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公開シンポジウム記録
変わりゆく図書館情報学専門職の資格認定
--専門団体はどう取り組んでいるか--

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U-3.パネリストによる発表(森田盛行氏)

根本
 次に学校図書館の話に移ります。
 全国学校図書館協議会の森田盛行さんからお話をいただきたいと思います。
 全国SLAで選定・企画部長のお仕事をされています。
 よろしくお願いいたします。

森田
 全国学校図書館協議会の選定・企画部長の森田と申します。
 私はパワーポイントを用意しておりません。お手元の資料に簡単なレジュメとして、見出しだけ書いています。
 そこに要点等々をお書きいただければ幸いに存じます。
 20分ということですので、ちょっと早口になるかもしれませんが、よろしくお願いします。
 まず、全国学校図書館協議会、略称を全国SLAと申します。先ほどの山本先生のご発表でもSLAという言葉を使われていました。
 私どもも、School Library AssociationでSLAという名前になっています。
 ちょっとごっちゃになるかしれませんが、よろしくお願いします。
 まず、全国SLAの簡単な概略をご説明申し上げます。
 1950年に結成されました。
 民間の研究団体、任意団体として発足しまして、今から5年前に、文部科学省、当時の文部省から社団法人になることを強くお勧めいただきましたので、社団法人になりました。
 事業内容としては、研究団体ですので、研究、研修がメインになっているかと思います。
 社団法人になりましたが、どこからも補助金等々はいただいていません。
 自分たちで稼ぎ出していくということになっています。
 同時に、研究成果を発表する出版事業をしています。
 雑誌形式の『機関誌学校図書館』を月刊で、『学校図書館速報版』という新聞形式の機関紙を月2回、発行しています。
 それから、単行本等々を発行しています。
 日図協さんも実施していらっしゃいますが、図書の選定事業も行っています。
 学校図書館向きの図書の選定についても様々な事業を行っています。
 さらに、学校図書館賞等々の各種の顕彰活動も行っています。
 全国SLAの会員ですが、前身である任意団体としての全国SLAの形をそのまま引き継ぎまして、正会員として、都道府県学校図書館協議会(県SLA)が60組織あります。
 47都道府県なのにどうして60なのかと、不思議に思われるかもしれませんが、一つの県に小中の義務制のSLAと、高等学校のSLAと、二つのところがあります。
 それから、政令指定都市で分かれているところがあります。
 例えば神奈川県SLAと横浜市SLAというような具合です。
 これらを全部足しますと、60組織になっています。
 あと、個人会員もいらっしゃいますが、数が少なくて、実質的には県SLA60組織によって、全国SLAが支えられているということになっています。
 県SLAには各学校が加入していますので、全国の小・中・高等学校が、間接的ですが会員になっているという組織になっています。
 本当に概略ですが、詳しくはホームページをごらんいただければと思います。
 今日のテーマは資格認定制度ということになっているのですが、全国SLAとしては、まだ具体的には検討していません。
 ですから、その前段階のお話になるかと思います。
 それをご承知いただき、お聞きくださればと思います。
 このレジュメに沿ってお話ししていきますが、まず、「学校図書館をめぐる状況の変化」お話しします。
 学校図書館にはこれまで北風がピューピューと吹いていたところに、今ようやく薄日が差してきたのではないかという状況になっています。
 例えば新学習指導要領におきましても、学校図書館の任務や役割がかなりはっきりと書かれています。
 それから、総合的な学習が始まりました。
 学校図書館の機能を十分に使わなければ、総合的な学習は十分に成果を発揮できません。
 全国SLAは総合的な学習が本格的に実践される前から図書館の重要性を主張してきました。
 総合的な学習が始まってみると、全国の先生方から「やはり学校図書館がなければできない」という声が大変強くなってきています。
 総合的な学習は、体験、経験重視の学習方法なのですが、そこにきちんとした情報がなければうまく活動できないということがわかってきた、実証されてきたということだと思っています。
 それから、生涯学習という縦の時間の流れを見た場合にも、学校教育の中で生涯学習を見通した形での教育活動が必要なのですが、その中でも学校図書館が大変重要になっているということも言われてきています。
 また、情報格差というものがだんだん大きくなっているのではないかというおそれも抱いています。
 学校には児童・生徒が通ってきますので、そこで情報格差を何とか食い止めていかなければならない。
 必ず学校に通ってくる児童・生徒に情報活用能力を身につけさせる。
 これは私どもとしては学校図書館の非常に大きな役割だと思っています。
 簡単に申し上げましたが、以上が学校図書館をめぐる状況です。
 それでは、その学校図書館を支える担当者の現状はどうなっているかということ申しあげます。
 根本先生からも資料を用意していただきましたが、新しい数字を申し上げたいと思います。
 文部科学省の調査によると、司書教諭の有資格者は現在、5万4166人いるそうです。
 その中で実際に発令されている司書教諭は何人いるかについて、全国SLAは毎年、県教育委員会を通じて調査をしています。
 2003年度も5月1日現在の司書教諭の人数未回答の県・政令指定都市を除く現在の数でいいますと、約2万2000人です。これは教育委員会の回答した数ですので、多分、確かではないかと思っています。
 それから、11学級以下の発令者はどのくらいいるかといいますと、これは文部科学省では調査していないようです。
 昨年度の調査ですが、各自治体に悉皆調査を行いました。
 全市町村の教育委員会にアンケート用紙を郵送しまして、かなり詳しいことを聞いています。
 残念ながら、その返事は約半分しか返ってきていないのですが、その数字によりますと、11学級以下の被発令者が1317人。
 約6%が11学級以下にも発令されているという結果になっています。
 約半分の回収率ですので、実数はもっと増えるのではないかと思っています。
 それから、学校司書の数も、悉皆調査で聞きましたところ、約9800人いるという結果になっています。
 ただし、これも約半数の回収率の結果ですので、実際には小・中・高を合わせて1万人は超えているのではないかと思われます。
 続きまして「3.学校図書館担当者養成の問題点」ですが、ここはちょっと詳しく触れたいと思います。
 ご存じのように、司書教諭は、今までの7科目8単位から、5科目10単位と、2単位だけ増えました。
 しかし、この会場にも司書教諭の養成を担当されている先生方が多いかと思いますが、これではとても足りないのではないかと考えます。
 全国SLAでは職員養成の委員会が1980年に既に、司書教諭の養成は11科目24単位以上必要であるということを研究し発表しています。
 1980年ですから、当然、まだインターネットも普及していませんし、学校にコンピュータがどんどん入ってくるということもない時代ですが、それでも11科目24単位です。
 21世紀では、さらに充実した単位数が必要ではないかと思っています。
 それから、司書教諭は講習での養成からやはり大学の科目で養成するということに変えることが必要です。
 これについてはまだ実現はしていないのですが、何とかこういう形に進めていきたい。1980年の委員会の答申を踏まえて、さらに充実した司書教諭の養成科目等を検討し、文部科学省に要求していきたいと思っています。
 さらに、大きな懸案である学校司書の法制化の問題もあります。
 文部科学省が出す文書では法制化されていないということもあり、「学校司書」という言葉は使われていませんが、話し言葉では文部科学省の方も「学校司書」と盛んに言っています。
 そういう面では、実質的な認知はされていると思っています。
 これを何とかきちんとした形で法制化し、養成科目もきちんと整備して、大学で養成するということを考えています。
 学校司書に関しても、大学で養成することを前提にした委員会の答申が出ています。
 例えば教職科目として5科目10単位以上を取ること、それから学校図書館の科目として11科目24単位以上を取ること。
 これが、大学での学校司書養成で最低必要なものではないかということになっています。
 これは1980年という、20年以上も前のことですので、21世紀にふさわしい、現代化したものが必要ではないかということで、検討を始めたいと思っています。
 では、現在、学校図書館担当者の研修にはどういうものがあるかということについて、少し申し上げたいと思います。
 例えば文部科学省では、わずか一つだけやっています。「学校図書館活用フォーラム」ということで、全国を3カ所に分けて、司書教諭を対象に行っています。
 それから、県・市町村では、司書教諭対象の研修会を少しずつ始めています。
 全国SLAの調査では、市町村の22.5%が実施しているということで、現在はもう少し増えていると思います。全国SLAの役員も、県・市の研修会によく招かれて、話をしております。
 しかし、まだまだ大変少ないので、司書教諭を発令したからには、行政がきちんと現職教育をすべきであると要求していきたいと思っていますし、現に要求しています。
 それから、学校司書の研修につきましては、県教育委員会が中心になって、組織的、継続的に行われています。
 全国SLAとしては、司書教諭全国研究集会、学校司書全国研究集会を毎年行っています。
 それぞれ2日間にわたって行っています。それから、夏期セミナー、情報化セミナー、学校図書館セミナー等々を毎年開いているので、数的には研修制度は充実しているのではないかと、自画自賛しています。
 ほかに全国学校図書館研究大会、地区学校図書館研究大会を隔年ごとに行っています。
 さらに、昨年度から、スキルアップ講座を、6年以上学校図書館を担当した司書教諭、学校司書を対象に始めました。
 ただ、このスキルアップ講座は、興味・関心のあるテーマを選んで受講するということですので、組織的、継続的なものではありませんし、もちろん系統的なものでもありません。
 簡単に言えば、てんでんばらばらのことをやっているということです。
 ただ、学校図書館の担当職員、教職員がこれから専門知識をつけていくための養成制度をきちんと整備しなければならないということは、私どもも問題意識として持っていますので、その瀬踏みも兼ねてスキルアップ講座を立ち上げています。
 今までに第10回まで開講しています。土曜日という休みの間に開講していますが、非常に熱心な先生方がたくさん受講しています。
 各県SLAにおきましては、研究大会、研修会、実技研修会、または、県によりましては合宿研修会等々、幅広く行われています。
 ただ、こうした研修制度には課題がたくさんあります。
 まず、全国SLAが行っている研修にしても、まず系統性が弱いということがあります。
 どちらかというと、年度ごとの単発的なものになっている面ががあります。
 それから、受講する担当者である司書教諭、学校司書も、自分の興味・関心のあるところを受けるのであり、やはり専門職として必要な知識・技能を系統的に身につけていくという観点はに薄いのではないかと思っています。
 それから、期間や時間数が圧倒的に少ないということです。
 一番多いのでさえ、3日間です。それは全国大会ですが、いわゆるセッション方式ですので、虫食い状態で自分の好きなところを選んでいくということになっています。
 内容等についても、時間が少ないということもあります。
 専門職として認められていくためには、やはり時間は少ないと思います。
 きちんと系統的な研修制度をつくりたい、設けたいとは思っていますが、それを担当される講師の先生方の不足ということも問題ではないかと思っています。
 今、全国で2万2000人の司書教諭がいるわけですが、ご存じのように、多くの司書教諭は、いわゆる減免措置を受けて、1科目2単位で司書教諭となっています。
 統計的な数字は調べていませんが、かなりの司書教諭は1科目2単位でなっていると思います。
 全国SLAは国や自治体に、きちんとした公的な研修制度をつくるように要求していますが、反応は鈍いようです。
 そこで、全国SLAで、司書教諭の再教育をしなければならない、そういう制度をつくる必要もあるのではないかということで、これから検討を始めたいと思っています。
 まず、この制度は、専門職として確立するためのものであるということです。
 これからの司書教諭は、学校図書館を基盤とし、学校図書館を利用する学習指導がきちんとできるような力量を持つ必要があるのではないか、同時に、同僚の先生たちに対して、指導ができる、リーダーシップをとって、そういう旗振りができる、そういう能力が必要ではないかと思っています。
 これは早急に必要ではないかと思っています。
 司書教諭に求められる能力は、多岐にわたります。特に、図書館情報学の知識・技能に欠けている、非常に不足しているということがあるかと思いますので、これに対処する必要があります。
 多くの司書教諭は、教員免許プラス1科目2単位で司書教諭ということになっているわけですので、圧倒的に図書館情報学の知識に欠けているのではないかと思います。
司書教諭になった先生方にアンケート調査をしました。
 アンケートといいましても、100ぐらいの数なので、一般化はできないと思いますが、今年の8月に行った司書教諭研究集会の参加者にアンケート調査をしました。
 「先生方は自分自身で、どういう知識・技能が不足と思われますか」という問に対する答えは、私どもの考えとちょっとすれ違っていました。
 ITに関する知識・技能に欠けているということは一致したのですが、図書館情報学の知識・技能に欠けていると自覚している先生方はかなり少ないのではないかという感じがしました。
 まだ読書指導の方法がよくわからないという読書指導に偏った答えが多くありました。
 一言で言いますと、以前の読書センターとしての図書館という概念から、まだ脱しきれていない方が多く司書教諭になっているのではないかという感じを受けました。
 ですから、「(3)再教育の方法」としましては、先ほどから申し上げておりますように、継続的、系統的、それから私どもは60組織が連携していますので、組織的な再教育プログラムをつくり、実施していくことが早急に必要ではないかと思っています。
 これからカリキュラムも検討していかなければなりません。
 また、現在は2万2000人ですが、司書教諭は4万校に全部配置するということが当然ですので、4万人の司書教諭の先生に対してどうやって再教育していくか、これはかなり大変なことではないかと思います。
 そのためには、全国SLAが従来行ってきた受講者を100人、200人と集めまして講義するというような形では、とても追いつかないということがあります。
 例えば遠隔教育などの形も取り入れていく必要があるのではないかと思っています。
 そのためには資金も必要になります。
 実際にがどのくらい必要かはわかりませんが、問題意識としてはそういう必要があるのではないかと考えています。
 そこで、今回は資格認定がメインテーマになっていますが、全国SLAとしましても、何らかの形で認定制度を取り入れる必要があるのではないかということで、検討を始めようとしています。
 認定といいましても、司書教諭という資格制度がありますので、さらにそこに屋上屋を重ねるようなことはどうかというような意見もありますが、いよいよ司書教諭が本格的に発令された現在、やはりきちんとしたカリキュラムに基づいた系統的な現職教育をやっていく必要があるのではないかということで、なんらかの認定制度を検討したいと思っています。
 そのために解決しなければならない課題が多々あります。
 まず、司書教諭の任務の明確化から始めなければいけないというのが、学校図書館の現状です。
 やはり任務を明確化して、そこで初めて必要な知識・技能の範囲が明確になるのではないか。
 それによって、どういう科目が必要か、どういうカリキュラムが必要かということが出てくるかと思います。
 それから、現職教育を担当する先生方の確保です。
 近々では2万2000人、近い将来では4万人を養成するためには、先生方をどう確保していくかということが大きな問題ではないかと思っています。
 それから、学校図書館には司書教諭だけではなく、学校司書も絶対に必要であるという共通認識ができていますが、それでも法制化ということがなかなか進まない。
 文部科学省あたりでは、司書教諭のことで頭がいっぱいということがありまして、なかなか学校司書の法制化まで行っていないようです。
 私どもは毎年のように国会陳情、文部科学省に申し入れ等々をしていますが、年数はどんどんたってしまいます。
 いたずらに手をこまねいていては、学校図書館がきちんと機能を果たさないということが明白ですので、何らかの認定制度を設ける必要があるのではないかと考えています。
 ですから、司書教諭の認定制度と同じように、学校司書の認定制度も検討を始めたいと思っています。
 本来、今日は、どういうことをするのかについてお話しする場ですが、残念ながら、全国SLAにおいては、そこまで検討が進んでいません。
 これから委員会を立ち上げて検討していくという段階です。
 そういうこともありまして、今日のシンポジウムは私どもにとっては大変ありがたいシンポジウムであり、ここで情報を仕入れていきたいと思っています。
 非常に雑ぱくで、パワーポイントもない発表でしたので、おわかりにくい点があったかと思いますが、後ほど討議のほうでいろいろなご質問、ご意見等を伺えればありがたいと思います。
 それでは、これで終わりにさせていただきます。
 ありがとうございました。

根本
 ありがとうございました。
 学校図書館に薄日が差しているというお話ですが、学力低下論や読書振興といったいくつかの違った方向からの強い風が吹き始めているような気もします。
 これをうまく学校図書館振興につなげていければよいと思います。