウ,利用内容 エ,利用の成果 オ,満足度・期待との差を問うた。クラスタ分析により利用者をグループ化し,グループごとの利用目的,利用内容,アウトカムを比較することにより,それぞれのグループの特徴を明らかにした。
  3. 得られた成果
     利用者を次の4つのグループに分類することが出来た。

    ア.学習グループ
    イ.資料散策グループ
    ウ.おしゃべりグループ
    エ.席借りグループ

  • 人数の分布は「学習グループ」が最多で69%,次が「席借りグループ」の16%,資料散策,おしゃべりグループは,それぞれ8%および7%である。
  • 「学習グループ」は,「知的空間で落ち着きたい」という目的が最も多い。また「良い成績を挙げたい」という目的が他のグループに比して高い。利用内容としては,「場所の利用」「図書館資料の利用」「調査のための利用」「パソコンの利用」が多い。アウトカムとしては,「まなぶ面白さ」「自主的に学ぶ姿勢」「調査能力」など,学び方や学ぶ姿勢に関するものが高い。
  • 「資料散策グループ」の特徴は,利用内容において「書架をぶらつく」が他のグループに比して圧倒的に多いことである。一方,パソコンは余り使わない。目的としては,「知識や教養を得たい」が最も高い。アウトカムとしては「専門的知識」が最も高く,また「一般教養」も他のグループよりも多い。
  • 「おしゃべり」グループは,人との交流を強く意識しているグループである。目的としては,「知識や教養を得たい」にならんで「リフレッシュしたい」が高い。利用内容は,「おしゃべり」が圧倒的に多く,あとはあまり高くはない。特に「調査のための利用」は低い。アウトカムは全般的に高くないが,特に「専門知識」「批判的思考能力」が低い。
  • 「席借りグループ」は,席やPCの利用が多く,あまり資料や調査のための利用をしないグループである。目的も「知的空間で落ち着きたい」という場所を志向したものが高い。アウトカムは全般的に低いが,「自主的に学ぶ姿勢」と「調査能力」は相対的に高い。
     以上の分析により,学生の利用シナリオのパターンとその内容を概略把握できた。今後,目的,内容,アウトカムの因子をそれぞれ探り,因子の明確化と因子間の関連把握を行う。また,フォーカスグループインタビューの分析により,シナリオの具体的,質的な把握を進める。


No.21

◆氏名:松林 麻実子(筑波大学図書館情報メディア研究科知的コミュニティ基盤研究センター)

◆発表題目:情報行動研究における方法論的検討:図書館利用者調査との接点

◆発表要旨:

  1. 研究目的
     1970年代後半以降,情報行動研究の領域では人間の情報行動を認知的観点から解釈しようと試みるアプローチが主流となり,1990年代半ばにいたるまでの20年間,多くの研究者によってモデル構築や理論的基盤の整備が行われてきた。Brenda Dervinの意味付与アプローチやCarol Kuhlthauの情報探索プロセスモデルはその典型とされている。しかし,これらの理論やモデルを基盤として発展してきた調査研究,すなわち情報行動を認知的観点から解釈する研究は,個人の認知的側面を重視するあまりに,比較的早い段階からその限界が指摘されており,なおかつ現在に至るまでその指摘にうまく応えられずにいる。そのような状況を受けて,ここ数年は社会学的な視点を採用した理論やモデルが復活してきているように思われる。本研究では,情報行動研究に対する社会学的視点の導入が具体的にどのような経緯で行われており,どのような意義を持っているのかについて検討する。さらに,図書館利用者調査などの調査研究とこれらの理論がどのような関連性を持ちうるのかについて考察を加える。
  2. 研究方法
     情報行動(ここには情報探索・情報利用・情報実践等の関連語も含む)研究において社会構築主義的観点から調査研究を行っているものをとりあげ,それらについて方法論的な側面から検討する。具体的に取り上げるのは,Thomas D. Wilsonの情報行動アプローチ(およびSchutz理論と情報学研究との関連性についての理論),三輪真木子の多重ゴールモデル,Reijo Savolainenの情報実践アプローチなどである。
  3. 予想される成果
     理論的検討を通して,社会学的視点を採用したモデルや理論の意義を明らかにする。それに加えて,これらのモデルや理論は図書館利用調査などの実際の調査研究に対して確かに貢献することを示す。