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公開シンポジウム記録
変わりゆく図書館情報学専門職の資格認定
--専門団体はどう取り組んでいるか--

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U-5.パネリストによる発表(笹川郁夫氏)

根本
 それでは、最後のご発表をいただきたいと思います。
 東京大学附属図書館事務部長の笹川郁夫さんからお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。

笹川
 東京大学附属図書館の事務部長をしています笹川と申します。
 国立大学図書館協議会の事務局長も併せてやらせていただいています。
 私のお話は、資料にありますように、国立大学法人化後の大学図書館職員はどうなっていくのかというところが主なお話であろうかと思います。
 国立大学図書館協議会も設立50年を迎えました。
 100大学で組織しているわけですが、統合大学が10大学あるということで、会員数は減っていくのではないかと思っているところです。
 主な機能としては、文部科学省の大学図書館政策と個々の大学図書館の運営との橋渡しを果たしてきたと思っています。
 事業としては、一つは国際学術コミュニケーションという事業を行っています。
 具体的には、グローバルILLフレームワーク(GIF)という枠組みをつくって、国立情報学研究所と一緒に米国とのILLのラインを構築してきました。
 それから、これは電子出版事業ですが、やはり国立情報学研究所と一緒にSPARC/JAPANという事業をやってきています。
 まさにこれから発展していく話になると思います。
 そのほか、電子ジャーナル・タスクフォースという事業をやっています。
 これは、日本国内におけるコンソーシアムで購入できる体制を組んでいこうということで、出版社と直接交渉しています。
 それから、著作権に関することについても、国公私立大学図書館協力委員会と共同してやっています。
 そのほか、研修事業の委員会を立ち上げ、これから取り組んでいくということです。
 国立大学図書館で共通した課題を解決するためのプロジェクトもつくっています。
 ご存じのように、法人化への移行ということが最大の課題で、予算、人事がすべて変わってくるということになっています。
 法人化移行に伴いまして、職員の採用が大きく変わります。
 これまでの人事院2種の国家試験がなくなるということで、国立大学図書館協議会としても、人事制度の設計を行おうとしている国立大学協会(国大協)に対して昨年の7月に要望書を出しました。
 「大学間の人事交流も視野に入れ、図書館・情報学専門職員採用区分を設けるように働きかけ、現行国家公務員試験に準ずる程度の職員の確保に努める」ことを中心とする要望をしたわけですが、結果として、なかなか聞き入れてもらえないような状況になっています。
 国立大学図書館職員は、庶務、会計などの一般職員も入れますと、2000人を超えているわけですが、純然たる図書系職員は約1700名という状況にあります。
 2種の採用試験がなくなるということで、地区ブロックごとに採用試験を行うということになっています。
 ちなみに、以前は北海道・東北となっていたのですが、これを北海道地区、東北地区に分けます。
 それから関東甲信越地区、北陸、東海、近畿地区、中国、四国、九州というブロックを構成して、それぞれが試験をやっていく。
 ただし、共通1次にあたる教養試験は一斉に行うことになりました。
 関東甲信越地区に当たりましては、既に準備が進められていまして、各大学から準備委員会なるものを設立して、今、進めているところです。
 ほかの地区はまだ把握していませんので、関東甲信越地区に限って申し上げますと、法人等の職員採用試験は、希望する複数の国立大学法人が統一して実施する第1次試験、それから各国立大学法人で実施する面接考査の2次試験、この二つで構成するということになっています。
 この1次試験を通らなければ、図書系職員の面接は行われないという方向で進んでいます。
 ただし、図書系に限っては、まず基本的には司書資格取得の見込みのあることが条件になっています。
 そして図書系に何名採用するかという枠を提示していきます。
 教養試験を受ける受験者に対して例えば50人なら50人という枠をお示しして、1次試験の合格者のうち、50名については次の2次試験で考査していくという形になると思います。
 ここで議論になっているのは、図書系の専門性についての2次試験の考査という点です。
 実際には、面接で考査するということも考えられているわけですが、先々の人事異動を考えると、面接にいろいろな格差が生じてくるのではないだろうかということで、今、議論しています。
 1次試験の中に専門試験をペーパーで行うことを検討している地区もあると聞いていますが、関東甲信越地区においては、面接で考査するという点について、現在、議論の真っ最中です。
 来年からするというのに、今になってまだ議論をしているという、非常に大変な状況です。
 そのほかに、法人会計の移行だけでも大変な作業になっていまして、そのうち図書館職員にも倒れる人が出るのではないかと思っている次第です。
 いかんせん、国から法人への財産の移行をするということで、我が東京大学も800万冊を超える資料について、すべて財産目録をつくらなければなりません。
 800万レコードをデジタル化していると、非常に楽なのですが、いかんせん、まだ50%しかデジタル化していませんので、残りは手でつくっていかなければならない。
 そういう過酷な状況です。
 その中で、この専門性の2次試験の考査という点について、現在、まさに議論の最中で、国大協の人事制度事務局とも連携しながら、議論しているところです。
 方向としては、面接ではなく、ペーパーになるのではないかと思っています。
 そういう状況で、今、国立大学図書館における職員の採用問題が起こっています。
 基本的には、各国立大学法人の学長が任命権を持っていますので、必ずしも図書館職員だけが採用されるという道ではない。
 民間からも採用されるケースが出てくるかもしれません。
 そういうことで、2次試験の専門性というものを慎重に議論しなければならないと思っています。
 それから、国立大学図書館職員の研修体制です。これまで国立大学図書館の職員に対する研修で重要なものは、文部科学省が行ってきた長期研修と言われているもので、かつての図書館情報大学が担当してくれていました。
 これからは筑波大学が担当していくということになっています。
 それから、中堅職員研修と称されている大学図書館職員講習会は文部科学省でやっています。
 漢籍の研修も文部科学省でやっています。
 一方、国立情報学研究所でも、総合目録データベース実務研修やNACSIS-IRデータベース実務研修などの幾つかの技術的な研修を行っていただいています。
 一方、国立大学図書館協議会でも電子ジャーナルのユーザー教育担当研修会、あるいは東西に分けたシンポジウムをやっています。
 実は、今年1月に、全国の国立大学の図書館部長が一堂に会し、研修体制について議論しました。
 もちろん、文部科学省からもサジェスチョンをいただいたわけですが、そこで決まったことは、文部科学省のこれまでの研修制度を維持していく。
 それから、国立情報学研究所ももちろんこの研修を維持していただく。
 国立大学図書館協議会自らも、研修制度を見直していく。そういうことを協議しまして、そのトライアングルの中で研修制度を枠として大きく考えていこうということになりました。
 先ほどからお話が出ているように、図書系職員のスキルアップが大きな課題になっています。
 それで今年度から、国立大学図書館協議会に研修事業特別委員会というものを設置して、研修制度を考えています。具体的にはどういうものかといいますと、

(1)海外大学図書館調査・研究
(2)業務毎のプランニング・プレゼンテーション研修
(3)語学研修
(4)初任・中堅職員トレーニング・ワークショップ及びセミナー
(5)マネジメント研修(組織運営及びサービス)
(6)大学・教官等との連携により図書館が目指す分野の講義・ゼミなど受講
(7)図書館の方針に沿った国・民間の資格制度の受験環境整備

といったものが考えられます。
 ここに書かれたものが図られることになるかどうかについては、これからの話だろうと思いますが、おおよそこういうことが考えられるということについて、研修事業特別委員会に付託しているという状況です。
 法人化に移行するわけですから、各国立大学法人として、今後、長期研修というものが存続するのかということを大変危惧していたのですが、今の時点で、文部科学省としては、これまで行ってきた研修は制度として残すというお話をいただいています。
 ちなみに、文部科学省が実行するわけではなく、この予算をすべて各法人に移行させるという形になります。
 具体的には、長期研修は筑波大学が受託する。
 大学図書館職員講習会については、国立情報学研究所が受託する。
 漢籍の研修については、京都大学が受託する。このように、各法人が行っていく方向で、文部科学省としては考えていると伺っています。
 国立大学図書館協議会でも、このスキルアップ方策については従前から出ていたのですが、特に法人化移行に伴って、会計制度が大幅に変わってしまう点がたいへんです。私どもも新たに簿記学の勉強をやっている最中です。
 これまでの予算のシーリングの枠とは、まるっきり違ったものになるということで、それに対応するように、システムを全部つくりかえるという作業も同時にやっています。
 図書館にあっても、それぞれが決算書をつくらなければならないということになりますので、しっかりした目標と計画を立てて、決算を出していく。
 例えばILLにあっては、今まで予算の振りかえという国独自のやり方で済んできたものが、利用者に対していちいち領収書を発行するという新たな業務が付加されるという形になります。
 その中で、先ほどから出ていますが、マネジメント、経営管理の研修にかなりのウエイトを置かなければ、図書館は恐らく生きていけないのではないかと思っています。
 これまでは親方日の丸で、アメねだりのような形で予算を取得してきたのですが、これからは自ら計画を立て、決算していくということが最重要課題ではないかと思っています。
 時間も非常に短いのですが、今、国立大学図書館協議会と、国立図書館が抱える大きな課題というものを簡単にお話しいたしました。以上でございます。

根本
 ありがとうございました。
 5人の方にご発表いただきました。
 お疲れと思いますので、これから10分ほど休憩にさせていただきます。
 後半を3時半から始めたいと思います。
 全体が4時に終了する予定だったのですが、やはりこれで4時に終わるのでは、ディスカッションの時間があまりにも限られていると思いますので、4時半までということにさせていただこうと思います。
 大変申し訳ございませんが、ご了承をお願いいたします。
 それでは、3時半まで休憩にいたします。

(休憩)