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公開シンポジウム記録
図書館情報専門職の現在
--LIPER研究班の中間報告--

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U-3.大学図書館班からの報告(報告者:永田治樹)

根本
 続きまして、大学図書館班の報告を筑波大学図書館情報メディア研究科教授、永田治樹さんにお願いしたいと思います。
 よろしくお願いします。

永田
 中間報告ということで、報告いたします。
〔Power Point〕
 大学図書館の調査に関する企画意図は、ただいま小田先生が公共図書館についてご説明されたのと基本的には同じです。
 1989年の東京大学教育学部の調査がございまして、それと時系列に比較して、大学図書館がどうなっているかを確認することが求められています。
 それから、その調査以来15年ほどたっていまして、図書館を取り巻く環境がかなり変わり、図書館そのものの活動もかなり変わってきた、一度、聞き取り調査をしておいたほうがいいだろうということで、1年目に聞き取り調査も計画しました。
 本年度は2年目で、2年目は質問紙調査をすることになっています。
 また、1年目の聞き取り調査にさらに、対象の大学を少し広げて、タイプ、規模の違う大学についての調査も、追加したいと考えています。
 そして、3年次目はフォローアップ調査をするということです。
〔Power Point〕
 したがって、1年次目の聞き取り調査は、本年度の質問紙調査で質問すべき項目の採集という意味もあり、また、それ自体、質的な研究として何か新たな知見が得られないだろうかということで、調査方法を少し工夫しました。
 しかるべきキーパーソンに単なるインタビュー調査をするというだけではなく、一定のグループを形成していただき、そのグループの方々にある質問をした上で、できればそこで議論が起きて、それを私どもがその議論の様子を観察してみたいという、グループインタビュー調査にしました。
 館長及び副館長がいらっしゃてくださった、あるいは運営委員の先生が出てくださったところもありますが、館長グループ、いわゆる事務の責任者として、管理職のグループ、それから中堅職員と若手職員のグループという、四つのグループを設定していただき、それぞれのグループ・インタビューをお願いしました。中堅はいつから、あるいは若手はいつまでという問題は、一応、30代の前半あたりまでを若手として、あとは主観的に若手の方とそうでない方で(そのあたりはお任せしました)区分しました。
 話題は、スライドに示したとおり、四つの話題を提供しました。
 1番目は人事制度に関するものです。2番目は職務の内容に関するもので、3番目は研修という活動に関するものです。
 4番目は他の専門職との対応の中での図書館専門職という話題を提供しました。
〔Power Point〕
 このインタビュー調査のねらいは、ともあれ前の調査から15年たっていますので、現状がどのような形になっているか、その状況認識をしたいということです。
 人事異動が定着してきたという点、それから合理化とアウトソーシングについても、これが入っていない図書館はありませんでした。
 それから、新しい環境への対応能力ということで、特に管理職、館長あたりからは、図書館員も企画能力が必要でコミュニケーション能力が必要だということが決まったように話題に上っていました。
 これらが顕著だった点だといえます。
 ねらいの2番目は、情報専門職としての自己認識というものを尋ねてみたいということです。
 手かがりとしては、キャリアパスをどのように考えているか、必要な研修は何なのか、専門性のコアを何と考えているかという質問をしました。
 それに、四つのグループに分けたわけですが、世代的なものと立場による視点の違いの有無を、グループ差から読み取ろうとしました。
 そのような点をねらいにして、お手元に資料に出ていますように、三つの大規模な大学図書館でグループインタビュー調査をいたしました。
〔Power Point〕
 この図は、トランスクリプトでキー概念と思われるものを集め関連づけたものです。
 研修と職務という観点で左と右に展開しています。
 左に、一般的能力・教養、主題・コンテンツ知識、情報技術、図書館情報学の知識・技術というように、研修項目がおおよそ四つ分かれています。
 情報技術と図書館情報学の知識・技術の部分はくっついています。
 上から下に向けて、いわゆる専門性が深化するのではないかと思っています。
 特に赤い部分、企画力やコミュニケーション能力、情報技術に関しては、多くの言及がありました。
 一方、黄色い部分、主題知識/コンテンツ、図書館情報の知識・技術に関しては、職員のコメントは若干ありましたが、どちらかというと部分的なものでした。
 研修ばかりではなく、図書館は職務を果たしているわけで、その職務は組織運営として合理性を追求するというような形で展開されます。
 その際、特に問題になってくるのは人事異動とアウトソーシングでした。人事異動は今や、専門性を確保するだけの時間的余裕がないという形で実施されているということはほとんど常識です。
 それとともに、人員削減が行われ、アウトソーシングというものが一般的に拡大しています。
 人員削減・定員削減の結果、係単位が係員と嘱託職員という形になる可能性もある。
 そして、多くの業務が外に出されるということです。
 このことに関しては、職員においても、周辺的な職務であればいいというような受け止め方。
 管理者のほうも、人員が削れればいいというような受け止め方、いわば受け身的な反応が顕著だったように思います。
 さらに、そのような状況の中で人事制度というものがどういう形で機能しているかということですが、これは重大でパワフルな結果をもたらすものだと思います。
 大学図書館においては、図書館職員は図書館長になれるわけではありません。
 専門職としての指導性というものが発現できるような立場には上り詰めていかないということがあります。
 したがいましてキャリアパスというものを考えても、若手職員から中堅に行く過程では、キャリアの上昇ということを意識してスキルアップをしていくのですが、中堅あたりでアイデンティティを喪失していくというようなお話が出てきます。
 どのような形で専門性というものを改めて探していけるのか、そして、それに基づく資格制度というものがあるのかということが大学図書館で問題になっていたようです。
 これは一つの結果ですが、インタビュー調査でそのような様相が出てきました。
〔Power Point〕
 このインタビュー調査の結果をさらに深め、そこで出てきた問題がどのように位置づけられるかを質問紙調査で展開していきたいところです。
 ここに書かれているようなところに注目しています。
〔Power Point〕
 質問紙調査については、インタビュー調査と同じグルーピングをして、全大学に対して質問票を6月に送りしました。
 質問票の中身は四つないし五つに分かれています。
 通常、図書館長と中堅・若手職員のものは四つに分かれていまして、1番目に図書館の性質というものについて。
 2番目に回答者について。
 3番目は、大学図書館員に必要な知識・技術について。
 そして4番目は、特定の知識・技術が取得できるのはどのような機会がいいかということを聞いています。
 さらに管理職のグループに関しては、特に各図書館で行っている研修について尋ねています。
〔Power Point〕
 現在までに集まっているところでは、この表のような数字です。
 この調査は6月27日に発送して7月22日が締め切りでした。
 しかし実際のところは、8月半ばまでちょろちょろと来まして、ありがたいことに63.9%という回答率を得ることができました。
 その集計はまだ全然終わっていませんし、先週に入力がやっと終わって、現在チェック中です。
 想定される結果の状況の一端を申し上げます。
〔Power Point〕
 これは、図書館員に必要な知識・技術についての国立大学の管理職と館長の意見です。
 図は非常に見にくいのですが、雰囲気をつかんでいただきたいと思います。
 左端から資料・メディアについて、組織・管理について、サービスについて、マネジメントについてという項目がならんでいます。
 館長と管理職については、これらの知識・技術の項目に対して、「すべての大学図書館員に必要か」、「一部の大学図書館員に必要か」、それとも「大学図書館員には要らないか」という問いです。
 赤い面になっている箇所は、館長が「すべての大学図書館員にとって必要だ」と答えている部分です。
 ピークになっているものが幾つかあります。
 例えば真ん中の一番高いピークは多分、電子ジャーナルという項目が入っています。
〔Power Point〕
 これは、若手職員と中堅職員に対する同じ質問ですが、回答の仕方は違っていまして、「ぜひとも必要である」「どちらかといえば必要である」「あまり必要ではない」という答え方です。
 若手と中堅の回答が若干ずれるということが見えます。
〔Power Point〕
 時間ですので、今後の予定だけ申し上げておきます。
 今後は、この調査の解析をしなければならないと考えています。
 さらに中規模大学でのインタビュー調査をし、他の関連のフォローアップ調査をしたいと思っています。

根本
 ありがとうございました。