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公開シンポジウム記録
図書館情報専門職の現在
--LIPER研究班の中間報告--

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V-3.大学図書館班へのコメント(コメンテータ:大埜浩一)

根本
 続きまして、大学図書館についてのコメントを京都大学附属図書館事務部長、大埜浩一さんにお願いいたします。

大埜
 2003年の大学図書館調査班の中間報告を事前に拝見し、コメント内容を考えてきたのですが、今日、永田先生から最新の説明がありましたので、そちらのほうに少し話を移して、コメントしようと思います。
 国立大学図書館協会(国立大学と一部の大学共同利用機関で構成)は今年度、「人材委員会」をつくりました。
 これは、昨年度までの国立大学図書館協議会にあった「研修事業特別委員会」を改組したものです。研修だけを取り上げても、採用の時点の問題、キャリアパス、処遇なども平行して考慮した「人材マネジメント」の考え方を導入しないと、人の問題は解決しないと結論づけまして、改組を機会に、「人材委員会」にいたしました。
 今日、お手元にお配りしてある1枚ものは、「人材マネジメント」が必要であり、真剣に開発に取り組まなければならないという考えに基づいて用意したメモです。
 この文脈この中で気がついたことと、今日、中間報告として紹介があったことを関連づけて、この配付資料の順番ではありませんがコメントさせていただきます。
 なお、私は国立大学の経験しかないので、特に断らない限り以下のことは国立大学に限ってのこととご理解下さい。
一つは、管理者のほうから、図書館員に変化に対応する力が求められているという指摘です。
 これは皆さんご承知のように、大学図書館は1980年代に「近代化」があり、その後「電算化」、「電子化」と続き、最近では、「法人化」と、中身は違うのですが、「化」というのが続いています。
 大学改革・教育改革もその間にありましたので、図書館もいろいろ対応していかなければならない状態に置かれ続けています。
 特に法人化で顕著になっていますのが、予算の削減、業務体系の見直しです。
 もちろん人についても10次にわたる定員削減もありかなり減っているし、お金も減っている。
 他方で、電子ジャーナルに代表されるIT応用によるサービス向上も学習・教育・研究をサポートする上で、避けられません。
 法人化のタイミングと時期が重なったために、国立大学の図書館は、歴史上初めてと言って良いほどの根本的な改革を求められています。
 これは私立大学でも公立大学でも同様だろうと思います。
 このように環境変化にどう対応していくか、必要な予算等を確保するにはどうすればいいかというようなことを最優先にせざるを得ない。
 もちろん日常の仕事はしなければならないのですが、それはそれとして、どう対応していけばいいか。
 他にも、特に最近一番頭が痛いのは、電子ジャーナル予算をどう確保するかということです。
 安定した契約内容になってはいない上に、巨額の予算を必要とすることから、国立大学では教員に配分された予算でまかなってきた外国雑誌(紙)の負担方式は破産していて、大学全体で予算を集中化しないと支払えないわけです。
 詳細は省きますが、これにはキャンセル問題も絡んで、学内の予算配分、図書館資料(情報資源)の選択や経費負担のモデル変更を惹起して、当分は混乱状態が続くでしょうが、変化にどう対応していくか。
もう一つ例を挙げますと、京都大学がそうなのですが、学内に50幾つかの図書館・室があり、先に述べた財政難、職員削減が更に進む中でそれをこのまま維持していく、更にはサービスを充実させるというのは、我々から見れば完全に不可能だと思っています。
 正規の職員がいない図書室もかなり増えています。(そこにいる人たちが司書かどうかは別として。)
 ただ一方で、教員向けの研究図書館という性格が強いわけですから、何とか自分の運営のもとに置きたいという気持ちは当然あります。
 そのあたりをどう両立していけばいいのか。
 そういう変化にどう対応していけばいいのか。
 あるいは、変化させなければならないのではないかという意味での企画力が求められるのは必然です。
 マネジメントの能力でしょう。学部等の図書館・室の職員のマネジメント能力には、かなり問題が多いと感じています。
 また、どうやって補っていったらよいか。このような応用能力を図書館員の養成課でどう身につけてきてくれるか。
 話は変わりますが、人の問題で前々から気になっているのは、図書館をどう考えればいいのかということです。
 図書館長は「図書館員」として見るべきなのかという問題です。国立大学では、図書館長はお飾りのような存在が長く続いてきました。
 最近は非常にアクティブな教員が何人か続いていますが。
 館長には館長の役割を果たしてもらわないと、やはりまずいのではないか。
 館を代表して、対学外もそうなのですが、学内で交渉してもらわなければならない。
 例えば法人化によって役員と折衝し、それこそ知恵を絞ったアイデアを生かしてお金を取ってくる。
 あるいは、いろいろな組織の改革や図書館の統廃合なども場合によっては考えなければならない。
 全学の利益ということを主張する人、行動する人がいなければまずいわけです。
 そういうことには、どうしても教員である館長の力、あるいは顔というものが必要です。
その点では、館長の選考方法に目を向ける必要があるでしょう。
 今までは、どこの図書館でも館長は偶然で選ばれていると言えます。
 立候補制でもないし、「私はこうやる」というように公約をアピールするわけでもありません。
 何を期待して選挙で投票し選出しているのか、不思議でなりません。もちろん国立のことですが、そういうことで本当にいいのかという気がします。
 是非とも選考過程を考え直す必要があるのではないでしょうか。
 例えば、マネジメント能力を重視して頂きたいと思う次第です。
 最近、理事が館長を兼ねるという大学も増えていますが、そういう方式が図書館にとってプラスとなるかどうか注目しています。
 理事は激職ですから、何らかの工夫が必要だと思っています。
 と同時に、図書館事情をほとんど知らないままに館長に就任するケースがほとんどですから、自大学や大学図書館界の課題を把握するためと、館長の役割を理解してもらうために、着任当初のオリエンテーションや他大学館長とのマネジメント・セミナーのような研修機会も重要だと思います。
 人材問題の一つと認識しています。法人化を機会に国立大学協会も学長、理事を始め学部長等も対象にした研修制度を実施します。
 これに対応するようなことになります。
 それから、幹部職員の問題です。
 幹部職員の人材不足は深刻です。
 マネジメントができないという問題です。
 先述の企画力の他にも、リーダーシップ、視野の広さ、長期的な洞察力、また学内事情の把握など管理職特有の能力を発揮する立場にあります。図書館員はとかく管理的な業務を軽視してきたためでもありますが、幹部に薦めたい職員の養成がうまくいっていません。
 学内だけでやるのかどうか。どうすればよいか。これも課題です。
次に採用段階のことです。
 従来は人事院の国家公務員試験二種(図書館学)により採用してきたわけで、図書館を希望する人が採用されてきました。
 ただ逆に大学側のどういう人を採用したいかという意向は反映しない仕組みとなっていました。
 例えば京都大学では、工学部だけで10ぐらいの図書室があるのですが、そこにサイエンスのバックグラウンドを持つ人を配置したいと考えても、それができない。
 今までは処遇が一律であることもありますが、受験段階で各大学は明確な求人条件を示すことができなかったという問題です。
 法人化後は、道が開けるのではないかと考えています。
 特にSTM分野にバックグラウンドを持つ人が不足していますが、この「サブジェクト・ライブラリアン」の問題を、日本の図書館情報学の教育課程ではどう折り込むのか。
 懸念している点です。
 それとは別に、数多い人文系バックグラウンドの職員を育てられていないという「サブジェクト・ライブラリアン」のニーズと配置、育て方のギャップもありますが。法人化によって、国立大学の場合は大学単位で人を採用しても構わないし、試験も大学単位でやっても構わないという前提にはなっていますので、工夫次第で欲しい人材を採ることは実現可能だろうと思います。
 それから、中堅職員や若手の職員が非常に悩んでいるということがあります。
 若手のうちは、意欲的にいろいろな勉強をしているという時代かもしれませんが、中堅職員が目標を見失いとか、キャリアパスが見えないと言う点は、深刻です。
 図書館員は往々にして意欲的ですが、異動が頻繁でまた本人の希望する分野、職務や目標から外れると、とたんに意欲を失う傾向があります。
 人材を生かす上でも、持っている才能や意欲を生かす道筋をフォローする制度が必要だと言えます。
 それは、館長を含む幹部職員のコースであり、あるいは学問分野や図書館技術等の専門家の道を選ぶことになることでしょう。
 私どもは前年度に、法人化後の採用試験はどうなるのかということがまだ揺れている時期でもありましたが、職員の計画的なキャリアパス形成に取り組むことにしました。大学側のニーズとの兼ね合いもありますので、当分は試行錯誤が続けることになるでしょう。
 京都大学では、今年から図書館以外でも同様な発想で採用や異動などを考えております。
 その過程で、職員の育成という観点からは、研修とか能力開発の局面で大学院をどう活用するかが一つの課題となると見ています。
 そのときには当然、評価があります。採用の段階でも一定の能力評価があるわけですが、採用した後の評価が当然、求められるでしょう。
 図書館側としても、大学執行部に対して、「こういう成果を出しているから、この人は引き続き」、あるいは「こういう処遇をさらに与えたい」というような問題を考えていかなければならないのではないか。
 そのときに、どういう能力、どういう知識がこの大学に必要である、欠けているという説明が求められるだろう。
 それが、その大学にとって、図書館で活躍してもらわなければならない専門的な能力ではないか。
 それが、ここで話題になっている専門職の話につながるのではないかと思っています。
 その具体像は、学内ニーズの把握から始めないといけないので、これからの開発課題です。
 そのほか、研修です。
 能力開発については、企業では個人の責任ということになっているようです。
 大学側としては、どの程度かはまだわからないのですが、バックアップの仕掛けは用意しなければならない。
 海外に勉強や調査に行くとか、大学院に進むとか、その間の仕事はどうするかとか、いろいろな問題が生じるかと思いますので、そういう意味の制度的な何らかの枠組みをつくらなければならないだろうと思っています。
 みんなに同時に行かれても困るので、そのあたりの歯止めも必要ですが。
 私立大学図書館協会では、海外派遣を協会でおやりになっているようですし、一部の大学では個別の協定を結んで実施しているところもあるようですので、国立大学もそういうことを考えていく必要があるのではないか。
 それから、特に京都、滋賀、奈良という近畿北部では、国立大学の間で人事交流をかなりやっています。
 京都大学だけでも今、20数名がほかの大学に出ています。そういうことは今後も引き続き進めていきたい。
 法人になったということもあり、給与体系の相違をどう吸収するかという問題もありますが、公私立大学とも人事交流ができればいいのではないかと思っています。単に人材の補充と言うだけでなく、他流試合は能力開発にも効果があるという意味で。
 併せて、地域での合同研修をもっと積極的にできないかと考えています。
 近畿では今、国立と公立は一つの協議会を形成しているのですが、私学が加わった組織はありません。
 全部の図書館が集まるのではなく、国公私立大学図書館協力委員会と同じように、代表者が出る形で近畿の委員会のようなものをつくって、そこで一緒に研修をする仕掛けができないかと考えています。
 カレントな話題を始め、大学図書館員が関心を持つことは共通性が高いと言えますので、全国単位で実施することを除けば、地域内で合同で実施することで省力化とともに広く成果を共有できるものが少なくないのではないかと思うからです。
 比較的交通の便がいいので、近畿全般に広げても、成果が得られるのではないかと思っています。
 そういうことで、地域の活動はもっとやりようがあるのではないか。
 その中で当然、専門職というものも話題に上ると思います。
 「どういうコースを」「どういうところを」ということは実践ができるのではないかという気がしています。
 この発想の母体になっているのは、「大学コンソーシアム京都」での活動でありまして、その中に「図書館共同事業検討委員会」というものができて3年目ぐらいですが、そこで今年の2月26日に、合同で研修会(講演会とパネルディスカッション)を開催しました。
 若手の人を企画の段階から参加させて、企画の勉強も兼ねてやりました。11月には、単館では初任者研修を実施できない大学向けに合同で初任者研修を行います。
 これらをできれば近畿に広げたいというつもりでいます。
 どういう人材が必要かということよりも、どのような問題を抱えているかということに重点が行ってしまい、あまり直接には中間報告に触れませんでしたが、このようなことを国立大学、あるいは近畿で考えているということのご紹介で、参考になればと思います。

根本
 ありがとうございました。
 人材マネジメントという発想はLIPER全体にはあるのです。
 ただ、研究の過程で現在はどちらかというと現場の方の教育ニーズを汲み取るという部分を行ってきており、本日はそこに限定した報告をしております。
 今後は全体として、そういう視点で進めたいと考えています。
 また後ほど議論させていただきます。