エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立 第1回ワークショップ 「図書館評価における来館者調査と住民調査のエビデンスの確立に向けて」 議事録 |
池内(司会)
::: 開会の辞 :::
上田(研究代表者) 改めて申し上げるまでもありませんが,我々,研究に携わる者にとって研究が第一の責務です。よい研究はどうやって生まれるかといえば,もちろんよい研究課題から生まれます。よい研究課題さえ見付かれば,相当な程度のところまでできます。しかし,一方で研究方法もかなりの重要な位置を占めていると考えられます。特に,最近のように「評価」という側面が重視されるようになると,研究方法が評価の対象となることが多くなります。例えば,雑誌論文の「査読」では,その論文の研究方法の妥当性に関心が集中する傾向にあるのは否めません。 確かに最近,研究方法に関して洗練され,精緻化されています。これは大学院教育の進展による影響が大きいと理解していますが,それをさらに進めるための別の方向性を探るのが今回の試みであります。 共同研究を行う中で,メンバーが研究会で発表するといういわば標準的なスタイルを少しアレンジして新しいことを行ってみたいと思っています。それに,研究会に人が集まるような方策も考えています。 新しい試みとして,ワークショップや指定討論者といったものを導入しました。通常の研究会では,発表者が発表し,誰かが質問して終わりということになります。もちろん,この方式で,十分な成果があがり,盛り上がる場合もあります。あるいは,シンポジウム,パネルディスカッション形式といった,数名の発表者が同じテーマを異なる観点から述べる方式もあります。今回,主発表者に自分が経験した研究事例を少し詳しく発表していただき,次いで,指定討論者二人ほどに,その問題についてある程度網羅的に,かつ様々な面から論じていただき,それから,参加者で討論をするという形式を考えました。これはできるだけ多くの論点を明らかにしたいからです。うまくいくかどうかはよくわかりませんが,修正しながら続けていこうと思います。 次に,ワークショップの内容の公表を組織的に行います。発表や質疑は全て記録をとります。もちろん発表者には校正をしていただきますが,これをウェブサイトに載せ,また,何らかの形でまとめることを考えています。ただ,何人かが集まって討論したというだけではなく,参加できなかった人々にも参考となるようにいたします。研究方法の習熟には,経験が重要ですが,他の人の行った事例からも学ぶ余地があります。また,研究方法は,積み重ねにより,洗練や精緻化が期待できます。さらに,図書館で何らかの調査をしようとした時,ウェブを探すとその事例が見付かるということは,「エビデンスベーストライブラリアンシップ」の基盤となるはずです。 さらにもう一つ,日本図書館情報学会の会員に限られますが,このワークショップに,遠くからでも参加できるような措置を講じています。実際のところ,地理的なハンディキャップのため共同研究に参加できない例は多いので,少しでも問題の解消に役立てようと考えています。 果たしてこれらが本当に,うまくいくかどうかはわかりません。試行錯誤しながら進めていきますので,ここはこうしたほうがいいというようなことがあったら,是非,言って下さい。 今回の第一回を開くまでに,企画では池内さんに,運営面では汐アさんに,全てお任せしてきました。ここで,きちんと仕事をして下さったお二人にお礼を申し上げ,挨拶を終えたいと思います。
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