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::: 発表U(永田治樹氏) :::
池内(司会)
どうもありがとうございます。
それでは、指定討論者の永田治樹先生から「EBLにとってのLibQUAL+」をよろしくお願いします。
永田(筑波大学)
永田でございます。
よろしくお願いします。
昨日、第1回目の指定討論者の歳森さんに会ったら、何でおまえが出ていくんだと言われてしまいました。
学会員もみんな忙しくて人手不足だから、と答えておきました。
そんなわけで申しわけないと思いますが、私が埋め草の話を20分いたします。(笑)(以下、パワーポイント使用)
私の話は二つです。一つはいま佐藤先生がいろいろご説明なさった中に入っているんですけれども、研究の面から見てサービス品質をどのように測定するかという問題です。
それからもう一つはサービス品質の測定の問題は実務の問題でもあり、サービス品質向上のためのツールとしてLibQUALはどの程度のものなんだろうということであります。
ライブカルかリブカルか。(笑)
実はこの議論は、何年か前にワシントンでARLの図書館評価の会合があったときに、会場にいた200人ぐらいでどっちがいいかみんなで決めたのです。
そうしたらライブカルが多数派だったのです。
ですから、その後ライブカルと言う人も増えたけれども、リブカルと呼ぶ人も今も多いですね。(笑)
どっちでもいい話です。
さて一つ目ですが、実はもうわかっているはずではないかという声もあるでしょうが、この議論で、サービスとは何かという部分が意外と重要なところであります。
先ほど佐藤先生もご説明なさっていましたし、ちょっと重複するのですが、今日はいろいろな方がご参加ですので、再度あえて試みます。
というのは、図書館サービスの場合に、現実に我々の目の前にあるのは、いわゆる純粋のサービスからいえばかなり違った姿です。
純粋のサービスというものは実は形がないのです
感ずるものであって、物理的に体験できるものはないのです。
一番純粋なサービスの例を挙げると音楽会です。
音楽会に行って帰ってくるときに何も持って帰ってこないですよね。つまらない音楽会だったという失望か、それともとてもすばらしかったという満された充足感、そうした感情しか持って帰れません。
サービスには形がない(非有形性)のです。パンフレットはありますけれども。(笑)
それからサービスは時や場所とくっついている不可分性という特性があります。
図書館サービスでも開館というサービスは時間とくっついていて時間とともに消えていってしまいますし、また閲覧室などとの場所とももちろんくっついています。
サービスには、そういった特性があるのです。
それから異質性というのは、サービスは人間を通してやりとりされるもので、またサービスとは人間の活動として、異質性が生じます。
一つはお客さんがいろいろなサービス要求を持つという意味で、異質性が求めらますし、それからサービスする側もいろいろな対応をするわけです。
ここで私がしゃべっているしゃべり方と佐藤さんのしゃべり方は違います。
そういう異質性がみられます。
それからサービスの性質としてもう一つグレンルース(Grenroos)というノルウェーの経営学の先生がいっている話、これも佐藤さんの話に出てきたところですが、非常に重要な話です。
サービスのコンポーネントにHowとWhatがある、つまりどのようにサービスを受けるか、サービスから何を受けるかという点です。
プロセスというか、どのようにサービスを受けているかというのがFunctional Outcomesです。
Functionという言葉は儀礼という意味があります。
それからTechnical Outcomesというのはサービスによって得たものです。
サービスで純粋にサービスだけというものはほとんどなく、非有形な純粋サービスの部分を含み込みながら、さまままな形をとって、あるいはさまざまな有形なものとともに、人々にサービスが提供されます。
例えば、コックのサービスは料理した食品のなかに存在します。
また、私どもが今ここで皆さんにお話をするというサービスをしていますが、パソコンを使って、机を使って、部屋を使ってと有形なものを活用しながらサービスをしています。
サービスは実際には物と純粋非有形なもとがミックスしたものとして現れ(具体的にはその両端の連続体のどこかに位置する)ているということを踏まえておいてください。
不可分性、異質性も同じです。
この場合も両端のの連続体の中のどこかにあります。
また、Technical vs. Functional Outcomesという点からいえば、Technicalな部分が多いサービスとFunctionalな部分が多いサービスがあります。
そこでサービスの品質測定の話であります。
品質とは何かというときに、幾つかの規定の仕方があります。
品質というのは、何かすばらしいものが内部にあるんだという意味があります。
これはPhilosophicalなApproachです。このApproachだと品質は測れません。
具体的に何か中にすばらしいものがあるんだなとということだけが感じ取れます。
比較的に簡単にはかれるものはTechnical Approachでありまして、品質といいますと一般に物の品質がどうかということです。
日本の産業はこの点で世界のトップを行っていると言われてきたものです。
この場合は、ある基準からのずれを品質として見ます。
あるいは失敗していない確率を品質として見ます。日本の車の性能はいいです。
しかし、あまり魅力的ではないかもしれません。だからイタリア車を買いたい。
でもイタリア車だと品質が悪い可能性がある。
どういう意味かというと、当たりが悪いと変な車に当たって大変なことになってしまうということです。
日本の車は、あまり魅力はないかもしれないけれども、当たりは悪くない、品質はいいんです。ここではそういうはかり方をします。
それからもう一つはUser-Based Approachです。
時間や場所との不可分性ということを先ほど申し上げましたけれども、不可分性というのはサービスのいわば生産と消費がくっついているということでもあります。
日本語ではサービスの生産と消費という言葉を使いますが、英語ではサービスの生産と消費という言葉はないです。
両方あわせてService Deliveryと呼びます。生産と消費しているということが同時的に起こっていますので、その間サービスの品質管理はできないわけです。
ではその品質をどう測るかといったら、サービスを受けた人に後から聞くよりしようがないのです。
あるいはサービスは見えないのですから、サービスは利用者に聞くよりしようがないという意味でもあり、User-Based Approachという形になるわけです。
サービス測定はUser-Based Approachでなくてはいけないということになります。
サービスは完全にUser-Based Approachでしかわからないかというと、必ずしもそうではない場合もあります。例えば、あいさつしたかどうかというのはチェックできるわけです。
昨日、一昨日と桑名のPFIの調査に行ったんですけれども、PFIの業者が毎日きちんとあいさつしているか、何回あいさつしかたというチェック項目があるとすると(幸いありませんでしたが)、それはチェックできます。ただし、そうすると業者さんは、あいさつはするけれども、ほかのサービスを悪くする可能性があります。(笑)
だからサービスというのはトータルで見ないといけないので、そういう測り方はだめなわけです。結局User-Based Approachの測り方しかない。
それで、どう測るか、どこを見るかというのがdimensionalityとかfacetとかいう観点を指す部分です。
我々は局面と言っています。
サービスを判断するとき、実際はどこに着目するかという問題であります。
でも、まずはどんな質問をするかです。
先ほど佐藤先生の話があったように、SERVQUALは97の質問(これらの質問はフォーカスグループインタビューで適切なものとして導き出します)の回答結果を因子分析して、五つの局面を設定しています。
そして質問を22に縮めています。
実は佐藤さんとの研究の中で、集計データの因子分析においてこの五つの局面が抽出できないのはなぜかとかなり議論したわけです。
他の人々の議論も当時ここに集中していました。
でも今ではそんなことは問題にしなくなりました。SERVQALを設定した三人(PZB)の一人Parasuramanも平気で、業態が違えば別の局面でもかまわないよということを言っています。
我々が非常に苦労していたその辺の話が、2年ほど前にでたBenjamin Schneider & Susan S. Whiteの"Service Quality"というの本に、さらっと書いています。
というわけで、図書館は基本的に図書館サービスのはかり方を考えればいいわけです。私どもは当初SERVQUALに恐る恐る図書館の部分を突っ込んでやってみました。
かなりSERVQUALに忠実にやっていますから、先ほど言ったような別の五つの局面が出てきました。
LibQUALもあれこれ試行錯誤していました。
途中では何だか理解に苦しむような局面を出していましたけれども、最近はすっきりしました。
でも、正直言ってすっきりし過ぎているようにも思えます。(笑)
LibQUALの評価ツールの問題としては、最大のポイントは質問項目の選定です。
それによって導き出される局面の設定は状況によって変化します。
基本的にはやはり質問が顧客の視点に合っているかどうかということです。
ここが悩ましいところなのです。
我々はSERVQUALを一生懸命図書館用にするための論拠として、グレンルースの議論を使ったんです。
Technical Outcomesのほうがどうも図書館のサービスには大きいから、この部分を大きくしよう、大きくしようということでSERVQUALから引っ張ってきました。
SERVQUALは、ある意味では純粋サービスを含めてサービスに近い評価です。
そして、いろいろなサービスを評価する一般的なツールです。
そこから見れば、図書館のサービスはかなり物のサービスに近いところまで寄って行きますから、こちらの部分をたくさん入れようということです。
今のLibQUALではそうしたものがいっぱい入っています。むしろそれが入り過ぎているかもしれません。
そこで、第二番目の話題です。評価そのものの研究を純粋にやるなら別ですけれども、LibQUALは、実務のツールでから調査の容易性が非常に重要ですし、それから業務運営への有用性が重要です。つまりサービス品質を向上させるために評価するわけです。
これらは先ほど佐藤先生も説明した一連のGap Modelです。実は五つなのです。
(1)から(4)まで全体を総合すると5番目ができます。
このGapという視点は非常に重要で、どこにGapが生じるかを発見して、そしてそれを埋めることが実務での課題となります。
品質評価はそれを把握するいとぐちです。
このモデルに基づいてSERVQUALが考案されました。そのほか派生的な評価方法がいっぱい出てきました。LibQUALはそうしたものの一つです。
ところでLibQUALの局面設定が以前のものよりすっきりしたと申しました。ある意味ではサービスの品質そのものをどのように評価されたかについてはわかりにくくなってしまいました。
「サービスの姿勢」という局面はいろいろなサービス観点をひっくるめたものという感じです(笑)。
それだけ図書館固有のサービス部分に焦点を当てたという意味でもあります。
ただし、図書館のサービスの評価が十分かといえば、それには異論があります。
Peter Hernonらの意見です。
Hernonの指摘はもともと非常に鋭くLibQUALの弱いところを突いています。
特に、図書館のサービスの展開を踏まえて、きちんと調査したほうがいいよというようなことを言っています。
また、LibQUALの回答率の低さ、きわめて低いのので、それを突いています。
それで、いとぐちから次のアクションというのがあるわけです。
LibQUALをやってどうするんですか、市古さん。(笑)
市古
私は一応図書館の上にいるので、それは多分Gapを見て、インプルーブメントにつなげる方策を得、そしてなおかつそれを説明して、お金をもらってくるということをするわけです。
永田
だから図書館評価を行う理由は二つあって一つは本当に改善するための証拠集めと、もう一つは自己証明というかアカウンタビリティーの問題ですよね。
改善のために何をやったらいいかというのは、結局、SERVQUALだったら期待の大きいサービス項目という話に着目するわけです。
実はSERVQUALの亜流みたいなものがいっぱいあります。
図書館に関してはLibraとかRodskiというものがあります。
Libraというのはイギリスで一番多く行われています。
それからRodskiはオーストラリアです。
これだと重要度をはかっていて、重要度が高いものについて優先順位を高くするという話です。
いとぐちをつけ方ははさまざまに考えられます。
LibQUALは、必ずしも十分とは言えないけれども手軽な測定パッケージです。
特に現場にとっては、お金を払えば計算してくれて表を出してくれるのが魅力なんです。(笑)
ARLのMartha Kyrillidouのマーケティングが成功したということです。
まじめに考えますと、現場で問題のいとぐちをこれで確認して、ほかの調査を併用してきちんと問題全体を把握することが必要かと思います。
他の大学図書館との比較に使えるという話があります。
確かに評価対象には共通する部分というのがあります。
どこの図書館でもこうだというのがあります。そういう意味では多少比較はしてもいいかなというところはありますけれども、むしろベンチマーキングという言い方がいいかもしれません。
ベンチマーキングというのは、すばらしい経験値に対して、それに自分のところも持っていこうという話で、慶應大学の図書館が早稲田大学図書館よりいいとか、そういう話ではありません。(笑)
あと各図書館の固有の活動をどう評価していくか。医学図書館なら医学図書館のそれぞれの特色がありましょうし、そういう意味では評価の仕方が変わってくると思います。
そのあたりが実践的な運用で気をつけるべき問題かと思います。
最後に、実はサービス品質評価というのは、もともと民間会社のもので、結局、最終的に利益率を向上させるために意識されたものです。
ですから、大学でも評判がよくなって志願者がふえるとか、そういう話につながればいいわけです。
慶應大学のサービスはすばらしい、だから志願者が来るとかという話ならばいいわけです。
そんなわけでこの図に描かれた収益につながるチェーンをどうやって実現するか、これがサービス品質評価の問題です。
しかし、我々としてはこれだけだと図書館に必ずしもつながっていかないということで、説明責任という問題を考えます。
図書館は利用者の要求に高いサービス品質で対応しているというわけです。
そのことによって組織としての図書館の存立が正当化できるわけです。
サービス品質評価は、説明責任の非常に重要な根拠になるものだと思います。
ただし、組織の有効性全体がこれで証明されたわけではないです。
組織の有効性(=成果)として、サービス品質がそれをどれぐらい表しているかは改めて考えなければいけないでしょう。
例えば、大学図書館が学生の学習の支援をしているとするならば、サービス品質をいくら上げても学生が勉強しなかったらどうしようもないわけです。
そういう問題が少しあります。
まあこれはちょっと意地悪な言い方で、多分両者同じ方向を向くと思いますけれども。
以上で終わります。(拍手)
池内
どうもありがとうございました。
すばらしい枯れた話芸という感じでしょうか。(笑)
永田
もう枯れちゃったの。まだ枯らさないで。
池内
枯れるとすばらしいと。
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