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エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立
第2回ワークショップ
電子メール調査によるエビデンス導出の現状と可能性について

議事録

開会の辞 | 発表T(三根:前半) | 発表T(三根:後半) | 発表U(東海林) | 発表V(廣田) | 質疑応答

::: 質疑応答 :::

池内
 どうもありがとうございました。
 お三方とも電子メールで実際に調査を行われた方々ですけれども,調査内容,目的,あるいはどの局面で電子メールを使うかということにおいても非常に多様なものを持っていることがわかったかと思います。
 もう時間となってしまいましたが,せっかくですので若干,質疑応答の時間を設けたいと思います。
 どなたでも結構ですから,ご質問・ご意見等がございましたらご所属とお名前をおっしゃった後にお願いいたします。
 もちろん指定討論者の方からでも結構です,何かご意見・ご質問等はございますでしょうか。

酒井慶應義塾大学
 慶應大学の酒井です。
 二つあるのですが,一つは私は図書館員なので,回答する立場にあるほうから申し上げますと,多分個人あての質問紙調査であればeメールでいいと思うのですが,図書館あての調査というのは答えにくいと思います。
 最後にご発表の中でありましたけれども,やはり文書の形で来て,ある程度オーソライズした回答を図書館として出す場合には,eメールはちょっと出しにくいような感じがしています。
 これが一つで,もう一つコメントがあるのですが,別の話題ですのでもう一回別にいたします。

池内
 どうぞ。

酒井
 よろしいですか。
 あともう一つは,謝礼についてご経験がないか伺いたいんですね。というのは,私も2001年にeメールでホームページのウェブ上のフォームに誘導するという形で調査をしたのですが,そのときに謝礼を設けました。
 それは,amazon.comかamazon.co.jpのギフト券をお送りしますので要る方だけはフォームでeメールを入れてくださいという形で実施しました。
 そのときに数が少ないのでわからないのですが,350ぐらい出して84名回答者がありました。
 その中で25名がアマゾンギフト券をご希望になりましたので,ある程度は効果があったのかなという気もしています。
 ほかに何かそういうご経験があるとか,あるいは謝礼のあり,なしで効果があるかどうかという研究があったかどうか,ご存じの方がいたら教えていただきたいのですが。

池内
 このご質問については,東海林さんにお答えいただくのが適切なのではないでしょうか。
 東海林さんはたしかそういう調査をしていらっしゃいますね。

東海林
 2個目の質問ですか。

池内
 はい,2個目の質問です。お願いします。

東海林
 謝礼に関してですが,研究費をいただいていたということもあって,謝礼をお出ししていました。
 それは,現金は無理なので郵送で商品券をお送りするという形でした。きっと図書館だと全然違う話かもしれないですけれども,今日の発表では言っていないのですが,後々聞くと皆さんが一番楽しみにしていらしたのは結婚メモリアルブックというものでした。(
 つまり,何がよかったかという話をインタビューとかで聞くと,例えば日記とかをいちいちつけていられないじゃないですか。
 でも,新婚さんのときは激動の時期で,後で振り返ったら楽しいはずだというのがあると思うんですね。
 調査は夫婦別々に行っているのですが,その中で双方に公開するというのをもともと決めてある項目だけを整理して,カラーで冊子にしてあげて渡すというのが,一番最後まで頑張る動機になったという方がいらっしゃいました。(
 それとあと研究結果をまとめたフィードバックですね。それこそ自分たちがうまくいっているのかうまくいっていないのか,研究前回の結果が知りたいということで,商品券というのも確かにあったと思うんですけれども,そういうもののほうが(欲しいということでした)。
 ほかの研究などでもやはり縦断研究は,調査に続けて参加してもらわないと困るんですね。
 そのためにはいろいろな研究者の方が工夫していらして,発達の分野だとお子さんのビデオを編集してあげるとか,自分でできなくてほかの人がやってくれたら絶対うれしいものみたいな感じのことがやられています。
 きっと(図書館と)全然違うと思いますけれども,そういう感じのことがすごく工夫されています。

池内
 ありがとうございます。
 もう少し時間をとりますので,ほかにどなたかございますか。

上田慶應義塾大学
 慶應大学の上田です。
 今の東海林さんにお伺いしたいのが二つ,それから三根さんにも二つほどお伺いしたいのですが。
 まず東海林さんのほうで,このインフォーマントというか被対象者からの情報収集に関して,メールのほかに面接と電話があるわけですよね。
 大変漠然とした話ですけれども,それの中ではメールの割合というか重要度は,その全情報収集量のうちどのぐらいを占めていたか。

東海林
 まずこれで。

上田
 はい,一つです。

東海林
 いま答えてしまったほうがいいですか。

上田
 はい。

東海林
 一応メールがメインの調査ですので,そういう意味ではメールが一番重要でして,質問紙に関してはほかの研究との比較をするためによく使われている尺度を使っていたという感じです。
 電話のインタビューに関しては,実はもともとメールと質問紙ということで募集していたんですけれども,いろいろ調査を進めていくうちに,すごく記入量なども多くて,聞くと結構いっぱい話してくれるのではないかというので,後々加えたというのもありまして,メールでとにかく短い時間で反復して聞くというのを一番メーンとしていたものです。

上田
 メールで聞く場合は,ある項目があって,東海林さんのほうがそれに従って質問するのか,それともただ定期的に何でもいいから報告してくださいという形なのか,どちらでしょうか。

東海林
 こちらのほうから構造化された質問を出して,それに対して自由記述なり選択式で答えてもらって,全部の回に関してほとんど同じようなものを繰り返して聞く。時期によって多少加わったりしますけれども,そういう感じです。

上田
 そうすると,質問項目は基本的には時期が変わってもみんな同じものを聞いているということで,対象者によって変えるということではないということでよろしいですか。

東海林
 違います。(質問項目は)同じです。

上田
 はい,わかりました。
 それから三根さんにですけれども,これは大隅さんの本にあるのだと思うのですが,欠点の一番最初に挙がっていた,目標集団が不透明ということの意味がよくわからないのですが,どういう意味ですか。

三根
 これは,調査の提示の仕方だと思います。調査結果にそうした目標,手段がどういうものかというのを書いていないというのもありますし,あとは目標母集団にしたけれども,インターネット利用者の人だけを聞いているので,あいまいという言葉が正しいのかどうかよくわかりませんが,そういった意味で目標母集団としてとらえづらいということではないでしょうか。

上田
 そうすると目標集団という概念がわからなくなってしまうのですが,三根さんの調査では目標集団はどういうことになるんですか。

三根
 僕の場合の目標母集団は,全世界の物理学研究者になります。

上田
 でも,それだったらそれは不透明ではないのではないですか。
 そうではなくて,その中で集めてきたメールアドレスを持っている人たちというのが不透明だったことになりませんか。

三根
 多分それはカヴァレッジ誤差だと思います。
 設定した母集団と実際にeメールアドレスを集めた人の集団がどれだけ目標母集団を反映しているのかという点で,代表性がどれだけあるかということでしょうか。

上田
 はい。
 最後ですけれども,督促による向上があまりなかったと後のほうでおっしゃっていたのですが,あの図を見る限り,督促をしたらかなり向上しているように見えたし,100何十通,督促後に来ているように見えたのですが,どちらが本当なのですか。
 督促の効果があったのか,なかったのかということは。

三根
 あるかないかといえば,確かにあったとは思います。12%の中で5%上がったというならば高いと言えるのかもしれませんけれども,結果的に回答率が低いということなので,何回か繰り返してもやはり督促がどれだけ効果を持つかというのも疑わしくなってくると思います。
 何回も督促ができるような状況ではなくなってきているので,そういった意味で,督促はもうあまり効果がないのではないかということで言いました。

池内
 どうもありがとうございました。
 10分ほどオーバーしてしまったということと,質疑応答の時間を十分とれなかったことは大変申しわけございませんでした。
 ただ,それを補って余りある実りあるご発表をいただけたと思います。
 それでは,これで第2回ワークショップを終わらせていただきます。
 発表者の方々に拍手を賜れればと思います。
 どうもありがとうございました。(拍手
 第3回ワークショップは,本日もお越しいただいていますが,三重大学の佐藤先生を発表者に向かえて,「LibQUAL+」をテーマに開催を企画しておりますので,皆様ぜひ奮ってご参加ください。
 それでは失礼いたします。

― 了 ―

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