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公開シンポジウム記録
図書館情報専門職の現在
--LIPER研究班の中間報告--

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W-2.質疑応答(後半)

根本
 あと25分ぐらいしか残っていませんが、フロアの方、あるいは先ほどのコメンテーターの方も、さらにコメントをつけ加えたいということであれば、含めてご意見をお願いしたいと思います。
 手を挙げていただいて、ご所属とお名前をお願いします。
 それから、どなたに対する質問なのか、全体に対するものなのか、そのあたりをお願いします。

横山道子
 神奈川県立図書館から参りました横山と申します。
 大変興味深く伺いました。
 公共、大学、学校図書館の班の方にそれぞれ、似たようなことなのですが、お伺いしたいと思います。
 項目についてです。
 公共の班では、6ページに具体的な項目が挙がっているのですが、私が一見したところ、いろいろな性質のものが混じっているような気がします。
 必ずしも科目と一致しているようでもないですし、これはどのようにおつくりになったのか。
 そして、その結果について改善への提言をされるということなのですが、今後どのように使われるのかということをお伺いしたいと思います。
 大学の班についても、ほとんど同じことなのですが、追加のほうのレジュメの2ページで、かなり小さな画面ですが、「重要と考える」というような表があります。
 この項目も同じように、どのようにつくられているのか。
 大学の場合は特に、先ほども司書資格とは違ったものを求めているということがありましたが、大学図書館としての養成に必要な中身をどのように考えていらっしゃるのか。
 それから、大学の場合、分野がかなり多岐にわたっていて、主題知識と言ってしまっていいのかどうかわからないのですが、それぞれの分野による違いも大きいのではないかと思います。そのあたりをどう考えていらっしゃるのか。
 それから、学校図書館の班にお聞きしたいのは、レジュメの11ページに、「現行の司書教諭という言葉は使用しない。
 学校内情報メディア専門家(仮称)という言葉を使用する」ということが書かれています。
 つい先ほどもお話があって、一生懸命聞いたつもりなのですが、この学校内情報メディア専門家というものは、司書教諭のあり方を考えるということなのか、また学校司書との関係はどうなのか、そのどれでもなく新たなものを考えていくということなのか、よくわかりませんでした。
 もし新たなものを全く別に提言されるということであれば、さらに混乱してしまうのではないかとも思うのですが、そのあたりをお聞かせいただければと思います。

小田  ご意見、ありがとうございます。
 まず1点目、項目の取捨選択ということに関してですが、これは5ページにあるように、東大調査をたたき台として作成しました。
 「たたき台として」という意味については、全く新たにつくり出すということももちろん考えたわけですが、10数年前のこの調査の結果が未発表であるということを踏まえますと、この調査の結果を含み込んで、すなわち、場合によってはうまく比較対照できるように項目を調整したい。
 調整する以上は、その当時の項目とあまりかけ離れた項目、あるいは表現的な移動があることは望ましくない。そういう状況があります。
 ですから、性質として、あるいは重なり具合として、うまくないという項目が見られる可能性はあります。
 ただ、この項目を選ぶに当たって、昨年度の予備調査、あるいは今年度の調査等でぎりぎりのところで調整したというのが、現在お示ししている項目ということになるわけです。
 それから、これをどう使うかということです。もちろん、これからの話なのですが、先ほど「特に重要だ」という項目を幾つかお示ししました。
 その中で、レファレンスサービスが上位にあるというようなことも申し上げましたが、もし実査で同じような結果が出たとすればということで仮に申し上げますと、その内容を含み込んだ科目を重点的なコアの科目として見直す必要があるのではないかという提言はできると思います。
 それから、接遇が上位にあったということになりますと、司書養成の場合、接遇関係では選択科目としてコミュニケーションという科目があります。
 これはパーソナルコミュニケーションで、マスコミではありませんから、この科目の中で取り上げることが重要となりますと、選択科目としての位置づけではなく、必修科目としての位置づけの可能性があるのではないかという提言をし得ると考えています。
 そういうところが使い方の一つになると思います。
 また、大学図書館、教育班との関係で、そちらの議論ができるのではないかと考えています。

永田
 お答えします。
 小田先生のお話は、私どもの場合においても、ほとんど前提となるところです。
 ただ、大学独自のことを少しつけ加えますと、リスト作成に当たっては、大学班の前提としている東京大学教育学部の研究成果は発表されており、そこでかなり細かい項目が出ています。
 その項目を前提にし、北米のAssociation of Research Librariesにこの手のものがありますので、それも参考にしました。
 それから、昨年度のインタビュー調査を踏まえ、検討してつくりました。
 2番目の司書資格については、誤解を恐れずに言いました。
 大学図書館の場合、大学図書館員であっても、司書資格はあったほうがいいと思います。
 しかし、司書資格で終わるものではないという意識が非常に強いということです。
 もう一つ、リストのところで、それをどう使うかという件に関しては、大学図書館の質問紙調査では、質問4というものがありまして、同じ項目に関して、その知識・技術がどの教育段階で修得されればいいかという質問をしています。
 例えば大学の図書館情報学教育、大学院員教育、あるいはリカレント、各種研修会・講習会、オン・ザ・ジョブ・トレーニングなど、いろいろなチャンスがあるわけですが、知識・技術がどこで修得されるのが望ましいかということも結果として出てきます。
 3番目の主題知識の問題は、大学図書館にとって非常に重要なわけです。
 主題知識は必要かという質問をしますと、平均すればあまり高くはありません。
 一部の人がある一部の主題を持っていればいいということになりますので、すべて主題知識が必要かというニュアンスでは質問が通じないのです。
 結局、主題知識の質問に関しては、平均的には50%前後のポジティブな回答になります。
 しかし実際には、先ほどの大埜さんのコメントにもありましたように、大学図書館では、それぞれの主題に関する専門家が必要なわけです。
 ですから、主題に関する専門家であり、かつ、図書館情報学の分野の専門家であるような組み合わせがアカデミック・ライブラリアンとして望ましいだろうということになります。
 こういうものはパーセンテージが低くても、きちんと位置づけておくべきかと思います。

堀川
 ご質問、ありがとうございました。
 私たちが学校図書館情報メディア専門家というように仮称したものは、現行の司書教諭、学校司書、どちらをイメージしたものでもありません。
 学校図書館の専門職として到達すべき点といいますか、専門職としてはこういうものであるというように、我が国の学校図書館の専門職として到達すべき像を明らかにするということです。
 それが明らかになってから、現状をそちらにどのよう近づけていけばいいかと。
 その検討はまだこれからの段階で、最終的にどのような形の提言になるか、着地点はまだわかりませんが、まず到達すべき点、目標を明らかにしたいということです。

根本
 私のほうから追加のコメントをさせていただきます。
 今の三つの館種について、調査の方法が若干違うということが前提としてあります。
 公共図書館班と大学図書館班はある程度似ているのですが、学校図書館については少し違う調査の方法をしていると思います。
 公共と大学については、先ほどから出ているように、私も少しかかわったのですが、10数年前に東大で調査したものがあります。
 とにかく、大学と公共については既に制度が動いていて、人材配置が行われています。
 それはずっと前からそうです。
 その状態を前提にして、現場の方々にどういう知識・技術が必要なのかということを伺うということを一度、既にやったわけです。
 今回も質問紙調査については同じ手法を踏襲していて、ある程度比較できるようにするというのが前提です。
 もちろん、それだけでは十分ではないわけで、さまざまなインタビュー調査等が既に行われていますし、これからも行われるということです。
 そういうこと全体を含めて、最終的な報告になるのだと、私は理解しています。
 それに対して学校図書館は、司書教諭の配置がごく最近に制度化されたばかりという状況ですから、学校図書館の人材といいますか、人に対する正確な理解といいますか、どういう像が求められているかということそのものが非常にあいまいな状況です。
 ここで調査しても、いい結果はなかなか出ないのではないかということがあり、まずモデルを明確にした上でそれに合わせた調査をするということになっています。
 最終的には、三つの館種の現場からの報告と、図書館情報学教育はまた別になりますが、そこから上がってきたものを合わせて全体を総合した上で、何らかの提言的なものがまとめられるのではないかと、私は考えています。
 全体として、そのようにご理解いただければと思います。それで先ほどのご質問はよろしいでしょうか。

横山
 提言策定を目指しているということなので、未来のことを考えていたのですが、1989年のもとの調査との比較ということも重要な位置を占めているということですね。

根本
 公共と大学については、それが可能であるということです。

横山
 そういう考え方をしていらっしゃるということですね。

根本
 ナレッジベースの部分については、そういう調査方法をとったということです。

横山
 はい。ありがとうございます。

根本
 よろしいでしょうか。
 では、ほかの方でご質問、ご意見をお願いします。

高田淳子
 神奈川県立川崎図書館の高田と申します。
 学校図書館の堀川先生にお伺いしたいと思います。
 1点目の質問です。
 11ページに1年目の調査概要として、厚木の小学校と中原の中学校に調査に行かれたということが書いてあるのですが、神奈川県の場合、県立高校がありまして、県立高校では学校司書が全校配置になっています。
 司書も、昭和40年代の半ばから有資格者採用をやっていまして、ほとんど専任司書教員に近いような形で仕事を進めているという実態があります。
 それは神奈川だけではなく、埼玉等も同様です。
 研究調査をするとき、小中の司書教諭だけではなく、既に設置率が86%以上になっている高等学校の学校司書についても当然、面談調査をすべきではないかということが一つの質問です。
 なさらなかった特別な理由があれば、逆に伺いたいと思います。
 2点目は、新しい情報メディア専門家という職を考えていくということなのですが、これが学校という現場の中でどう位置づいていくのか。モデルとしてどう考えるかということなのですが、半分は図書館員であると同時に、学校の中で子供と接するという部分が非常に強いと思います。
 学校図書館職員の場合、そういう部分を加味した専門性というものも考える必要があるのではないかと思います。
 ここから先は意見になりますが、普通の公共図書館の司書と学校図書館の専門職員とは、やはり資格要件を変えていくべきではないかというのが個人的な意見です。
 今後、研究調査でモデルをつくっていかれるのであれば、そのあたりのことも考えに加えていただけるとありがたいと思いました。

根本
 では、堀川さんのほうからお願いします。

堀川
 一つ目の厚木市の小中学校ということでしたが、高校をわざと外したわけではありません。
 たまたま行きやすいということがありまして、学校図書館班のなかの都合です。
 グループの中でも、高校の方もいらっしゃいますし、大学の方もいらっしゃいますし、経験の差がありましたので、とにかく現場を見に行って、共通の理解をしましょうということです。
 ですから、高校を意図的に外したわけではありません。
 高校については、これからフォーカスグループインタビューを行いますので、そのときには(入っていただけると思います)。
 実際に私たちも、レベルの高い、実力のある高校の司書さんを大勢存じ上げています。
 また、調査の中から抽出した、優れたところの司書さんに入っていただき、いろいろお伺いしたいと思っています。
 別に故意に外したわけではありません。
 それから、二つ目のことはおっしゃるとおりだと思います。
 子供に接するということでの専門性も考えていきたいと思います。
 学校図書館は、学校の中といいますか教育の枠の中に入っている図書館ということで、公共図書館とは違った専門性ということも明らかにしていきたいと思っています。ありがとうございました。

根本
 よろしいでしょうか。
 それでは、あともうお一人ぐらいかと思いますが、ご質問をお願いします。
 ――今、3人の方に手を挙げていただきましたが、それぞれ手短にしていただいて、その3人の方で終わりということにさせていただきたいと思います。

酒井由紀子
 慶應大学の医学図書館で図書館員をしている酒井由紀子と申します。
 残念ながら、大学図書館のアンケート調査は私のところに回ってこなかったので、この場で少しだけコメントしたいと思います。
 実務教育か学術専門教育かという問題ですが、当たり前のことですけれど、両方が重要だと思っています。
 私はアメリカと日本の両方で修士課程を終えましたが、両方のいい面をもらってきたと思います。
 一つは当たり前なのですが、研究に対する理解がなければ、研究者へのサービスはできません。
 特に医学図書館では、米国では医学情報サービスが非常に発達していまして、医学研究の研究デザインによってエビデンスの高さを図り、臨床情報サービスをするというサービスをしています。
 これは研究をやった人でなければ、なかなか理解できないものだと思っています。
 あと実務教育面で今、特に足りないと思っているのはマネジメントの部分だと思います。
 現場からいいますと、残念ながら私立大学の図書館では今、専門員制度というものがほとんどありませんので、マネジメントでしか評価されないという面があるのですが、マネジメントをやりたくない方もマネージャーになってしまうという現状があります。
 そのとき、マネジメントの教育というものを、図書館情報学教育、学部教育の時点では難しいと思いますので、継続教育の部分でフォローできるところがあれば、非常にいいのではないかと思っています。
 関連して、あともう一つだけ申し上げたいのですが、教員の評価というところで、今、研究業績でしか評価されないという面があります。
 教育の面で功績を評価するという制度がぜひ必要ではないかと思っています。

根本
 ありがとうございました。
 これはご意見ということでお伺いすればよろしいですね。
 それでは次の方、どうぞ。

日暮行男
 インターネット上で「WEB版図書館就職相談室」というものを開いている日暮という者です。
 所属は、放送大学の目の前にある千葉県立衛生短期大学です。
 三輪先生にお伺いしたいと思います。
 3ページの「調査結果に基づく仮説」の中で、司書課程履修学生、大学、司書課程、図書館情報学専門課程に関しての仮説があるのですが、卒業生に対する調査がぜひとも必要ではないかと思います。
 こういう調査を大学にしても、役職を持つ人が統計を書いてそれで終わってしまって、部下である私たちには答えることもできませんし、供覧をして終わりだと思います。
 先生たちは多くの学生を卒業させて、現場に送り出したり、そこまで至らない人たちも多いと思いますので、できれば、自分たちのネットワークを使った卒業生に対する調査ということもぜひともしてもらいたいと思います。
 同志社大学の渡辺先生のチラシの中に「50周年のお知らせ」というものが入っていたのですが、卒業してしまうと、自分の母校に対する帰属意識というのはなかなか難しいと思います。
 こういう細かい調査などをするときに、「どう?」という感じで細かいことを聞いてみると、自分たちの教育したことに対していろいろなことがわかってくるのではないかと思います。
 ぜひともお願いしたいと思います。

根本
 卒業に対する出口調査ですか。
 先ほど教員に対するということはありましたが。
 一言、お答えいただけますでしょうか。

三輪
 司書職の出口調査は、教育の班の中で最初からぜひやるべきだということで議論をした重要な調査です。
 入り口調査をするのだから、出口調査もするべきだということもありましたし、就職後の追跡調査という意味でもやりたかったのですが、メソトロジーについて議論をしていく中で、プライバシーの問題がどうしても出てきてしまうのです。
 例えば卒業した後の住所をどうやって調べるか。
 同窓会の名簿などを使わなければならないわけです。
 そうすると必ずプライバシーの問題が出てきて研究者の倫理ということに触れてしまい、なかなか難しいということで、今は見合わせています。
 ただ、もし倫理に触れない形でやれる方法をご提案いただけるのならば、今からでもぜひやりたいと思いますので、ご質問いただいた方だけではなく、この会場にいらっしゃる方で、こういうやり方をすれば大丈夫ということがあれば、ぜひ教えていただきたいと思います。

根本
 よろしいでしょうか。それでは次の方、どうぞ。

河西由美子
 玉川大学の河西由美子と申します。
 公共図書館班のコメンテーターの西野さんに1点、お伺いしたいと思います。
 専門職員の認定制度を検討中であるというお話と、その前に、国家試験の実施が本来は望ましいというお話をされたのですが、この二つの制度については、どのような関係で考えていらっしゃるのか。
 本来であれば国家試験が望ましいけれど、現実的にまず認定制度をというお話なのか、それとも並立するような形で考えていらっしゃるのか、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。

西野
 ありがとうございます。
 専門職認定制度というのは、日本図書館協会のレベルで研究してやっていることで国とは関係ありません。
 私的レベルのものです。
 これが将来、国の認定につながるかどうかは全く未知数ですから、自助努力の中で自分たちが保証するということです。
 いわば日本図書館協会認定司書という制度をつくろうと。
 そして、社会的認知をかち取るような方向に持っていこうということが一つです。
 私のもう一つの提案の国家試験というのは、入り口のところで卒業した方が、例えばドライバーのペーパーテストは、きちんと安全に運転できるかどうか、人を殺さないようにできるかどうかを保証する制度ですから、基本的な図書館の司書としての力が最低限あるという保証を国家でするということなので、全く違うものです。

根本
 よろしいでしょうか。では、コメンテーターの大埜さんのほうから、一言あるそうです。

大埜
 先ほど言い忘れたことと永田先生がおっしゃったことについて、少しだけ申し上げたいと思います。
一つは、永田先生が言われた図書館員が図書館長になるべきではないかという件ですが、ぜひ館長を目指して欲しいと思っています。
 ただ、今の国立大学の学内事情では、つまり教員が学部や図書館の長でなければならないという認識が一般的であること、学内での委員会等での交渉毎は教員だけで実施しているために立ち入れないということから、とても難しいのではないかということを言いたかったのです。
 ICUに例がありますから担当できる人は存在すると思います。
 いずれにしても実績を上げなければ難しいのですが、館長を目指してほしいと、思っています。
 国立大学特有の環境の中で、今後どうやって実現していくか、大学院レベルでの養成コース(専門職大学院?)も必要ではないかと思います。
 学歴を求めるわけではないのですが。
 それから、大学図書館員の資質といいますか、どういう人間を求めたいかという件ですが、先ほどから出ているように、サブジェクトと図書館技術といいますか、図書館についてのノウハウがいろいろ必要であることは疑いがありません。
 その組み合わせに加えて、大学図書館の場合には語学力だと思っています。
 普通は英語だと思いますが、いろいろな語学力を持っている人がたくさんいれば、それにこしたことはないわけです。
 大学によって何語がいいかということはあると思いますし、分野についても当然そういうことだろうと思います。
 ちなみに、慶應義塾大学三田メディアセンターの事務長である加藤好郎氏が「大学図書館研究」の71号に「大学図書館の専門職の育成;その研修の実際」を書かれており、その中で主題と機能という言葉で触れて、5主題×8機能、あるいは3年×4機能という言い方をしておられ、私も共感するところが多いので、是非ともお読みいただければと思います。
 それから、採用時点で司書の資格が必要かどうかという件ですが、国立大学法人の今年度の採用試験の受験に当たっては、司書の資格は不要ということになっています。
 しかし、実際の専門試験(二次試験)の内容を見ますと、今までの公務員試験の過去の問題をごらんになっていると思いますが、少なくとも司書の勉強をしなければ回答が難しいでしょう。
 来年以降、試験問題がどのように変わっていくかはわかりませんが、今年、16年度の採用については、そのような試験をやっています。
 他方で、司書資格を取得する過程で、どれだけ大学図書館の事情に対応したプログラムが展開されているか疑問があります。公共図書館向けに偏っていないでしょうか。
 また、国立大学では今まで図書館員は図書館員として採用、異動、処遇は別扱いでしたが、法人化後は、採用も図書館員として採用しないとか、人事異動も他大学とは行わないで自大学の一般職との間で行うという方針を決めた大学が出てきています。
 多様化が始まったと受け止めています。
 ただし、これはあくまで国立大学だけですので、公私立大学が司書の資格をどう考えているかということはわかりません。
 関西で聞くところでは、司書の資格どころか、図書館員として採用しない大学が目立つようになってきたそうです。
 たまたま図書館に配属しても、何年かすると、また図書館から出ていってしまうという問題が各大学で起こっていると聞いています。
 他方で、アウトソーシングが進んでいる関係で、専門的な職員、専任の職員については、図書館運営上のマネジャーとしての知識と能力がますます必要になっているということが指摘されているようです。
 大学を出たばかりの職員には向かない仕事ですから、どうリフレッシュするかです。
 それからもう1件だけ。
 司書の資格という意味で教育課程が関係あるのですが、リカレント教育という意味では、今後、教育課程がどのようにかかわっていくのかということです。
 特に大学院だと思います。その際、地理的に不便なところにある大学の職員に対して教育機会をどのように提供するか。
 今はe−ラーニングがあるのでしょうが、それもぜひお考えいただければありがたいと思います。

根本
 ありがとうございました。
 もう時間が過ぎてしまいましたので、最後にまとめに代えて、私のほうからお知らせを兼ねて申し上げたいことが2点ございます。
 先ほど西野さんのほうから、国家試験としての司書の認定というお話がありましたが、実態として今、逆の方向に向かっているということを踏まえておっしゃっているのだと思います。
 これは「図書館雑誌」(2004年9月号)等でも報道されていますが、司書講習を民営化するということが政府の委員会(規制改革・民間開放推進会議)で議論されていて、日本図書館協会や文部科学省はそれに反対する意見を出しているというお話です。
 そもそも司書の養成というのは、戦後の教育改革の中で、大学が責任を持って行うということで始まったものだと思います。
 司書講習ということになりますと、大学がやるわけですが、大学の正規の授業の一環ではないわけです。
 例えば今、大学の司書課程で行っている20単位の授業というものも、実際には省令で定められている司書講習の単位数に基づいており、図書館法上は、大学において図書館学を開講して司書を出すというかたちになっていないのです。
 大学が教育機関として責任を持って司書の養成を行うという体制が、制度の上では非常にあいまいな形で戦後50年以上が過ぎてきているという問題が一つあって、今の民営化という話になっているのではないかと思います。
 これはすぐには解決できるような問題ではないのですが、チャンスはあります。
 私は最近、図書館に対する関心が非常に高まっているように思います。
 公立図書館のベストセラー提供に対する作家の批判なども一つのきっかけになっていると思うのですが、あれ自体、図書館そのものの価値をある程度認めた上で議論されていると思います。
 そういう動きを無視しないで、図書館員の専門性の議論にうまくのせていきたいと思っています。
 そういうことで、私も若干かかわったものですが、日本経済調査協議会というシンクタンクがありまして、そこが7月に「問われる日本の"図書館力"」という報告書を出しています。
 日本経済調査協議会のホームページをごらんいただきますと、この報告書のPDFファイルを見ることができるようになっていますので、ぜひ一度ごらんいただければと思います。 (http://www.nikkeicho.or.jp/top/report.htm
 中身そのものについては、いろいろ議論があるだろうと思います。
 特に提言は非常にインパクトのある言い方をしています。
 一つは、図書館長を政治任命とせよということです。つまり、図書館長は非常に重要であるから、首長や学長などが任命する形にしろということです。
 二つ目は、司書制度を2年以内に再確立せよということがあります。
 ここで言う司書制度とは、先ほど国家試験とおっしゃいましたが、試験制度等できちんと力を認めるかたちの制度をつくれということです。
 そういうことが書かれていますので、ぜひ一度、ごらんいただければと思います。
 私も、これを全部うのみにするわけではありませんが、外部から図書館に対して関心を持っていただけるというのは非常にありがたいことです。
 こういうものをバックにして、LIPERとしての議論を積み重ねて、政府なり何なりにきちんとした意見を持っていくという形にしたいと考えています。
 3時間半もの時間、大変お疲れさまでした。
 私どもにとっても、コメンテーターの方、フロアからのご発言に大変勇気づけられましたし、厳しいご意見もございましたが、そういうものをもとにして今後、共同研究を進めていきたいと思っています。
 あともう1点、これを忘れていました。黄色いペーパーがございますが、これはLIPERのシリーズで、11月13日、12月18日の2回にわたってシンガポール、中華民国、中華人民共和国、タイという四つの国の専門家の方に、それぞれの国の図書館情報学教育について講演をしていただき、議論をしようということです。
 韓国が抜けていると思われる方がいらっしゃると思いますが、韓国は昨年度にお話を伺って、大体のことをつかみました。
 それをきっかけにして、これまでは欧米を見てきた部分が非常に強いのですが、日本の近隣諸国も図書館情報学教育についてはかなり進んだ制度を持っていたり、人がいたりするという状況がわかってきましたので、今回、こういう国の方々にきちんとお話を伺うということです。
 公開で行いますので、ご希望があれば私のほうまでお知らせいただければと思います。
 では、このシンポジウムはこれで終わりにさせていただきます。
 最後に、コメンテーター及びご発言いただいた方に拍手をお送りすることで終わりにさせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

−了−