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公開シンポジウム記録
図書館情報専門職の現在
--LIPER研究班の中間報告--

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U-1.図書館情報学教育班からの報告(報告者:三輪眞木子)

根本
 では早速、最初の報告に移りたいと思います。
 最初は、メディア教育開発センター教授、三輪眞木子さんから図書館情報学教育班の報告を申し上げます。
 よろしくお願いいたします。

三輪
 お手元の資料を1枚めくっていただきますと、教育班のものが出てくると思いますので、そちらをごらんください。
 用意しましたレジュメに沿ってお話をするということで進めさせていただきます。
〔Power Point〕
 まず、全体的な流れの中で教育班がどういうことをやっているかということで、調査目的と調査方法について簡単に述べさせていただきます。
 お手元の資料にもほぼ同じ図が載っていると思いますが、これが教育班としての3年間の研究計画の全体像です。
 その中で、昨年度(2003年度)は文献調査として、図書館情報学の教育に関する国内外の主な文献を収集し、必要に応じてレビューをしております。
 これは3年間にわたり、継続的に実施します。
 KALIPER、あるいはほかのいろいろな文献等も参考にしました。
 研究設計では、実際に日本の図書館情報学、司書教育、司書教諭教育はどのようになっているか、その実態を把握するということが教育班の研究の主な目的です。
 そこからスタートするということで、昨年度は短大を含む大学を対象にケーススタディ手法による調査を実施しています。
 それを今年度も一部継続しているのですが、その結果につきましては、今年の5月、図書館情報学会の春季研究大会で中間報告として報告しましたので、もしご関心があれば、それを参照していただければと思います。
 ケーススタディの結果として出てきたいろいろな課題、仮説などにつきましてアンケート調査などのいろいろな方法を使って検証していくということが今年度の主な仕事です。
 その中で、いわゆる初学者調査といいますか入り口調査、つまり学生さんの調査を実施しました。
 それから大学調査として、実際に司書・司書教諭課程を提供している大学の実態調査を計画しております。
 更に、教員の意識調査ということで、司書課程、あるいは図書館情報学課程の教育を担当していらっしゃる教員の方たちが教育をどのように考えていらっしゃるのか。
 それにまつわるいろいろな意識についてお伺いする調査を計画しております。
 また、教員の研究動向調査は、実際に今あるデータベースや2次資料を使って、専任の教員の方たちの研究業績、あるいは経歴にいて調査した結果をまとめるというものです。
 今年度は、これら4本の調査を並行して進めています。
 その結果がアンケート調査の中間報告ということで、来年度にかけてまとまっていき、最終的にはLIPER全体の研究報告の中に組み込まれていくということで研究を進めています。
 この全体の流れの中で、ケーススタディ、あるいはアンケート調査、実態調査、文献から得られたいろいろな情報に基づいて、図書館学の教育制度の歴史的な変遷に関する年表をつくる作業も並行して進めています。
 私ども教育班の研究の全体像は大体こういうところです。
〔Power Point〕
 繰り返しになりますが、年表の作成、内外の主要文献の収集、図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程のケーススタディが、昨年度、第1年次の調査ということになります。
〔Power Point〕
 2年目の調査、つまり今年やっている調査につきましては、まず図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程のケーススタディを昨年は12件やりましたが、まだ積み残しがあったものですから、それを継続して実施しています。
 それから、20大学の図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程の初学者のアンケート調査を5月に実施しています。
 図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程を担当する教員の研究動向調査は、今年の4月から実施しており、現在なお、情報収集を続けています。
 4点目は、図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程のアンケート調査です。
 これは今、アンケート調査の設計の最終段階で、おそらく来月に送付できると思います。
 継続して、図書館情報学専門課程・司書課程・司書教諭課程の教員のアンケート調査というものを、できれば11月に実施したいと考えています。
 結構盛りだくさんの計画なのですが、これが今年度、進行中のものです。
〔Power Point〕
 まず、昨年度から今年度にかけて実施しているケーススタディについて概要を説明します。
 細かい点につきましては、図書館情報学会の春季研究大会で報告しましたので、簡単に述べさせていただきます。
 この目的は、日本の大学における図書館情報学の教育目標、教育体制、カリキュラムの現状を把握するということです。
 分析単位としては、図書館情報学の専門課程と司書課程ということで調査を開始しました。
 その後、LIPERの学校図書館班から、司書課程だけではなく司書教諭課程も調査の対象に含めてほしいという申し出がありましたので、それを反映して、司書課程だけではなく司書教諭課程についても、提供している大学についてはインタビューをしています。
 サンプリングに関しては、教育形態や大学の種類、大学の設置形態、地域性、課程の設置時期、司書資格取得に必要な単位数など、幾つかのポイントを考慮し、全体的にばらつきが出るような形での理論的なサンプリングを実施しました。
 それに基づいて、メールで調査対象候補の方にご依頼をして、了解が得られたところについて、2003年7月から2004年7月まで16カ所の調査をしました。
 この中には、最初に実施した2カ所のパイロット調査も含まれています。
〔Power Point〕
 ケーススタディの結果として得られた仮説ですが、それが次の調査に結びつくものですから、今日はその部分だけをご報告させていただきます。
 まず、大学に関する仮説です。大学としては、司書資格、あるいは資格全体について言えることなのですが、資格取得の機会を増大させることによって新入生を吸引しようとしているのではないか。
 そこには少子化対策の一環としての、資格の付与ということがある思われます。
 それから、大学によって、授業評価や自己評価、第三者評価というものをやっているところとやっていないところの違いが見られます。
 特に自己評価を大学がやる場合、資格課程、つまり司書課程を、評価対象から除外しているケースもあるということがわかりました。
 全体的に言えることは、大学内での資格教育の方向性が定まっていないという傾向が見られました。
〔Power Point〕
 次に、司書課程に関する仮説です。
 設置基準では専任2名となっていますが、実際に2名の専任を置いているところは少なく、1名でやっていらっしゃるところが多いようです。
 司書資格科目を卒業単位として認定しているかどうかについては、すべて認定しているところから全く認定していないところまで、さまざまなパターンがあるようです。
 履修人数が多い場合、数百人規模で司書課程の履修者がいるような大学の場合には、特に実習や演習の設備に関して制約があるために、履修者数を制限するような傾向も見られます。
 司書資格の科目、あるいは課程に入っている学生さんが途中でドロップアウトすることは比較的少ないということで、取得率は比較的高い傾向が見られるようです。
 先ほど申しましたように、司書課程の専任教員の数が少ないということですが、増やそうとしてもなかなか増員が困難だということも言われています。
 また、司書課程を課程として提供しているような大学の場合、省令選択科目は全科目を開講していない場合が多いという傾向が見られます。
 最近では、学校図書館司書の必要性が高まったということもあり、学校図書館関連の科目、あるいは教育内容の充実が求められているようです。
 司書資格課程そのものの存在意義というものが課題になっているということも聞こえています。
 一部の地域ですが、司書課程に関する議論や非常勤講師の採用などを地域的なネットワークがサポートしているようなところもありました。
〔Power Point〕
 次に、図書館情報学専門課程に関する仮説です。
 司書課程のみを提供している大学に比べて、専任教員数が比較的多いという傾向がみられます。
 同じ学内で近隣領域の新学部・学科が増設されており、その結果として、図書館情報学としての学内でのアイデンティティの確立が求められるという傾向が見られます。
 特に図書館情報学が専門課程として存在するということを学内でどうアピールし、学生の吸引に結びつけていくかということが課題になっているようです。
 司書課程科目の科目名については、省令科目名とは異なる名称を使っている大学が多いようです。
 図書館情報学専門課程が設置されている大学では、司書課程のみを履修する他学部学生とのレベルの調整が課題となっています。
 つまり、図書館情報学専門課程の科目の一部を司書課程の科目として開講している場合、図書館情報学専門課程以外の学部の学生さんが同じ授業を取るというとき、図書館情報学に関する基礎知識のレベルが違うとか、それまでに身につけてきたスキルが違うとか、モチベーションが違うというようなことで、学生のレベルの調整が課題になっているようです。
 図書館情報学の専門課程では、大規模な改組、あるいはカリキュラム改訂を経験しているところが多いという傾向もみられました。
〔Power Point〕
 このケーススタディの結果として、今申し上げたような仮説が出てきたわけです。
 この仮説に基づいて、先ほどのアンケート調査などの調査を進めています。
 それについては、まだ中間ということですので、現時点で可能な範囲での簡単な報告にとどめさせていただきます。
〔Power Point〕
 まず、司書課程・司書教諭課程の初学者調査です。
 この研究の目標は、日本の大学における司書課程・司書教諭課程受講者の受講動機を把握するということです。
 これは、先ほどご説明しましたケーススタディにおいて、現在、司書の資格を取っても、必ずしも図書館に就職できるとは限らないといいますか、図書館員になれる機会が減少しているということは皆様もご存じだと思いますが、それにもかかわらず、新たに司書課程を設置する大学が結構見られます。
 また、学生さんの中にも、司書資格を取ろうとする意欲のある学生が増加しているという傾向が、ケーススタディの中で見えてきました。
 経済的な因果関係としては、就職の機会がないのになぜ資格を取るのかという、論理的に非常に矛盾することが起こっていると理解しまして、その背景にある学生さんの動機とはどういうものなのかということを把握するということで、この調査を実施しています。
 分析単位としては、司書課程・司書教諭課程の初学者ということで、主にケーススタディで調査させていただいた大学を対象に、スノーボールサンプリングによって調査対象大学を選びました。
 調査スケジュールとしては、今年の5月からです。
 5月中に実施する予定だったのですが、司書教諭課程に関しては夏期に集中講義でやるところが多く、そこの学生さんも調査対象にしているものですから、最終的には8月末までかかってしまいまして、現在、結果を分析中です。
 実施方法としては、授業中に回答をお願いしています。
〔Power Point〕
 まだ最終的な結果が出たわけではないので、司書課程だけの結果から見た全体的な傾向を簡単にご報告します。
 まず受講動機としては、図書館員を目指す学生と、司書資格あるいは資格取得に関心のある学生という二極分化が見られるようです。
 2点目としては、受講者は全般的に図書館及び図書館員にポジティブなイメージを持っているようです。
 3点目としては、司書教諭資格の取得への態度や意欲に図書館経験が影響を及ぼしているという認識が見られます。
〔Power Point〕
 研究業績調査については、簡単に現時点での結論だけを申し上げます。
 研究目標は、1989年に実施された先行研究がありますので、それとの比較をするということです。
 現在、司書課程・司書教諭課程を担当していらっしゃる先生たち457名について、JSTのReaD、各研究者のホームページ、各大学の研究者データベースなどを参照して、業績調査はMagazinePlusとBIBLIS2を使って実施しています。
〔Power Point〕
 結論としては、1989年に実施した調査と比較しますと、まず、高齢教員の数が減少しています。
 2点目として、専任教員の高学歴化の傾向が見られます。
 3点目として、出身大学と大学院がかなり大きく変化しています。
 4点目として、ひとりあたりの所属学会数が増えています。
 大体このような傾向が見られます。
 これにつきましても今なお調査を継続中ですので、最終的な報告は多分、今年度の終わりぐらいにできるようになると思います。

根本
 ありがとうございました。