記録

コーディネータ：三輪眞木子
上田修一、根本彰、古賀節子、永田治樹、 小山憲司、酒井由紀子、水谷長志、 阪田蓉子、宮部頼子、（大邱大）、 古賀崇、�ﾞ在順、石田香、松本直樹（以上、東京大）、 シェニー・クロフォード（筑波大）、三浦太郎（順不同）

＜LIPERについて（根本彰）＞

LIPERの名称の由来。
日本のライブラリアンシップの現状、調査の必要性。
→日本版「ウィリアムソン報告」の作成を目指す。

＜Durrance教授の紹介（三輪眞木子）＞

ノースカロライナ大学　MSLS、ミシガン大学　Ph.D.
現在、ミシガン大学情報学部教授
コミュニティ情報と公共図書館の関係を中心に研究。

＜プレゼンテーション（デュランス教授）＞

KALIPER調査

• ＝ウィリアムソン報告以来、最も包括的で重要な調査
• 1999年から2年間、ケロッグ財団より5万ドルの助成を受けて実施。
• 20人の研究者からなる5つのプロジェクトチームを編成。
• 調査概要を記したパンフ10,000部を研究者・図書館員に配布。

• 収集データの統一が最も困難だった。
• LISプログラムを提供するスクールのディーンやディレクターに対し、過去3年間のカリキュラム変化を調査　…26校（85％）が回答
• その後、さらに7つのスクールでインタビュー調査を実施。

• 大多数のスクールが現在、情報技術による重大な変化に直面。 …「利用者志向」（user-centered）など6つの傾向がある。
• ［付録A］表（学会講演p.15）＝LIS/ISカリキュラムの見取り図
  （情報技術、コンテンツ、情報システム、人間の情報行動、複合領域）

［宮部氏］
　表を作る際の論理は何だったか。
→［デュランス教授］
　最もベースにあるのが情報技術。次に、LISと他の領域を差異づける特徴であるコンテンツ。次に、コンテンツを利用可能にする手がかりである情報システム。そして、システムを利用する人間の情報行動があると考えた。

［酒井氏］
　図書館運営・予算など実務的側面はどこに位置づけられるか。
→［デュランス教授］
　管理は複合領域に位置づけたが、表は研究的側面に偏るかも。

［根本氏］
　図書館の館種ごとの相違はどう位置づけられるか。
→［デュランス教授］
　図書館は概して情報システムに入ると考えている。ロバート・テイラーの提唱する「情報環境」が、館種の相違に対応するだろう。これもまた情報システムに入ろう。

［宮部氏］
　図書館運営の位置づけについて、それは全体の中で中心的位置にあるか。
→［デュランス教授］
　範疇分けを主眼に表を作成したが、相互の位置関係は未考。

［クロフォード氏］
　個々の領域は重なり合う円を描くのではないか。
→［デュランス教授］
　精緻化は今後の（あなたの）課題（笑）

• 研究者だけでなく現場の図書館員に議論が広がっている。
• LISの枠組みを形作る方法に影響を及ぼした。

• UCバークレー校　図書館プログラムの弱体化が顕著。
• ミシガン大学IS　12カレッジのうちISは、4番目に多く外部援助を得ている。
  情報化への対応とともに大学内外からいかに資金を得るかが重要。
  ALA認定の修士号MSを提供。報告書 http://www.si.umich.edu/coa/
• ノースカロライナ大学ILS　USニュースで第1位に評価される。
• イリノイ大学GSLIS　USニュース第2位の評価。
  両大学とも「図書館」の名称残る。人文学系のディーンを新たに迎えている。
• シラキュース大学　ロバート・テイラーが主導。
  シラキュースの強力な影響下にワシントン大学ISが発展している。
• コンピュータ研究協会（CRA）でLIS教育課程に関する活発な議論。
  UCアーバイン校はじめ、インフォメーションスクール50校の関係者が集まる。
  コンピュータ科学の限界を認識した上で、人的要素HCIを中心的に論じている。

［酒井氏］
　LS学生の間に、収斂プログラムをALAが認定することへの反発はないか。
→［デュランス教授］
　私は聞いたことはない。図書館は彼らに多く就職口を与えるし、スクールの提供するスキルに対しても充分な見返りがあり、不満はないと思う。

［宮部氏］
　CRAの活動に参加するスクールはすべてALA認定校か。
→［デュランス教授］
　そうではない。15校だけ。2年ほど前はCRAに全部で15のLIS関連プログラムが参加し、うちALA認定校は4校（ピッツバーグ、ドラクセル、ミシガン、ワシントン）だけだった。が、それではあまりに少なすぎるので、各校のディーンに参加を呼びかけた経緯がある。

［宮部氏］
　CRAの活動に対するALAの捉え方はどうなっているか。
→［デュランス教授］
　ALAの多くの職員がCRAの活動に肯定的だが、否定的な意見もある。

［デュランス教授］
　日本の資格認定の動向はどうなっているのか。
→酒井氏より、医学図書館協会認定資格制度の説明。

［永田氏］
　図書館員のリカレント教育に米国ではどう対応しているか。
→［デュランス教授］
　州政府機関（state agency）が責任を有する。公共図書館界では、定期的にセミナー、ワークショップを開くシステムが各州に築かれている。5年くらい継続的に受講すれば学位・資格を付与されるプログラムもある（COSLA(Chief Offices of State Library Agencies)が州機関の連絡調整を行う）。ALAでも近年、連邦規模で図書館員の継続教育を行うことに関心が強まっている（ASCLA(Association of Specialized and Cooperative Library Agencies)中心）。

［永田氏］
　すでに専門職学位を持つ図書館員への対応はどうか。また、ミシガン大学などのスクールはそこにどれだけ関与しているのか。
→［デュランス教授］
　ALA/CLENE(Continuing Library Education Network and Exchange)を中心に議論されている。後者に関しては、ミシガン大学で夏期8-10週間、イリノイ大学で6週間の再教育プログラムが提供されている。そこでの力点は、情報技術、図書館運営、人事評価に関する内容に置かれる。また専門図書館協会や医学図書館協会では、とりわけ再教育が重視されている。

［権氏］
　資格を昇進させる講座（certificate advanced study）の動向はどうか。
→［デュランス教授］
　シラキュース大学のメディア講座など、1年間の講座もあるが、現職の図書館員が休暇を取って参加することには困難が伴う。

［宮部氏］
　「継続教育」という場合、想起されるのはサマースクールか。
→［デュランス教授］
　一般に、短期の講座で行われる。

［三輪氏］
　コンバージェンスの方向性の中でリカレント教育はどう行われていくか。
→［デュランス教授］
　テクノロジーアプリケーションに特化していくだろう。個人的には人の情報行動を重視したいが、そうした講座では予算がつきにくい。

［根本氏］
　ウィリアムソン報告を否定的に捉えているようだが、それはなぜか。また、同報告とKALIPER報告の基本的相違点は何か。
→［デュランス教授］
　1923年当時、かのメルヴィル・デューイでさえ図書館員がthinkerであることを望まなかった。対照的にウィリアムソンは図書館員に大学の学位を求めるなど、図書館員の知的視野の広さを主張した点で秀逸であったといえる。しかし、図書館設置が拡大したのは資金を潤沢に持ったカーネギーがいたからであって、報告書の中に図書館発展を導くような積極さはなかった。（KALIPER報告には、LISの枠組みを発展させようとする能動的な意志がある）

［宮部氏］
　日本の現状はカーネギー登場以前の米国に比定できるかもしれない。加えて、カリキュラム内容は政府の制約を受け、改変が難しい状況にある。
→［デュランス教授］
　米国でもスクールメディアが同じような状況にある。カリキュラムに規制がかかり、官僚機構はきわめて保守的で融通が利かない。しかし、政府に代弁者を送り発言の場を確保することで、変化は必ず生まれると信じている。

［宮部氏］
　学会講演の中で、情報学の学士号取得者が増えているとの紹介があった。今後、専門職図書館員は社会からどう認知されていくであろうか。
→［デュランス教授］
　情報学の学士はテクノロジーへの志向性が非常に強い。いっぽう、専門職図書館員はコンテンツや人間の情報行動を包括的に理解する。案外と大切なのはマーケティングやPRであって、図書館員ができることを人々にもっと積極的に（例えば4月の図書館週間で全国的に）伝えていく必要がある。