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::: 発表U(汐ア順子氏) :::
池内(司会)
それでは、「図書館情報学研究とフォーカス・グループ・インタビュー――「読書」をテーマとしたケーススタディから」ということで、汐崎順子さんにご発表をお願いします。
よろしくお願いいたします。
汐ア(指定討論者)
よろしくお願いいたします。
いつもは事務方でいるのですが、今日はこちらのほうに座らせていただいております。(以下、パワーポイント使用)
私は長谷川さんのフォーカス・グループ・インタビューよりも、かなり稚拙な赤ちゃん状態なんですが、去年と今年、「読書」をテーマとした研究をやって、その中でフォーカス・グループ・インタビューを使いました。実は今も継続してやっているんですが、どういう形で使ったか、フォーカス・グループ・インタビューの位置づけをどうしたかということを少しお話ししていきたいと思います。
早口でさらに申しわけないんですけれど、20分という限られた時間の中で、重なるところもかなり多いと思いますので、多少割愛させていただきながら話を進めていこうと思っております。
「定義」。これは重なりますので、確認は,後でレジュメを見てくださればと思います。
フォントも小さくて申し訳ありません。
「FGI」と長谷川さんもおっしゃっていましたけれども、まずここでお見せするのは「フォーカス・グループ・インタビュー」の定義です。
いろいろなところから拾ってきました。先ほども詳しいお話がありましたので、ここではあえてもう一度詳しくは触れませんが、特定のトピックであるとか、グループであるとかグループ・ダイナミクスであるとか、三つほど引用させていただいています。
「FGIの特徴」。
これをもう少し細かく区切って見ると、「フォーカス」というのは特定のテーマですね。
そして次の「グループ」とは、同一テーマに興味を持つグループのことです。
人数の話はいろいろあったんですが、大体6名から12名となっています。
それからここでの「インタビュー」は、形式ばらないリラックスしたカジュアルな雰囲気の中での自由な集団討議のことです。
さらにプラスの要素としての司会者、実はこれがかなり重要だと言われているんですが、ここに入るわけです。
Hessが1968年にFGIの利点として@からDまで挙げています。
これはその実用性についてなどですが、具体的には、また後でお話をしていきたいと思います。
また、この利点については長谷川さんのところでも記述があったかと思います。
「FGIの目的と利用」。
FGIは質的な調査になります。
人間の行動の質的な理解、つまり何をどういうふうに感じて行動したのかということを、日常的なコンテクストの中で考えていくわけです。
そして定量的な調査では得られない要素を発見する。
このFGIは探索的研究に適する、そして調査研究の最初の段階での利用のために、それから発見された結果を解釈するためにもよいという言われ方がVaughnによってなされています。
私はやはりFGI(フォーカス・グループ・インタビュー)は単独で、というよりも、量的調査と組み合わせていくのが効果的ではないかと思っています。
「FGIと研究分野」。私がお話するのは図書館情報学の話になりますが、これから渡辺さんのお話もあるでしょうが、マーケティング・ビジネスであるとかコミュニケーション研究、人口学、医療などいろいろなところで、研究手法としてFGI(フォーカス・グループ・インタビュー)が有効な手段として注目されているわけです。
それは、生の声を聞いて、それをこれからの発展に生かしていくということだと思います。
「FGIと図書館情報学」。これは図書館情報学におけるFGIとは何かということですね。やはりいろいろな研究テーマがありますので、(FGIを)どの研究テーマに使えばいいのかを考えることになります。先ほど「探索的な課題に効果的」という話もしましたが、こういう特徴も考えていくわけです。
今回の研究会は「エビデンス」というテーマですから、この質的な調査の科学的な証拠というものをどこで求めるのか。
妥当性とか信頼性とか客観性、代表性、偏りをどういうふうに考えていくかということです。
FGIの採用手法ですが、これは先ほども言いましたが、組み合わせで考えるのか、単独で考えるのかなどが必要だと思います。
またこの質的調査の結果を量的データとして捉える。
例えば定性データを定量データに何かの形で変換していくということも考えて、図書館情報学の手法として考えていく必要があるのかなと。
さて、ここまでが実は前段の話です。
次の「「子ども時代の読書」の研究とFGI」が、実際に私がした研究です。
研究の目的ですが、私は児童サービス関係(の研究)をしていますので、子ども時代の読書について考えてみたいなと。
つまり(読書が)いつからどうやって始まったのか、それから子ども時代の読書に対する学校図書館と公立図書館の存在や影響がどういうところにあったのかを知りたいな、というのが最初の発想です。
先ほど長谷川さんの話の中で「子どもに聞く」というものがありましたけど、子ども(を対象とした研究)は、結構適当に答えていたり、標本の難しさがあったりなどいろいろと問題があります。
今回は「体験としての振り返りの読書」です。ですから対象は大人です。
そして質的(調査)と量的(調査)を両方くっつけてみようということで、質問紙調査との組み合わせで考えました。
「「子ども時代の読書」の研究06〜07」。
今年も継続してやっています。
2006年は2回フォーカス・グループ・インタビューをやって、その間に挟む形で質問紙調査をやりました。
一部分を昨年の三田図書館・情報学会で発表もしたんですが、質問書調査も実は(学会終了後の)秋学期もやっていまして、この残りがあったのでその入力をした。
またFGIはもう2グループを今年(2007年)の7月にやりました。
「PartT:調査対象と実施状況」。
2007年のほうはまだほとんど分析をしていないのでまず2006年についての話をしたいと思います。
これは繰り返しになりますが、大人を対象とした「読書経験の振り返り」の調査です。
まず質問紙調査です。
これは量的調査ですが、私があちこちの大学で非常勤講師をしていることもあって、そこを中心に6大学の学部生から回収しました。
基本的には「読書と豊かな人間性」と「児童サービス論」の履修者1年生から4年生です。
あとは知り合いの先生にお願いして、全体で500程度集まりました。
次にFGIですが、これも「振り返り」ですので、(読書が)好きだったとか、図書館を利用した人でないとまずいだろう、ということで参加者を選びました。
これは実はかなり偏った標本になりました。
具体的には、「子ども時代に本が好きで、図書館の利用者だった」という大学卒約2年程度の男女各5人、2グループになりました。実際、慶應で私が教えた学生さんを集めました。
最初は女性、男性を分けるつもりはなかったんですが、こうなりました。
「PartT:研究の流れとFGI」。
これが2006年の研究の全体の流れです。
まず、量的調査の前に質的な把握と調査項目を設定するために事前準備・質的調査をやろう、という設定でFGIの1回目をしました。
これは女性グループ対象のものですね。
それから質問紙調査を実施し,その後に男性グループに対してFGIの2回目をやりました。
得られた結果の補足と確認であるとか、新たな視点の発見、新たな課題・視点の検証、結果の総合的な確認と検証を行って、「子ども時代の読書」とは何かということをこの三つの流れから考えていこうとしたわけです。
さて、最初の女性に対して行った「FGI1の位置付け」ですけれど、これは読書に対する質的な把握をするというものです。
(質問紙調査の)調査項目の設定、どういう項目を質問紙調査に入れるのがいいだろうかということで、仮説を立てたり予備知識を集めたり、研究を次の段階に進めるための第一歩として使おうと。
「FGI2(+1)の位置付け」。
FGIの2回目は、質問紙調査の後にやりましたが、FGI1、質問紙調査と実施した後に、いろいろ出てきた結果をどう解釈するかとか、どう展開させるかという形で総合的に考えるための要素として2を位置づけたわけです。
1も当然使いましたけれど。
「FGIの計画・実施・分析」。これは長谷川さんのお話の中でもありましたが、一応やはり計画としては立てるわけですね。
つまり、実施する計画を設計し、準備し、実施し、分析するところまでになります。
インタビューガイドを作成し、参加者の選定をします。
あと物理的な話も当然あります。
場所とか機材、スタッフ・・・というのは記録者を確保したりなど、そういうことも考えます。
それから長谷川さんが細かくおっしゃいましたけれども、インタビューの進行をどうするかも考えるわけです。
最後の分析のところがなかなか難しいんです。
つまり記録を作り、要素を抽出してカテゴライズして分析する。
本当は観察記録も作成しなければなりませんし、私はビデオも撮ったんですけれども、長谷川さんと同様、実際に使ったのは逐語記録だけでした。
FGIの「目的・参加者の選定」ですけれども、先ほども言いましたが、私は子ども時代に読書を好きになったきっかけを知りたい、もっと好きになってもっと読みたいと思う強化の要素について知りたい、どういうものをどういうふうに読んでいたかという具体例を知りたい、学校図書館あるいは公共図書館のことを知りたい。
そういう目的なので、やはり本が好きで(図書館の)利用者だった者を意図的に選びました。
「当日のシナリオ」は、本当はもう少し細かい流れなんですけれど、当日は大体2時間。まずインタビュー全体の流れの説明をして、その後自己紹介、それから読書のきっかけについて影響を与えたさまざまな要素の詳細について、それぞれ聞いてまとめて補足をする、という形でシナリオも立てました。
当然これどおりにはいきませんでしたけれど、逸脱しないようにしなくてはならない。
私が司会をしましたが、こういう形で流れを立てました。
次に「FGIがもたらす効果(Hess)」です。
先ほどのスライドにもあったんですが、相乗効果性、雪だるま性、刺激性、安心感、自発性というものを挙げています。
細かい説明はそれぞれの後ろに書いてあるようなことですが、実際に会話の中でどういうふうなものが見られたかをご紹介します。
「FGIがもたらす効果:会話例」。
少し細かくて申しわけないのですが、これは男性グループの例です。
フォーカス・グループがやっている中で話題がかなり広がっていくんです。
『ズッコケ三人組』という子どもたちが好きな本があるんですけれども、それを読んだという(Aの)話があって、それでBが「きっかけはなあに?」と尋ねるんです。
実はそのきっかけを聞いたのにAは「学級文庫だった」と答えた。
それで「ああ、みんな読んでいるよね」というふうに話がいろいろ進んでいくんです。
さらに司会者の私が「学級文庫」というテーマに注目して口を挟みました。
そうするとAは「自分が運動できなかった子だったんです」とまたちょっと違うところに行くんですけれど、それに対してDが同調するんですね。「一緒一緒、それ全く一緒、その分、本を読んでいた」と。
ここでは、実は本を読むということについて、Dがもう一回言っていますけれども「見返す方法が知識以外にない」とか、「本をたくさん読めることがカッコよかった」と。
そうしたら、他の参加者も、自分たちも実はあまり考えていなかったんだけど、「運動できるのとカッコよさを別にしたんだよね」みたいな展開になったんです。
このカテゴライズが正しいかどうかわからないんですけれども、一つのこの『ズッコケ』というところからいろいろなところに話が展開していく。
これがあまり広がりすぎるとまた戻すのが大変なんですけれども、こういうことがありました。
それから次は実際の「会話の抽出とカテゴリー化」。
例えば「読書のきっかけと環境」について、家庭の様子とか好きだった本とか本の読み方、読書環境、こういうものをカテゴリーとして考えて会話の中から抽出するわけです。
「会話例:きっかけ」。これは女性のグループの例です。
ここでご紹介しているのは、先ほどのように一連の会話ではありません。女性5人のそれぞれの会話から、読書への「きっかけ」、「時期」、「何が」というところを拾い、各会話の中で別々に出てきたものを集めました。
aのインタビュイーの方だけは「中学生の時で、司書の先生(の影響)」と言っていますが、他は「小さいころの体験」とか「父が帰ってきてからしてくれた読み聞かせ」などの発言でした。
例えばcは「6歳か7歳のとき、母が読んでくれた」、dは、「母の影響、赤ちゃんのときから絵本とかお話を読んで聞かせてもらった」、最後のeは、「小さい頃の母の読み聞かせ」というような発言が出ています。
こういうものを一つのカテゴリーでまとめていったわけです。
「FGIと質問紙調査項目の設定」。
次にフォーカス・グループ・インタビューの内容を質問紙調査の項目の設定に使うという形で、実際にどういうことをやったのかの一部をご紹介します。
最初は質問紙調査の項目に入れる予定は全然なかったけれど、読書を好きになる新しい要素、ネガティブな要素の発見を質問紙調査に反映したという形です。
フォーカス・グループ・インタビューで発見した要素を質問紙調査に入れようということになりました。
「会話と項目設定の例」。
これは女性の会話の中にあったものです。
実は今年のインタビューにも、さっきの男性グループの会話の中にもあったんですが、「私は絵本とかお話をすごく好きになったのは、運動神経が悪くて外で遊ぶのが好きじゃなかった」という発言があった。
それに対して、「スポーツタイプと読書タイプっていうのがあるのかな」とか、「運動嫌いだった、あるいは友達とつき合っているのが嫌いだった。
一人でいるのが好きだった」という話題の広がりがあった。
これを質問紙項目へ反映させました。
つまり設問に、「本を読むのがどうして好きだったと思いますか?」というものがあったのですが、その(回答の選択肢の)中に「一人でいることが好きだったから」、「体を動かすことや運動が苦手だったから」という項目も入れ込んでみたわけです。
「FGI1・2と質問紙調査:総合的な検証」。
質問紙調査ではいろいろな結果が出たわけですけれども、今度はその結果をフォーカス・グループ・インタビュー1、2と併せて検証した例をご紹介します。
実は本が好きになった「時期」と「好み」について、質問紙調査では実は男女差がありました。これをフォーカス・グループ・インタビューの会話から考えるということです。
この「質問紙調査:好きになった時期@(全体)」が、質問紙調査の結果です。
「いつ本を好きになりましたか?」という問いに対して、質問紙調査では必ずしも子ども時代に本が好きだった人とは限らないので、「子ども時代に読書が好きだった」者が343名いました。
その回答の中で、男女合わせると約半数の49.3%が就学前から好きだった、と答えるんですが、これを男女で分けてみるとこれだけ差が出ました。
「質問紙調査:好きになった時期A(男女別)」。
実は男性の標本数が少ないのも問題はあるんですけれども、男性は小学校時代に好きになったという人のほうが多くて、女性は就学前が好きになったきっかけだと答えている(捕捉:男女別だと、男性は就学前から好きだったのが36.2%、女性は55.%)。
こうして分けてみると男女差が出た。
それじゃあ「読書が好き」という認識の男女差があるのかという疑問が出てきました。
「質問紙調査:読書の好み」。
これは質問紙調査の「どういうものが好きでしたか?」という問いへの答えです。
男性のほうがパーセンテージは少ないですけれども、やはり(表の)左から2番目の「物語」の好みは男女ともにトップです。
それから一番左の絵本に関しては女性の好みが多いんです。
それからそれほど差がありませんけれども、知識とか雑誌とか漫画に関しては男性の好みのパーセンテージが高いという結果になりました。
「FGI:好きになった時期と好み」。
それじゃあ「好きになった時期と好み」の男女差というものは一体どうなんだろう、本当にこれは根拠があるのかというのをフォーカス・グループ・インタビューで確かめてみようということになるわけです。
会話の傾向は全てがこうではなかったんですけれど、おおむねこういう傾向が多かったです。
つまり女性は、就学前からの記憶を語るんですね。
「いつ好きになりましたか、何が好きでしたか、どういうふうに(読書を)しましたか、どういうふうな環境でしたか」という質問に対して、就学前から、あるいは絵本や物語の記憶、読み聞かせの体験を女性は語るんです。
これはさっきも出てきた会話ですけれども、dの会話が右に赤の吹き出しで載っています(捕捉「母の影響で、赤ちゃんの時から毎晩絵本とかお話とかを読んで聞かせてもらってて・・・」)。
これに対して男性は、どちらかというと小学校以降の読書体験あるいは物語や知識、伝記(の読書経験)とか語るんです。
ゲームの話もしていましたけれど、読んでもらったというか、自発的な読書の体験を語る傾向が多かったんですね。
「FGI:幼児期の読書体験」。
真ん中に雪だるま(の絵)がありますけれども、「雪だるま式」というイメージで載せてみました。
FGIの最初の段階では、今お話したように、質問紙調査と同じような傾向が見られたんですけれども、実はFGIが進んでいく中で、男性の会話の中にも幼児期の体験と絵本の記憶が見られるんですね。
まず1のインタビュイーが「幼稚園だと思うんですけど、実は絵本は記憶がある」と言い始めた。これは皆さんご存じの本ですけど、「ぐりとぐらのオムレツが美味そう」という話をしたときに、今度は2が、この『オムレツ』という言葉に反応して「パンケーキじゃないの?」と言うんです。これは本当はオムレツでもパンケーキでもなくてカステラなんですけれども。(笑)
そう言ったら今度は3が、「でかい卵を車にしちゃうみたいな」と発言する。
これは全て『ぐりとぐら』の話で、みんな読んでいるんですね。
それも親に読んでもらった。その幼児期の体験が1人の発言をもとに出てきた。
実は彼らにも(絵本を読んでもらった)経験はあるんですけれども、「最初に本が好きになった時期はいつ?」とか、「何を読んでいましたか?」と聞かれた時にはこの発言は出てこなかった。
だから、これはもしかしたら「読書が好きになる、本が好きになる」という形でこちらが質問紙調査あるいはFGIで最初に投げかけたときに、「本が好きになる」という状態の認識に対して男女差があるのかもしれないと思ったわけです。
つまり「読んでもらう読書」と「自分で読む読書」ですね。
ここのところはまだ実はその先の詳細をきちんと検証はしていないんですけれど、FGIと質問紙調査をあわせたところで見えてきたという例です。
「「子ども時代の読書」の研究06〜07」。
質問紙調査は、先ほどご説明したように、実は2006年の春学期と秋学期にやりました。
発表をした三田の研究大会が終わった後も、それをぐずぐず持っていたので、これはもったいないというのでその入力。
それから後でも言いますけれど、今年もう少しFGIをやってみようということで2007年の夏にこちらも実施しました。
「PartUの企画と実施の目的」。
なぜ続けてやったのか。先ほども言いましたが、質問紙調査は残りが400件近くありました。
(せっかくやったんだから)少し標本数を拡大してみようというのが一つ、それから最初のものはどうしても司書・司書教諭の授業のアンケートが多かったんです。
つまり自然とポジティブな、読書に興味を持つ子が多いだろうということだったんですが、後期はそうでない授業(司書,司書教諭の授業ではない)のものもとっていただいたので、併せてみることで少し一般性を見たいと思いました。
あと(2006年は)調査の結果をいろいろな項目で見てはいるんですけれども、分析し切れないところもあった。
だから新しい視点をもう少し分析してみようというのもありました。
それからFGIは2006年の実施が、実は男性グループ、女性グループ両方かなりマニアックな集団だったんですね。
それはそれでおもしろかったんですけれども、本当に読書好きの人たちが集まってしまった。
特に男性のほうは右に左に話が行って、いつのまにかゲームの話ばかりしていたりなど、個性が豊か過ぎたので、もう少し一般的なグループの会話を聞いてみたいということでやってみました。
それから2006年は、グループがたまたま男女別々になってしまったというのも理由の一つです。
じゃあ、グループ化で男女ミックスにしたらどういう会話が出てくるだろうという疑問も出てきたわけです。
それから私がまだFGIに関しては未熟なところもありますので、もう少しきちんと分析してみようと。
全部で4グループの結果が出るわけですから、そこからもう少し幅広く見てみようという視点ですね。
「FGI3・4の対象と実施状況」。
FGIは今年の7月の下旬に2回やりました。
この参加者は、私が教えた「読書と豊かな人間性」の受講生のうちの13人です。
3・4とありますけれども、3が今年の1回目で4が今年の2回目です。
どうしても男性が少なくなってしまうんですが(男性は各グループに2人ずつ)、こちらはミックスでやりました。
実際は1年生から4年生までで、慶應の学生ではないのですが、「子ども時代に本が好きだった」と、「学校図書館・公立図書館の利用者」の限定は今回はしませんでした。
でもやはり受講している科目から、読書に対して一定以上の興味を持っていると推測できる学生さんです。
「FGI風景@」。
この写真が最初(今年の第1回目の)のFGIの風景です。
長谷川さんのものより、かなりくだけた感じですね。
(机の)かぎのところ(注:四角く並べたコーナーを中心に、ということ)に座っていただきました。
この中では、男性が左の男の子と真ん中にいます。
ハーレム状態になっていますけれども、わりと楽しそうに発言してくれました。
「FGI風景A」。
これが2番目です。
こちらは7人ですけれども、やはり男性は2人。
左の一番右のちょっと髪の毛が長いのが男の子で、あとは右上のピンクの女の子と水色の女の子に挟まれているのが4年生の男の子です。
やはり男性は少ないです。
が、飲みながら食べながら楽しげに語ってくれています。
「FGI3・4を実施して――雑感」。
私はあまりまとまった話ができなくて申しわけないんですけれども、やっぱりサンプリングが難しいと思いました。
今年フォーカス・グループ・インタビューの3・4をやったら、やはり「かなりの読書好き」が結果としては集まって、男性が少なかった。男性も果敢に発言はしてくれたんですけれども。
それから研究のゴールですが、これはやはり「一般化」や「共通する要素」を見出すというよりも「様々なパターン」を見つけるということだと思います。
読書は、例えば兄弟でいてもお兄さんは読書が嫌いで弟は好きというのもありますし、「様々なパターン」と因果関係があるものが何か、などをもう少しきちんと考えなければいけない。
私はフォーカス・グループ・インタビューを今回「読書」をテーマとした研究に使いましたけれども、これは内的な経験とか記憶の情報を求める調査研究ですので、非常におもしろいデータが集まりました。
(人の話に)触発される、思い出すというプロセスに効果があったなと思いました。
ただ、データの評価と位置づけについては、たくさんのいろいろなデータが出ましたので、発見は多いんですけれども、それを研究としてはどう評価し、位置づけるのかが大切だと思うんです。
つまりエビデンスをどう考えるのかという意識、研究の明確な目的を持つこと、洗練された分析の必要性があると考えています。
「FGIの司会者の役割」。
もう一つこれは自己反省ですけれども、私がおしゃべりなのと、自分が(テーマに)興味があるもので、どうしても割り込んでしまうんですね。
一番下にありますがこれは私が出した結論です。
司会者は「主観的に喋ってはいけないが(発言者ではない)、客観的に話さなくてはならない」んです。
つまり客観的に道筋をつけて話さなければならない。
司会はモデレータであるということで、適切な導入、雰囲気作りをして、スムーズな進行への道案内にならなくてはならない。
先ほども長谷川さんが進行の話をされましたけれども、適切な技術を身につける必要があるなと痛感しました。
この「FGIの効果と課題」が最後になりますけれども、フォーカス・グループ・インタビューは図書館情報学の研究において考えたときに、量的調査と組み合わせることでより効果的な研究手段となり得るだろうというのが結論です。
その科学的根拠となる妥当性と信頼性を得るためには、以下の要件をやはり十分に考慮する必要がある。
私もこの研究は、見切り発車でやってしまっていますので、ここのところがこれからの課題です。
デザイン−どういう研究の中で位置づけていくか。
それからサンプリング、−どういう標本を選ぶか。
やはり特定のグループを選ばなければならないと思いますけれども、どう選んでいくか。それから調査・分析です。
つまり十分な情報収集と適切な分析、司会者の役割の確認、それから分析方法です。
私は今回使いませんでしたし、どう使っていいのか全然わからないんですけれども、非言語的な情報、つまりその人の声のトーンであるとか、身振りというものもFGIでは重要な要素だと言われています。
だからそういうものも検討していく。
あるいは分析ソフトというのも、長谷川さんの話にもありましたけれども、そういうものもどういうふうに使っていくのかを考えなければいけないかなというのが、まだこれから続きますが、私がFGIを「読書」をテーマとした研究の中で使って感じたことです。
以上少しオーバーしまして申しわけないです。
(最後の画面は)参考文献になります。
池内
どうもありがとうございました。
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