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エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立
第7回ワークショップ
「眼球運動の測定がもたらすエビデンス」

議事録

開会の辞 | 発表I(倉田) | 発表II(大森) | 発表III(三輪) | 質疑応答

::: 開会の辞 :::

池内司会
 質疑応答の時間は後ほど設けますので、引き続き大森先生からご発表いただきたいと思います。
 大森先生は慶應義塾大学の心理学分野の研究者の方で、やはり眼球運動測定等を行っていらっしゃいます。
 準備が整いましたら、大森先生よろしくお願いいたします。

大森指定討論者
 慶應大学心理学専攻の大森と申します。
 よろしくお願いします。
 図書館情報学からいうと部外者で、心理学専攻ですが実は視覚の専門家というわけではないので、眼球運動についての知識が深いわけではなく比較的雑駁なものです。
 これまで倉田先生と一緒にマンガの読みということをテーマにして眼球運動を使った研究をやってまいりましたので、それについて方法論のところに少し力を入れながらお話をさせていただきたいと思います。(以下、パワーポイント使用
 まずは図書あるいはマンガというものを心理学の研究対象として考えたとき、どんな扱い方を心理学者がするのかということです。
 図書館情報学について私は全くの素人ですので誤解があるかもしれませんが、一般的に図書を読むときを考えると、図書というのは情報源で、読み手はそこから情報を引き出す役割、その情報源にアクセスする手段が視線と考えられると思います。
 そこにアクセスした上で情報を読み込んでくる場合に、情報源がどういうものであるとどういう情報がどういうふうに引き出されるのかというところが恐らく興味の中心になるかと思います。
 実験心理の人間がこういうことをやり始めるとどうなるかというと、あくまで図書は視覚刺激の一種ということになって、どちらかというと視覚刺激を受け取って、それに対して反応として視線が出てくるというイメージを持ちやすいわけです。
 そこでの興味はどちらかというと、むしろ刺激と反応の関係を明らかにするところに目が行きがちです。
 もちろん、もっと深いところの読み手の認知的過程について研究することもありますが、第一に直接測定ができる視線というものを反応として考えて、どのように刺激との間で相互作用を持っているのかに目が行きます。
 先ほど倉田先生からもありましたように、心理学でこれまで眼球運動を使って図書を扱う場合に一番多くやられているのは、読書研究というか文章を読む際の研究です。
 そこで多く使われている方法は、単語もしくは1個の文だけを提示して視線位置を測定するものです。
 文字単位の分析もありますが、特に英語のようにスペースで区切られている文の場合には、単語単位で分析されることが中心になります。
 そこで一般的にわかっていることとして、先ほどありましたように目はとまったり動いたりを繰り返すのですが、とまっているときにやることとして、実際に視線がとまっているところの単語を深く処理するのと同時に、その周辺にあるもの、特に英語の文章であれば右側のほうに先の情報がありますから、周辺視野の右側にあるものについても、深い処理ではないけれども予備的な処理を進めているということがあります。
 そうすると、簡単な語であれば、その前の単語を見ているときに予備処理だけで認知過程が済んでしまう。
 結果として、もうそこにはとまらずに、停留は難しい単語から難しい単語へと進むことになります。
 「has」とか「any」とか「in the」というような簡単な単語、あまり処理に負荷がかからないようなものは停留しなくても処理が済んでしまって、スキップしてしまうという傾向が見られることがわかっています。
 こうした停留パターン、どこにとまってどこを飛ばすのか、あるいはどういうふうに戻るのか、どれぐらいの時間とまるのかといったことを、単語の属性、例えばどれぐらいの長さの単語なのか、どれぐらい日常生活でよく経験する出現頻度の高い単語なのか、どれぐらいファミリアリティーの高い単語なのか、あるいはどれぐらい前の文脈から出てくることを予測できる単語なのか、といったことから説明する研究がいろいろなされています。
 それらをもとにして、そうした単語の持っている諸変数と停留パターンの関係を示すようなモデル、つまりそれに従えばこの文章ではこういうふうに視線が移動するはずであるというような予測ができるモデルも幾つか考案されています。
 さらに、予備処理が重要だということがわかっているので、周辺視野情報がどんな効果を持っているのかを調べるため、視線がとまっているところの単語は表示されるけれども、そこから離れた遠くの単語は表示されないように隠してしまう。つまり、見ているところだけ窓があって、あとのところは窓の外で見えないというような方法を使った刺激提示、移動窓(moving-window)法を使って周辺視野の効果を研究する研究もあります。
 こうした形で読書研究はされているのですが、やはり図書館情報で考えるものに比べるとかなりレベルの低い、知覚レベルに非常に近いところでの研究が中心になります。
 それをマンガでやるときにはどうなるのかという話です。
 今回、私たちが使ってきた装置等の説明と一緒にやります。今日お話しする実験は前半と後半に分かれるのですが、前半でやっていたものは基本的な視線移動の測定をするためのもので、そのときにはできるだけ日常のマンガを読む行動に近づけて測定しようと考えますので、紙の冊子形態のものを読んでもらう、実際に普通にマンガを読むときのように1見開きずつページをめくりながら読んでもらうということをやってもらっています。
 文章の場合には単語単位の処理が中心ですが、マンガの読みについてここではコマ単位の分析を基本として考えています。マンガの研究で視線の眼球運動を測定している研究はないことはないのですが、あまりありません。
 本当に数例ですので、方法論的にあまり固まっていません。
 ですからコマ単位で分析をするといった方針を、自分たちでいろいろ決めて始めた感じです。
 使ったものは倉田先生が使われていたものと同じ会社製のEMR−8で、後半の研究では少しバージョンアップしてEMR−NL8になりました。
 この機械のメインの部分は、「1.マンガでの基本的な視線移動の測定法」の下の写真の装置ですが、ヘッドマウント型、つまり帽子をかぶってはかるタイプと、机上であご台に頭を固定して使うタイプ両方の測定ができます。
 この辺の箱がメインの機械で、帽子がヘッドマウント型です。
 それからあご台を使う場合は、あご台に頭を固定して、前のあたりに赤外線の発光部とカメラを使って測定をするという二つの組み合わせで測定をします。
 前半の研究では日常的な読み、つまり普通に冊子を読むためにヘッドマウント型を用い、帽子をかぶってもらって「普通に読んでください」というやり方をしています。
 ヘッドマウント型では、前のアームの先から赤外線光が目に向かって発射されます。
 その隣に鏡がついています。
 これは普通の鏡です。
 帽子のつばの下の左右に赤外線が写るカメラがついています。真ん中にあるのは視野カメラで、これは読み手がどこを見ているかを撮る普通のカメラです。実際には赤外線口から目に向かって赤外線光が出て、その光が眼球から反射して鏡に映ります。
 それがまた反射してここの赤外線カメラで撮影されるという形をとります。
 重いというほどではありませんが、例えば10分、20分かぶっているとつらくなるような帽子をかぶって測定をします。
 先ほどのVoXerタイプと比べた長所としては、測定装置が全部頭にくっついていますから、頭を多少動かして例えば一回視線がそれても、戻ってくれば普通に測定ができるというところがあります。
 逆に言うと、どこを見ているかというのは、先ほどの視野カメラで調べていますので、頭が向いている方向が映っているわけです。
 ですから、例えばマンガであればマンガの冊子が視野内のどこにあるかは、頭の位置によって変わるわけです。
 左下に小さいですが実際に撮ったビデオの画像があります。
 ここにもマンガがあります。
 ここに手があってちょうど見ている状態ですが、これなどは一番きれいに写っているところです。
 実際は、このマンガの位置が頭の位置によって右に行ったり左に行ったり上に行ったり下に行ったりと動いてしまうわけです。
 ですから、刺激のどの部分が視線のどの座標に対応するのかということが自動的にはわかりませんので、どうしても視線位置の自動的な刺激上へのマッピングは難しいことになります。
 そうするとやはりそこのところでは手作業が入ってくる。そういう意味では一長一短ある装置だと思います。
 また、ヘッドマウントの場合は多分VoXerタイプに比べるとかなりキャリブレーション等に時間がかかり、うまくいかないことも多いです。
 実際にはこれをどうやるか。
 いま小さく白く出ているのが、この視野内でどこを見ているかというポイントです。
 それを見て、もとになったマンガの画像があるので、マンガのここを見ているんだということをクリックする形で、どこを見ているかをマッピングしていく作業をします。
 そのマッピングしたデータをもとに停留点を計算して、さらにその停留点がどういうところ、例えばフキダシにとまっているのか、あるいは人物の顔にとまっているのか、背景にとまっているのかといったことを分類していく作業を一個一個の測定データについてやることで、実際にマンガのどこを見ているのかということの分析につなげていくことになります。
 そういう意味ではヘッドマウント型というのは比較的自由にいろいろなところを見られるかわりに、その後の処理は少し大変になる。
 もちろんある程度は自動的にできるところもあるとは思いますが、実際の実験的な興味につながるようなデータを得ようとするといろいろ面倒なことが入ってきます。
 そういったデータを分析したところからどういったことがわかったかというと、当たり前ですが、基本的にはコマの順番に移動することが多い。
 ただし逆戻りしたり、あるいは読み飛ばし、つまりあるコマにとまらずにその先のコマに行ってしまうといったことも比較的頻繁に起こっている。
 そして読み飛ばされるコマというのはランダムに決まるわけではなくて、多くの人が読んでいるときに共通してスキップしてしまうようなコマが存在するといったことがわかりました。
 また、どこにとまるか、どういう要素に停留しているかについては、自然なことですがフキダシに一番多く、長くとまっていて、その次が人物の顔や頭部になります。
 共通してスキップされる、つまりスキップされやすいコマについては、それがどういうコマかをマンガを見ながら検討していって何となく抽出される共通の特徴なので、データとして客観性があるかどうかわからないのですが、まず意味のあるフキダシがほとんどないコマが多い。例えば全然フキダシがないとか、あるいはフキダシがあっても点点点(・・・)としか書いていないコマ。
 あるいは、近接するコマに多量のフキダシがある。
 つまり次のコマにすごくたくさんのせりふが書いてある。
 あるいは、通常の横に行って右下に行ってというようなコマ並びではなくて、コマが縦に並んでいるような、通常とは違う不規則な一般的でない配置をしたコマの並びの途中にある。そういったコマがスキップされやすいことがわかりました。
 また、その後そういうマンガを少し修正して、フキダシの位置やコマの配置を変えたマンガを読んでもらうと、それに応じてスキップが減る、スキップされやすかったコマがスキップされなくなるということも確認できました。
 これが実際のヘッドマウント型をやって測定したところから得られた基本的な知見です。
 その次は後半の実験に入ります。視野を制限する。先ほど文章のところでも少し紹介した、視野制限の実験のお話です。
 今の基本的なデータから、スキップされやすいコマが存在して、マンガのいろいろな要素やコマの配置を変えるとそのスキップを減少させることができるということ、そしてスキップするからには当然、事前にそこをスキップさせる何か条件があるはずだということから、周辺視野にある刺激に何かの形で視線が誘導されているのではないかということが考えられます。
 先ほど倉田先生から絵画の話がありましたが、画像が多分一番見る順番が決まっていないもので、それに対して文章というのはほとんど単語順に読むという形でかっちり読む順番が決まっているものです。
 マンガというのはその中間にあって、一応話の流れに従ってコマが並んでいますが、コマの配置は作者によっていろいろな配置をしますし、人によってはどう読めばいいかわからないような配置もありますので、読み順というのは文章に比べるとかなりあいまいで自由に考えることができます。
 そのため恐らく周辺視野によってもたらされる効果というのは、きっと普通の文章よりも、つまりただの文を見るよりも強いのではないかと考えられます。
 そういったことから、見開きページ全体のうちのかなり広範囲の情報が影響して、どこを見るのか、どこをスキップしてどこに次に行くのかということが決まっているのではないかということが予想されました。
 そこで文章と同じように移動窓、視野を制限するものを用いてその効果を調べることで、どのように周辺視野情報を活用しているのかということの基礎データをとる実験をやりました。
 この次に図をお見せしますが、シリアルケーブルでコントローラーと刺激提示用のコンピューターをつなぎ、そこでリアルタイムに視線の情報をもとにしてどこを見ているかということを調べ、それをもとにしてどこを見せてどこを隠せばいいかを判断し、その画像をつくって画面に表示するということをやりました。
 提示する画像は、もともとのすべてが描いてあるマンガの画像の上にそれの一部分だけ映るようにする穴のあいたマスクの画像を重ねて、さらにその上にコマの枠線の画像を重ねました。
 全く何もないと情報が非常に少なくて視線移動が非常にきつくなるので、コマの枠線だけは常に表示して、コマの中身は窓の部分しか見えないように合成したものを常時提示することを考えました。
 「視野制限実験装置」が実際につくった装置の概念図です。
 今回の場合はコンピューター上の刺激を使いますので、リアルタイムのコントロールができるように、ヘッドマウント型ではなくてあご台と固定のカメラを使った形の測定を使います。
 通常はどういう形の測定をするかというと、画像を提示するコンピューターがあって、コンピューターからディスプレイにどういう画像を提示するかという画面信号が通るわけですが、途中でその画面信号を読みとってコントローラーに送ります。
 それと同時にこのカメラからどこを見ているかという情報、どの角度を見ているかの情報もコントローラーに送られます。
 そうするとここのコントローラーで処理をして、出力としてはビデオ出力、先ほど倉田先生がお見せになっていたようなビデオの映像が出ます。
 その映像は、この画面にどういう映像が出ているのかという画面映像と、それと同時にここから得られたさまざまな視線の情報、位置、角度であるとか先ほどの瞳孔径などの情報が書き込まれたバーコードと、それから実際に画面上でどこを見ているのかをアイコンで示した点が合成されたものが出力されます。
 それを普通のビデオデッキで録画することによってデータを保存する。最終的な分析はビデオで保存された画像を再コーディングする形で分析することになります。
 通常はそういう流れをとるのですが、それに少しだけ追加をしています。
 といってもハードウエア的にはほとんどなくて、コントローラーのシリアル端子からシリアルケーブルを使ってPCのシリアル端子につないでいます。
 コントローラーからは視線の角度等の情報がリアルタイムで垂れ流し式にシリアル端子から出ていますので、それをコンピューターのほうで読み込めるようにつないだところがハードウエア的な変更です。
 そして見ているときに常にこの視線情報をシリアルケーブルを通じて受け取って、PC上のプログラムでこの画面上のどこの座標を見ているかということに変換する。
 先ほどの丸い窓を表示するマスク画像の位置をそこに移動させた上で画像をつくり、それを画面上に提示する。こういう流れを、読んでいる間、常に実行し続けるという形をとっています。
 どれぐらいの視野を制限するかについて実際には4条件を設けています。
 非常に小さい、それから中ぐらい、かなり大きい(といっても半分程度ですけれども)、それから全くマスクをしない統制です。
 後ろの画像がぼけているのは、別の発表で使ったときにあまりあからさまにマンガが見えないように後からぼかしただけで、実際は当然普通に読めるマンガです。
 こういう4条件をそれぞれの見開きにどれか割り当てる形で読んでもらいます。
 マンガの短編1本ですから20ページ強のものを、こういう状態で読んでもらいました。
 「実験中の視線移動の例」が実際にビデオ画面に記録されている映像の例です。
 先ほどの倉田先生の映像とほぼ同じもので、上下にバーコード、要するに情報が入っていて、窓の真ん中にあるのが視線のアイコンです。これらは記録の画面には入っていますが、実際に被験者が見ている画面にはないです。
 被験者が見ているのはちょうど灰色の四角の部分だけで、枠線と丸いところが見えているという状態です。
 上が小視野の条件で下が大視野の条件です。
 これから動かすとわかりますが、小視野の場合は比較的万遍なくいろいろなパーツを見ますが、大視野の場合はほとんどフキダシだけを見ていくという形が見てとれるかと思います。
 この映像は同じ被験者が別のページを見ているときに別の条件で撮っているものです。
 スピードも全然違うのがわかると思います。
 大視野の場合にはもうすぐ終わります。
 このあたりを見ると、小視野の場合にはかなりほかのパーツも律儀に見ることがわかります。
 このあたりの背景になっているような人物も見ていきます。これが実際の見方です。
 これをもとにして、停留点の軌跡を描いたのが「停留パターンの例(参加者間)」です。
 ただし、1人の被験者では同じページを複数の条件ではできませんから、別々の被験者のデータです。
 かなり典型的なものを見ていますので、あまり客観性はないのですが、左上は小視野で比較的すべてのコマですべてのパーツを満遍なくなめるように読んでいく。
 右下が統制の極端な例で、要するに見なくとも筋がわかるようなところとかせりふがないようなところはとまらずに読んでいくというようなタイプです。
 そのデータの分析結果ですが、まず「視野条件ごとの各見開きの読み時間」は読むのにかかった時間です。
 最初と最後のあまり信頼できないところを除いた24ページぐらい分の読む時間()です。
 そのうちの1見開きごとの読む時間にしていますから、2ページ分読むのにかかる時間です。
 小、中、大、統制のすべての被験者を一遍に配置して、見るとわかりますが中、大、統制はそんなに変わらないですが、小視野になると平均的にも中央値的にもかなり読む時間が延びることがわかります。
 それから「視野条件別の各カテゴリへの停留時間割合」はどのカテゴリ、例えばフキダシ、人物の頭、人物の頭以外の部分、何か物あるいは背景、全く余白の部分、そういったものにどれぐらいの時間停留したかを%で示したものです。
 フキダシが圧倒的に多いのは全部共通しているのですが、小視野になるとそれ以外の部分の割合がかなりふえることがわかります。
 しかもそれは特定の部分がふえるのではなくて、満遍なくほかのパーツすべてに同じ比率でふえる、つまり比率は同じままで多くとまるようになることがわかります。
  「視野条件別のスキップ率の分布」がスキップされる率です。
 この場合のスキップ率というのはスキップされたコマ、つまりそれよりも後のコマに先に停留したコマが全コマのうちどれぐらいあったかという率を出して、それを条件別に出したものです。これは箱ひげ図で、真ん中の線が中央値です。
 下が25パーセンタイル、上が75パーセンタイルで、上限・下限が最大・最小値です。
 これを見ると、小視野でのみ有意にスキップが減少することがわかります。
 これから見ると小視野に制限すると眼球運動のやり方がかなり質的にも異なってくることが見えてきます。
 ということは逆に言うと、ページ全体が見えなくてもある程度の視野が確保されていると、視野移動への影響、つまり眼球運動のレベルでの影響はそれほど見られないということです。
 ですから、恐らく影響し始める臨界の範囲があるのではないかと考察しています。
 その臨界の範囲がどのように規定されるかについては、まだそういう条件を細かくコントロールしていないのでわかりません。
 例えば視野に占める割合が問題なのか、あるいは刺激のほうのページ全体に占める割合の問題なのかということはまだはっきりしません。
 以上のようなことがこの実験からわかったと思います。
 このように視野を制限することで読み方の変化を見る実験をしてみました。
 これからどこに向かうのかはまだはっきりしないところもあるのですが、読書に関する刺激で、全体的な情報の中の一部分を制限する形で実験をすることの例としてご紹介させていただきました。
 以上です。

池内司会
 どうもありがとうございます。
 大森先生から心理学分野で眼球測定がどのようになされているか、より知覚レベルに近いところに関心が向けられているというようなお話であったと思いますし、その後、倉田先生たちのグループとやっていらっしゃるマンガの読みにおける眼球測定運動についてかなり詳しいお話を伺ったと思います。
 私もマンガが大好きで昨日も8冊ぐらいマンガを買ってしまったので、どうやって読んでいるか自分の中で考えながら読んでいきたいところです。
 続いて、三輪先生からご発表をいただきます。
 三輪先生もやはり図書館情報学分野でウェブの探索プロセスについて眼球運動測定器を使った実験を積極的に行っていらっしゃいます。
 プロジェクターの入力のほうがまだのようです。
 少し時間がございますので、大森先生にお伺いしたいのですが、最後にも出ていましたが、個人間の差というのは非常に大きいと思います。
 それはどういうふうに出てくるのか、あるいはどうやったら吸収されるのでしょうか。

大森指定討論者
 今回は(差が)大きいことも前提として、24ページ、12見開きあるわけですが、その中で見る見開きによって条件を変える、個人内で複数の条件をとる、全条件が個人の中で全部経験できるような形で相殺しています。
 逆に言うと、それだけしかできない。
 要するに、個人の中で同じページについて複数の条件を比較することはできません。
 マンガの場合には読み方個人差も大きいし、ページによる刺激の差も大きく、しかも刺激のコントロールが非常に難しいので、ある一つの変数だけを取り出して分析するのは難しいところはあると思います。

池内司会
 ありがとうございます。

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