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公開シンポジウム記録
図書館情報専門職の現在
--LIPER研究班の中間報告--

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V-4.学校図書館班へのコメント(コメンテータ:小林路子)

根本
 では、最後のコメントになりますが、学校図書館についてのコメントを市川市教育センター指導主事、小林路子さんにお願いいたします。

小林
 はじめまして。
 私はもともと中学の国語の教員なのですが、実際に市川市の学校図書館にかかわるさまざまな事業にかかわっているということで、今日はコメンテーターを仰せつかったと思っています。
 先ほどの堀川先生のお話にもありましたように、学校図書館というのは、全国で非常に地域差が激しいのです。
 それから多分、皆さんもご幼少の頃、学校図書館を活用して学習をしたというご経験に乏しいのではないかと思います。実は私自身もそうで、イメージづくりが非常に難しいと思っています。
 ただ、子ども読書年以降、子供の読書活動推進計画が各地域でつくり出されつつありますが、その中には必ず学校図書館が入っていますし、先ほどから話題になっている司書教諭という人の問題も必ず出ています。
 それから、学習指導要領が改訂されまして、学校図書館の活用ということがいろいろな教科で進められつつあるという現状があります。
 今日は、市川市の学校図書館をご紹介しながら、今後、こういう学校図書館で働く人たちはどうあるべきかというような形でお話しできればと思っています。
〔Power Point〕
 市川市では、司書教諭の発令を昨年度、平成15年度から始めたのではなく、法改正があった平成10年度に司書教諭の発令にかかる検討委員会を設けて、考えてきました。今日お持ちした、A4二つ折りのものの真ん中を開いていただきますと、図が両ページにあります。
 これは、そのときの検討委員会で作成した市川市の目指す学校図書館像です。左側が図書館像、右側が司書教諭を中心とした人の役割ということです。
 5、6年たっていますが、一応、今もこれを目安にしています。
 なぜこのように目指す学校図書館像を考えたかといいますと、人を配置するに当たって、人が連携をしたり、チームを組んで働くというとき、学校図書館はどうあるべきかというイメージがないと……。
 市川市は以前から「読書の街」という形で呼ばれ、学校図書館の活性化が行われてきたわけですが、イメージが明確でない中に人が配置されて、一体何をしていくのかという問題がクローズアップされました。
 まず目指す学校図書館像を明確にしていこうということを、検討委員会の中で話し合いました。
 そこで出てきたのは、子供の読書生活を支え、学習を支え、先生方の研究を支えることが大事ではないかということです。そのあたりについては、この図を見ていただければ詳しく書いています。
〔Power Point〕
 その三つの学校図書館の働きをするためには、機能的な運営をしていかなければならないということで、まず、いつでもだれでも自由に使える図書館でなければならない。
 そして一人一人の子供たちや教職員に対する支援、それから使いやすい館内レイアウト、配架などです。
〔Power Point〕
 左側の写真は、市川市には学校司書、または非常勤の学校図書館員がいますが、その人たちの読み聞かせの様子です。
 右側の写真は、全校の蔵書がデータベース化されていますので、小学校でも子供たちがこのように貸し出しをしているという様子です。
 学校図書館の中にはコンピュータがかなり入ってきていますので、学校司書たちはこういうものも使いこなせなければなりません。
〔Power Point〕
 次に、閉ざされた学校図書館ではなく、多様な資料、外部機関と結ばれた学校図書館でなければならない(のではないか)ということで、公共図書館や他の学校との連携で本を貸し借りする。
 あるいは、私どもの建物の中に映像文化センターというビデオの貸し出し等を行っているところがあり、そことの連携。
 あるいは、市川市には博物館が三つあり、その博物館との連携ということも考えていこうということです。
〔Power Point〕
 これが博物館の実地体験研修の写真です。
 この体験の前に子供たちが図書館を利用して調べたりするわけです。
 それから、右下の写真は映像文化センター職員が手伝って、子どもたちが調べたことをもとにビデオを作成している様子です。
 こういうところまで図書館がかかわっていこうと思っています。
〔Power Point〕
 3点目に、地域とともに歩む学校図書館ということで、小学校に市民図書室があったり、読書サークルや読み聞かせサークルという地域の方の活動があったり、開かれた学校図書館を目指さなければならないということです。
〔Power Point〕
 これは、読み聞かせをしたり、お母さん方がデータベース化の作業にかかわったりしてくださっている写真です。
〔Power Point〕
以上のような学校図書館を実現するために、公共図書館と学校との連携を教育センターの事業として進めてきたわけです。
 その内容については資料をごらんいただきたいと思います。
〔Power Point〕
 その中で、人のネットワークが大変大事だと思っています。学校図書館の専任者とはどうあるべきかということだと思うのですが、その前に、市川で行っている「物流」と「情報」のネットワークについて簡単にお話しします。
〔Power Point〕
 「物流」というのは、公共図書館と学校、学校と学校とで、必要な図書の相互利用をしています。
 それは赤帽が運んでいるのですが、私どもで委託しているものです。
 公共図書館からだけでなく、学校間で図書の相互利用をしています。
〔Power Point〕
 図書の依頼はメーリングリストを作っております。
 実際の配送は、公共図書館を基点として、市内の小中学校、幼稚園、高等学校66カ所を一巡しながら、週に2回、配送業者が本を積みおろしています。
 この実務を担当しているのは司書教諭ではなく、先ほど堀川先生の話にあった、身分不安定な学校司書です。
 あるいは、学校図書館員という非常勤の人が担当しています。
 司書教諭にはこれは無理な仕事です。
 なぜならば、授業を持っているからです。
〔Power Point〕
 図書の相互利用のために年間計画などをきちんと立ててもらって、無計画に学校図書館を利用するのではなく、学校全体で計画的に利用してほしいということをお願いしています。
 これは市全体の学校から集めているのですが、この作成は司書教諭にお願いしているわけです。
 なぜならば、これを作成することによって学校の教育活動の全容が見えるからです。
〔Power Point〕
 この「物流」で年間6万冊近い本が移動していまして、学校図書館を利用する計画単元が全校で2200単元近くあるという状況にずっとなってきています。
〔Power Point〕
 もう一つの「情報」のシステムですが、学校図書館に(は)専用のファクス電話やコンピュータを配備し、校内LANにつなげています。
 先ほどの「物流」もメーリングリストで一斉にやっています。それから、蔵書のデータベース化もされています。
 さらに、学校図書館とコンピュータ室を隣接させて、学校図書館の情報学習センター化(ということ)も図ってきています。
〔Power Point〕
 左上が中学校、右下が小学校の写真ですが、図書館の中にインターネットにつながるコンピュータを6、7台置き、さらに隣にコンピュータ室を持ってくるという形で、市内全体で子供たちが図書、あるいは電子メディアから得られる情報、新聞その他もろもろのものを活用できるという状況になっています。
〔Power Point〕
 こういう学校図書館像をイメージしていただくと、そこに働く司書教諭は1人で何かができるかといえば、無理であるということにお気づきいただけると思います。
〔Power Point〕
 市川市ではもともと、小中学校の学校司書、学校図書館員を昭和54年度から配置していました。
 そこに平成10年度から、先ほど申し上げたように、段階的に司書教諭を発令してきて、昨年度、55小中学校全校に配置を完了しました。
〔Power Point〕
 1校に2人ずついるのですが、この人たちだけで学校図書館運営ができるかといえば、それも無理だと思っています。
司書教諭はコーディネーターであるべきだと思っています。
 この人自身が情報担当である必要はないのではないか。
 むしろ、学校内の先生方と学校図書館をつなぐコーディネーターであればよいのではないか。
 実務を担当する学校司書(さん)や情報教育の担当とチームを組んで、校務分掌というものが学校にあるのですが、そこに位置づけられた学校図書館部を組織し、そのチーフとして、いわゆる研究主任的な立場に立って、全校の教育活動に学校図書館を活用していく。
 市川市ではそういう発想が必要だと考えて、活動してもらうようにしています。
 ただ、口で言うのは簡単ですが、これはなかなか難しいです。
 コーディネーター役というのは、かなり経験を積んだ人でなければ、なかなか他の先生を説得していけません。
 年度当初に学校図書館運営計画等を示しながら、情報教育とブックオンリーでない学校図書館の活用とを示していただいています。
 今は、特に中学校では司書教諭の方がぎりぎりの数しかいません。
 ここ2、3年、新たに採用される教員が少しずつ増えてきましたが、実はその方たちはすべて司書教諭の有資格者です。
 そうすると、とても若い方がポンと司書教諭になってしまうという現実があります。
 それでは学校を動かすことはできません。
 ただ、今後採用される若い教員がすべて司書教諭の資格を持っていくであろうと考えると、実は小中学校の教員は全員が司書教諭なのではないかというようにさえ考えられる現状があります。
 実際に、先ほど提案されました学校内情報メディア専門家という位置づけの方がどの程度の働きをしていくかということですが、幼稚園を含めて、小中学校において、まず子供が本好きになっていかなければなりません。
 本を好きでない子供が情報を活用するということは非常に難しいと思われます。
 ですから、旧来の図書、本を大事にするという活動と、先ほどお見せしたような、文部科学省が情報教育とおっしゃっている部分ですが、その融合をどう図っていくか。
 それを1人が担当するのではなく、ここにありますように、組織として校内で位置づけて担当していく。
 そのリーダーが司書教諭、あるいは学校内情報メディア専門家である。
 ただし、その人たちはすべて教師ですから、基本的に子供たちを教える、教育するという立場だということを押さえておかなければいけない。
 そこが公共図書館の司書さんたちとは違うのではないかと思います。
 市川市では、文部科学省の指定を何年かにわたって受けていまして、その中で先ほどのような蔵書のデータベース化や学校間の本の貸し借り、公共図書館からのバックアップなどをしてきています。
 今、文部科学省はそういう方向で小中学校、あるいは高等学校の学校図書館を地域連携型にしていこうとしています。
 そうなってきますと、単館といいますか単独校で何かをする人ではなく、学校間の連携も考えられる、幅広い資質を持った人が司書教諭として求められるのではないかと考えています。
 今日は持ってこられませんでしたが、今年度3月までの指定で市川市としてこういう冊子をつくりました。
 この中に書いてあることの一部をコピーしてきたものがこの資料です。
 宣伝になりますが、必要な方は、お申し出いただければお送りできますのでおっしゃってください。
 現在、高等学校でも情報科という科が設置され、その情報科と学校図書館がどう連携していくかというところは、まだまだ課題になっているようです。
 小中学校も含めて、いわゆる情報教育の分野と学校図書館の分野がどう手を携えていくかということのカギになるのが司書教諭だと思います。
 ただ、この人自身が果たして情報の実務担当者である必要があるかといえば、全くそんな必要はなく、もっと大きな見地で見ていく人が必要ではないかと考えています。
以上です。

根本
 ありがとうございました。
 それでは、ここで休憩を入れさせていただきます。
 ご協力いただき、時間がうまく使えてきていると思いますので、40分まで休憩として、あと50分ほど議論することができそうです。
 それでは、休憩にさせていただきます。

〔休 憩〕

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