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::: 質疑応答 :::
池内(司会)
どうもありがとうございました。
指定討論者の永田先生は、サービスの質という概念に一歩立ち返ってLibQUALやその周辺全体をまた光で照らしていただいたという感じで、須賀先生のほうはLibQUALやSERVQUALの理論上あるいは実践上の問題点についてご指摘いただいた、大変興味深いご発表だったと思います。
ただいまからディスカッションの時間を設けたいと思います。
先ほども申しましたとおり、大きな声でご所属とお名前をおっしゃっていただいて、発表者の方でも指定討論者の方でもフロアの方でもどなたでも結構ですので、疑問点あるいは討論したい点等について、ぜひご発言いただければと思います。
心の準備はよろしいでしょうか。(笑)
それでは、時間は5時までですので、会場のほうからご質問・ご意見等はございませんでしょうか、ぜひよろしくお願いいたします。
三輪(メディア教育開発センター)
ここ(前のほうの席)に座った責任があるみたいなので、質問させていただきます。(笑)
メディア教育開発センターの三輪と申します。
佐藤先生のお話の中で、データ分析の過程で、実際の分析にかかる前にヒストグラムをつくられたり、利用者の属性別にデータを比較してみたりされているということですが、実際、その結果として例えば利用者の属性によって評価の観点が違うとか、あるいは全く尺度が違うといったようなことが出てきた事例があるのか。
あるいは出てきた場合に、それに対してどういうふうに解釈の部分で対応されているのかについて、ぜひお伺いしたいんですけれども。
佐藤
実際には、大学院生とか学生、教員では随分利用が違って、期待も違いますし、それから実際の認知も違います。
教員の場合には期待がのっぺらぼうで、高いとか低いというよりもあまり差が見えないというケースが時々出てきます。
それはなぜかというと、恐らく自分が行って使っていない。(笑)
そういうパターンがやはり見えてしまうというのがあります。
それから、大学院生、教員の場合には、資料、コレクションに対しては非常に敏感です。
もちろん学生も敏感ですけれども、やはりドキュメントの入手ということに関しては非常に敏感だという傾向は確実にあります。
学生の場合には、場所あるいは場のほうに非常に反応を示す。
ですから、利用者の属性によってかなり違っている。
それから、分野別に例えば医学系の図書館とそれから工学系、人文社会系というふうに見ていっても、やはりそこの部分も違いというのはある程度出てきます。
三輪
今のご回答でよくわかりました。そういう属性による違いが出て最終的に図書館の評価ということで解釈をする場合には、全体としてトータルな解釈をされるのか、あるいは利用者の属性別に見て、例えば研究者にとってはこの図書館はこういう点とこういう点が高いとか低いとか、そういう議論をなさるのか、お立場によって違うのかもしれませんけれども、そのあたりが知りたいです。
佐藤
実務というか、実際にやる場合には、やはりデータの件数をきちんと集めて、その上で図書館ごとに、例えば分館があるのであれば、分館ごとにサンプル数をきちんと集めることが必要ですし、その場合に属性別にそれなりに分けて対応できるような件数を集めることは必要だと思います。
ですから、ごっちゃになってしまうと、違うパターンがブレンドされてしまってやはりよくないので、それはきちんとしなければいけないと考えています。
三輪
ありがとうございます。
北(大阪市立大学)
大阪市大の北です。
一つの大学に図書館が一つしかない、キャンパスが二つあるけれども、図書館はそれぞれに1個しかないとかというパターンの場合、非常にわかりやすいと思うんですが、例えば東大とか京大のように研究科単位で分館があり、さらにその中のまたセクション単位で分室があり、結果として一番研究要素の強いやつが全部○○科、例えば教育学部にあるのではなしに、教育の中の心理の教室単位であるとか、工学部の中の材料のところに本当においしいのがみんな隠れている。
例えば〔キャプチャーを入れるが?〕アクセスも全部できない、謝絶の塊みたいなところを調査するにはどういう組み立てを考えたらいいんですか。
永田
それぞれやらざるをえません。
北
それぞれを書いてやる。
永田
それしかないでしょう。
北
それしかない。
永田
だからわれわれとしてはそれぞれやりました。
佐藤
質問のアンケートをつくるときに、よく利用する図書館についてお答えください、よく利用する図書館分室はどこですかというのを先に聞きます。
北
それで分析したと。
わかりました。
永田
さっきの話の関連でいいますと、LibQUALの調査をやってもやはり属性ごとに評価します。
例えばLibQUALの三つのアスペクトの中に場としての図書館があるでしょう。
あれは教員にとって関係ないです。そういう意味で別々にやらなければいけません。ただ、場としての図書館というのは現在のアメリカでは電子図書館としての要素です。
インフォメーションコモンズです。ですから単なる形ではないです。
上田
そうなんですか。電子図書館に対しての場所としての図書館ということではなくて、電子図書館を利用する場としての図書館ですか。
永田
要するにミックスしてしまっている。
だから、旧来の物理的な図書館として評価しているわけではない。
池内
ほかにありませんか。ぜひこの機会に。
上田
これは市古さんにお聞きしたいのですが、今やろうとしているのは慶應大学全体でやるんですか。
市古
今、北先生のお話にもありましたけれども、それはこれから検討するところです。
図書館ごとにどうするかということにしようか、それとも最初だから慶應全体で総体として何かやってみようかというのは、調査によって何が出るか、出てくる部分がまだ明確ではないので、これから考えます。
上田
その場合、(リブカルではなく)ライブカルと言ったほうがいいんですが……
市古
でも、アメリカの人も言いかえている人がいっぱいいました。(笑)
上田
LibQUALは日本で最初になるんですか。
市古
そう思います。
私は彼女の手下ではないんですけれども、ARLはなるべく日本で集めてほしいという意向があります。
慶應が翻訳をしたとすれば、それが日本語になりますので、そうしたときに日本でワークショップをやり、そして2008年のそのLibQUALに乗ってほしいという意図は向こうにはあるようです。
一応ワークショップができれば、そういうものを開催したいなとは思っています。
池内
それではほかに、指定討論者の方からでも結構ですし、どなたかございませんでしょうか。
市古
永田先生に質問ですが、私はどうしてもよくわからないんですけれども、サービスの質というのは結局、User-Based Approachというほかに何かよりよい方法というのは(ありますか)。
永田
純粋サービスはもうユーザーに聞くよりしようがないんですよね。
ただ、目に見えるようなものは、ほかの形で評価してもいいんですよ。
ただ、さっきのあいさつのような形で評価してしまうと全体が壊れてしまうので、何かうまい固まりがあればいいですよね。
蔵書などというのは、ある意味ではサービスの評価としてできます。
結局、図書館員がどう集めたかの評価でしょう。サービスが物になっているから、それを物として評価できますよね。
そこのところはサービスと物との連続体です。
そういう意味で、LibQUALは一体どのあたりを押さえているのかなと思います。
要するに、そういう意味ではパーフェクト(完璧)ではないですね。
Hernonたちはもっと細かいところまで見ていかないといけないと言っているわけです。
最初にLibQUALを使うとしてもそれを補う次のアクションが必要でしょうね。
先ほどのお話でちょっと気になったのは、相対的ではありますけれども、結局、品質というのは基準に対する差ですから、基準を上げれば認知は低くなるんですよね。
したがいまして、あるところで基準が低いので認知値が高かったからといって、そこのサービスの質が客観的にいいわけではないです。
それはその状況においての話です。だからあまり比較はできないよと言っています。
それをベンチマーキングにしてしまうと、ある意味ではかなり乱暴です。
ただ、それはLibQUALのマーケティングにはいいでしょうね。(笑)
市古
使うほうとしては十分それを意識して使う人もいると思います。
上田
そういう話になってしまうとちょっとね。
酒井(慶應義塾大学信濃町メディアセンター)
慶應大学信濃町メディアセンターの酒井と申します。
今のコメントですけれども、例えば図書館員がこれぐらいいけているだろうと思っているレベルと、実際に利用者が思っているレベルとのGapをはかるような調査というのは、これまでされたことがあるのでしょうか。
永田
これは我々の調査で職員を対象に随分やりました。
佐藤
幾つかの大学で職員の調査をやってみました。
一番最初にやったのは東北大ですが、職員に全部同じ質問をして、利用者はどういうふうに期待していると思いますかというのと、利用者の期待を比べることをやったわけです。実際の認知についても尋ねてみると、一番おもしろかったのは、職員は非常に自分たちを過小評価している傾向があったことです。
それから、別の大学でもやってもみたのですが、認知に関してはやはり利用者と図書館員の期待の予測というのが結構ずれるのがあるのと、やはり認知というものは非常に過小評価という、同じような結果が出てきました。
永田
それはいわばサービスの割と純粋な部分ではそうです。
つまり、対応とかそういう意味では客(利用者)はあまり気にしていないんですよ。
だから職員のほうが過小評価しているんです。でも、図書館員がうぬぼれている部分もあります。
例えば、ITサービスなんていうのはすごくいいと思っています。
でも、客はそう思っていない。(笑)
市古
その調査結果はどこかに発表されているとか、見せてもらうことができるものでしょうか。
佐藤
持っています。
上田
でも、職員調査は結構出ていましたよね。
佐藤
職員調査のものはないと思います。
差しさわりがあるところがあるというのがあって、特に利用者評価のほうがメーンだったので、今までそれは発表しないできました。
池内
ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。
新(静岡県立中央図書館)
静岡県立中央図書館の新(あたらし)と申します。
公共図書館の職員なのでお伺いしたいのは、SERVQUALは一般的なサービスに関する指標ですので、特に研究図書館にのみ適用できるというようなものでは元来ないと思います。
佐藤先生のお話でニューヨークで唯一パブリックライブラリーの研究図書館で調査があったということがあるのですが、何かそういう公共図書館向けのバリアントみたいなものの開発などがあるというようなことをもしご存じでしたらお伺いしたいのですが。
佐藤
New York Public Libraryの研究図書館部門というのは、ARLに入っているわけですから、要するに大学図書館と同じようなサービスをしているところなので、一般の公共図書館の参考になるということではないと思います。
ただ、SERVQUAL自体は、先ほど永田先生からお話があったように、人と人との相互作用の部分を扱っているわけですから、これは公共図書館に適用できないわけではないです。
また、LibQUALという部分では、アカデミックライブラリーに特化した形で、あるいは我々が今までやってきたのもそこの部分に特化した形で追加の質問を用意してきましたので、公共図書館という部分については別途考える必要があると思います。
ただ、先ほど最初に言いましたように、カナダの人がやっている研究は公共図書館を対象にしたものだし、もちろんやっていないわけではないです。
須賀
非常に少ないです。
作野(愛知学院大学)
愛知学院大学の作野といいます。
不勉強で申しわけないですがちょっと教えてください。
一般のサービスと図書館サービスとを比較した場合に、サービスの特徴の中で、生産と消費の不可分性という話が出ました。
その一般の純粋サービスというのは、サービスを提供する側と受ける側とのほとんど2人でいろいろなことがコントロールできるのではないかと思います。
ちょっと認識が違うかもしれません。ただ、図書館サービスの場合は、その間にどうしてもサービスの受け手と提供する人が、コントロールが非常に難しい図書館資料が入ってくる。
そういうことをこの図書館サービスを考える上に、どう考えていくべきかということがちょっと気になっているのですが。
今日のこのテーマと直接関係ないかもしれませんけれども、お教えいただければと思います。
池内
どなたかご指名はありますか。
作野
永田先生に。
永田
どんなサービスでもある意味では物を媒介にしております。
物の性質が図書館サービスは多少違うかもしれませんけれども。
例えば図書館サービスのリファレンスカウンターのインクワイアリーサービスなんかはサービスの純粋形態に近い形になります。質問の趣旨がもう一つ理解できていなかったのですが、基本的にはさっき申し上げましたように、Functionalな部分とTechnicalな部分という切り方が一つあると思います。
Technicalな部分の中の違いを、どの程度概念化して見ていくかというのがひょっとしたら出てくるかもしれません。つまり、間に入るものの性質によって少しサービスのあり方が変わるかもしれません。
例えば外科手術のためのメスと図書館の資料ではかなり違っていますよね。(笑)
そういう概念化を少しすると見えてくるかもしれないと思います。
作野
ありがとうございます。
池内
それでは、時間が参りましたので、本日はここまで終わりにさせていただきたいと思います。
発表者の方々にもう一度拍手をお願いします。(拍手)
次回は今年度最後のワークショップが2月24日(土)にございます。
今日は急遽、会場が変更されてしまいましたけれども、次回の会場は、この建物5階のディスカッションルームで行われますので、ぜひ皆さんご参加ください。
今日はどうもありがとうございました。
とくに発表者の皆さん、どうもありがとうございました。
― 了 ―
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