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公開シンポジウム記録
変わりゆく図書館情報学専門職の資格認定
--専門団体はどう取り組んでいるか--

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V-1.ヘルスサイエンス情報専門員の概要、及び、資料の説明

根本
 それでは、後半を始めさせていただきます。
 前半、ちょっと時間が延びてしまいましたが、それぞれ全国的な団体で活躍されている方々ですので、どうしても過去のいろいろなことから現在やられていることまで、お話しになりたいことがたくさんあり、20分という時間では詰め込みきれなかったということがあると思います。
 まだお話しになりたい方もいらっしゃるのですが、ここでは会場の皆様からご質問、ご意見等を受けるところから始めるのがよろしいかと思います。
 ただ、最初に申し上げたいことが2点ほどあります。
 一つは、今日のこの会の設定の仕方です。
 全国的な団体と申しましたが、それぞれ館種、事業の内容等で、同じレベルではないわけです。
 それから、今、焦点を当てていることも、資格を実際に考えておられる、あるいはそれに具体的に取り組んでおられるところから、それはちょっと先の課題であるというところまで、様々です。
 共通の基盤で話をするのはかなり難しいということは、最初からわかっていたのですが、いま伺って、やはり難しいという感じがしました。
 館種の違いについては、私どもの共同研究のほうで今日のお話をもとにして、考えてみたいと思います。
 これに関わり、ご承知の方もいらっしゃると思いますが、日本医学図書館協会で資格制度を新しくつくられようとしているということがあります。
 我々の共同研究のメンバーに、慶應義塾大学医学メディアセンターの酒井由紀子さんがいらっしゃいますので、その辺のことにお詳しいということですので、今、医学図書館協会でどういう事業が計画されているかということについて、簡単にお話しいただきたいと思います。

酒井
 慶應大学医学メディアセンターの図書館員で酒井由紀子と申します。
 日本医学図書館協会(JMLA)の個人会員、会員ナンバーD-31番です。
 私は代表でも何でもなく、個人会員の1人なのですが、このたび、JMLAのほうで認定資格制度が具体化するということで、ご紹介したいと思います。
 名前を「ヘルスサイエンス情報専門員」といいます。
 特徴が二つあります。
 一つは、初級・中級・上級の三つからなるということ。
 それから、試験ではなく、ポイント制を中心とした自己申告制の制度であるということです。
 具体的には、2001年から計画を立てていましたが、このほど提案がまとまりまして、この5月のJMLA総会で承認されました。
 そして、この10月の理事会で運営委員会を組織します。その年度内で実施する運びになっているということを聞いています。
 少しだけ詳細をお伝えします。
 初級・中級・上級で要件が違いますが、共通の要件としては、司書については原則とします。
 それ以外の方も運営委員会で認定されればオーケーということになっています。
 それから、会員以外の方も応募することができます。
 当初は会員のサービスの一環としてということで、会員に限っていたそうなのですが、その後の議論の中で、会員以外の方でも広く医学・医療情報サービスの専門にかかわる方にも開放しようということになっています。
 それから、更新は5年に1回です。ただ、初級については、一度取得すれば、その資格は永年で継続するということになっているそうです。
 具体的に、どのように申告するかというと、まず司書の資格の申請を行います。
 次にポイント制を申告するのですが、どうしてポイント制かというと、これはアメリカの医学図書館協会(MLA)のAHIP(The Academy of Health Information Professionals)という、1989年から実施されている制度をモデルにしています。
 MLAのほうでも、1949年から認定制度が実施されていましたが、主に検定試験で行っていました。
 それが1989年時点で、これから必要とされる技能・知識は非常に多様化するということで、それ自体を検定試験で評価することは難しいという判断がされました。
 そして、自己申告によって、例えば継続教育を受けたという努力に対する報奨という側面、それから研究活動や専門団体での活動などをポイントにかえて、それを評価しようという方に方向転換をしました。
 ですから、JMLAでも、このポイント制のポイントは、例えば継続教育に半日参加することで2ポイントというように数えていきます。
 3段階の違いは、そのポイントの違いと、それから事務経験からなるということになっています。
 以上が概要です。

根本
 ありがとうございました。新しいタイプの資格認定制度として注目される例ではないかと思います。
 もう一点、補足的な話ですが、「日本の図書館職員数の概要」と書かれた資料がありますが、これについて説明させていただきます。
 ごらんいただければわかるのですが、この研究をする際に、日本の図書館界のマンパワーがどのくらいあるのか、図書館にかかわる関係者はどれくらいいるのかということを一応把握しなければいけないのではないかということで、統計をつくってみました。
 いずれも公表されているものを引っ張ってきて、それを合計したというものです。
 先ほど森田さんのほうから、学校図書館の職員数について、全国SLAのホームページで出ているものより新しい数字についてご発言いただきました。
 それによりますと、一番上の表が総括表なのですが、公共、大学とあり、次に「学校(小中司書教諭)」とあります。
 兼任/非常勤/その他を同じものとしてカウントしていいのかどうか、難しいところもあるのですが、ここでは1万人になっています。
 これは途中の段階の数字です。この数が約2万2000人というお話がありました。これをご訂正いただければと思います。
 それから、その二つ下の欄の「学校(事務職員)」、これはいわゆる学校司書のことで、文部科学省がこのような形で把握しているということですが、この4080人が9800人になるというお話がありました。
 そういうことでご訂正いただければと思います。
 ですから、この数字でいっても、専任の数がさらに6000人程度増え、兼任/非常勤/その他が1万1000人程度増えます。
 表では合計数が7万人程度になっていますが、修正して8万5000人ぐらいの図書館関係者が把握できていると考えればいいかと思います。
 専任と非常勤等の定義など、それぞれ統計のつくり方の違いがありますので、あくまでも概数とお考えいただきたいのですが、現在、日本にこれだけの数の職員がいることを前提に議論したいと思います。