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エビデンスベーストアプローチによる図書館情報学研究の確立
第6回ワークショップ
「調査手法としてのフォーカス・グループ・インタビューの理論と実際」

議事録

開会の辞 | 発表T(長谷川:前半) | 発表T(長谷川:後半) | 発表U(汐ア) | 発表V(渡辺) | 質疑応答

::: 開会の辞 :::

池内司会
 どうもありがとうございました。
 大変申しわけないですがお時間が来てしまったんですけれども、実際の事例をまじえながら興味深いご発表をいただけたかと思います。
 お1人かお2人ご質問がありましたらお受けして、皆さんに満足して帰っていただければと思います。(笑)
 どなたかいらっしゃいますでしょうか。

三輪メディア教育開発センター
 メディア教育開発センターの三輪です。
 サンプリングのところで、皆さんそれぞれいろいろ大変だということをおっしゃっていましたけれども、私はフォーカス・グループ・インタビューというのは、なるべく均質の人たちを一つのグループとして集めるのがいいというふうに理解していました。
 例えば長谷川さんのサンプルだと、6人の中の1名が女性だったというケースがあったし、それからあと汐アさんの場合は、女性だけのグループと男性だけのグループと、両方まざったグループをなさったというようなお話がありました。
 特に私は男女に注目して今ご質問させていただきますが、男女差というか、男女をグループにまぜるということにどういう影響が生じるのか、それぞれの立場から簡単に話していただけるとありがたいです。

長谷川
 長谷川の立場からいうと、図書館の方は女性のほうが元気ですから、男女関係ないと思います。
 女性がたまたま少なかったのは、私の交際範囲に男性が多かったというだけのお話です。
 それと本当の話でいうと、たまたま女性が少なかったというのは、知識が多い人に男性が多かったということです。
 女性の場合、知らない人がやっぱり(多い)。
 それは課長が多いとか少ないとか、重要な責任ポストに行けない、持たされないというふうなところが反映しているんだと私は思っています。

三輪
 ということは、インタビューの中で観点が違ったりとか出てくる意見が違ったりといったことはなかった。

長谷川
 ないです。
 本人たちにも確認しました。
 関係ないと言っていました。

汐ア
 私は、最初は女性、男性分かれて、今度はミックスという形にしたんですけれど、本当は今回は混ぜたかったんですね。
 たまたま去年は、最初あまり男女のことを考えずに、「読書好き」という集団で集めたら女性だけになってしまいました。
 私(の場合)はかなりの知り合いというか、お互いが知り合いのインタビュイーだったんですけれども、そんなこんなで女性が集まってしまったんですね。
 それで、じゃあ次のグループのセッティングをするときに、女性のグループには聞いたから、今度は男性でやろうというのが2006年の実際なんです。
 今年は、同性であることによって話が進展したこともあったのかなと思って、混ぜたのですが、わりと読書に対する発言の様子に関しては男女差がないなと。
 もちろんさっきの男女差の、意識の差というのはあるんし、実際の発言に関しては、女性は元気ではあるんですが、男性も今度は少なかったのに果敢に発言してくれました。
 男性の意見に対して女性がひるむとか、その逆もなかったです。
 ただ、やっぱり男女混ぜた方が、お互い知らないというか、(男女の)観点が多少違うところも実は多少あった。
 ですから、やっぱり物の取り組み方とか、評価の仕方というのは男女差があったのかなと思います。
 ただ、先ほども行ったように、発言の出方は両方とも(男女とも)活発には出ていました。
 私は結果として「女性だけのグループで聞いた」、「男性だけのグループで聞いた」、「男女両方がいるグループで聞いた」というのは4パターンやりましたので、これを材料にこれからいろいろ考えていきたいなと思っています。

三輪
 ありがとうございました。

上田慶應義塾大学
 慶應大学の上田です。フォーカス・グループ・インタビューの場合は、ともかく対面でグループ・ダイナミックスというものの働きがあるということですけれども、その発言以外のいろいろなしぐさなどについて伺いたいのですが、長谷川さんの場合はそれを分析対象としていないということでよろしいんですか。
 それから汐アさんの場合も。

長谷川
 していないというよりできなかった。
 あとは若干気にしたのは、その人に対してうなずいている、うなずいていないというぐらいは見ました。

上田
 汐アさんの場合は特にそれはやっていないということですか。

汐ア
 やはり、録音、録画両方のアプローチをしなければならないと定石で書かれていますし、録画のほうはきちんとやりましたけれども、実際には(録音以外は)使っていません。
 ただ、今年やったときに、学生さんだったのでかなりカジュアルな会話があったんですけれど、非常に大きなアクションがあったり、驚きとか同調のため息みたいなものがありました。
 これは音声記録の中で「うなずき」みたいな形で記録者が書き起こしてくれている部分もあるのですが、言葉では出ない同意のしぐさというものも本当は入れていかなくてはいけないのだろうなと思います。ただ、やってはいません。

上田
 それで渡辺さんにお伺いしたいのですが、先ほどグループ・インタビューの特別な施設があって、例えば素通しの()がある部屋でやっているところで関係者が見ているのは、そういうものを見ることが目的と考えていいんですか。

渡辺
 そうですね。
 基本的にはその場の雰囲気とか対象者の動きとか表情を見るために関係者が見る。発言録というものの限界というのがあります。
 うなずくとか全員が笑うというのが、コメントとして書いてあっても、実際に後の分析者が実感できないので、ミラールームみたいなものを使うようにはしています。

上田
 もう一点ですが、さっきインターネットを使ったモニターで選び出すという話がありましたけれども、これは1カ所に集めるのではなくて、つまりチャットだとかテレビ会話だとか、そういうような形で遠隔地の人たちを集めてやるというような試みなりはなさったことはあるんでしょうか。

渡辺
 企業でやっているところも何社かあります。
ただし、まだまだ普及していないというのがありまして、例えばチャットのケースは一時期、流行りそうになったんですけど、今はほとんどなくなってしまいました。
 インターネットモニター自体、当初は、企業としてなかなか受け入れられなかったものです。
 その理由というのは、パソコンを使ったり、インターネットをする人は特殊な層ではないかというのがありました。
 実際、今もそういうところはあって、例えば、高校生は携帯のメールはやるけどパソコンのメールはあまりやらないよというように、ある種パソコンをやる人は限られています。
 その上で、さらにチャットができるだけのスピードでキーボードを打てる人というと、どうしても層が限られてしまうのです。そういう意味でネット上のグループ・インタビューというのも、現状やっている会社はあるんですけれども、実はなかなか普及していない。
 それともう一つは、先ほどの話にもありましたけれども、カメラの前に映る姿では、実感がなかなかできにくいということ、あと対象者自体が遠隔地にいると両者の刺激というのがなかなか受けにくいというのがあります。
 要はグループ・インタビューのうまみを出し切れるようなハード面が、今はまだないということがあるかと思います。

上田
 わかりました。ありがとうございます。

池内
 どうもありがとうございます。
 それでは、これをもちまして本日のワークショップを終わりにさせていただきたいと思います。最後に発表者の皆様方に拍手をお願いいたします。(拍手
 2週間後の10月14日に日本図書館情報学会研究大会で、「図書館情報学におけるエビデンスベーストアプローチ」ということでシンポジウムがございますので、そちらも皆様ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。
 それでは本日は皆さん、お忙しいところどうもありがとうございました。

― 了 ―

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